ころころ
何事もなかったようにトイレの扉は閉じられた。多分これで元に戻るのではないだろうか、きっと。うん。と、晄は自分に言い聞かせた。
次に扉を開けた時は、きっと見慣れたコンビニの風景が映し出されるはずだ。
「よーし、仕事いくぞー!」
と、意を決してトイレの扉を開いた。
が。
目の前には何もない荒野が広がっていた。
「・・・あれー・・・。」
風景が悪化している気がする。いや実際にそうなのであろう。先程は草原だったのだが、今は何一つない荒野なのだから。
「お邪魔しました。」
扉を叩き付けるように閉じる。何故二度も目の前の世界が変わっていなければいけないのか。意味がわからない。
これはもしかすると・・・。
そう思いながら再度扉を開ける。
粉雪のような新雪が降り積もった雪原。
扉を閉めて、開く。
太陽が燦々と照り付け、見渡す限りに続く白い砂浜。
扉を閉める。
「おかしいだろう・・・。ここいつものコンビニのトイレだよなぁ・・・!?」
間違いなく通勤時に使用しているコンビニのトイレである。しかし見える世界は目の前で四度も姿を変えた。
混乱する晄に、スマートフォンへ着信がかかる。
けたたましく鳴る着信画面には、文字化けをした電話番号が表記されていた。