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もしすべてが夢だとしたら

私はたまに、思うことがある。

全て、夢なんじゃないかって。



私はこの世界に何を求めるのか。

きっと何かを求めていたから、ここに産み落とされた。

じゃあ、何を求めたのか?



深夜二時。

屋根を叩く雨の音が響く自室に一人。

ただただこぼれ落ちる涙に、抗うことなく心を共にした。

心が掻き乱された夜、全てを亡くしたような夜。まるで世界に一人しかいない気がする、そんな夜。

私は誰のことを想うでもなく、ただそこに在った。



細かい怒り。強い嫌悪。醜い愛情。

全て、私を形成する忌まわしいもの。

排除したいけれど、この気持ちは排除できない。

排除すると、私が私でなくなってしまう。

涙を流せなくなったら、もう死んだも同然だ。

眠れない夜は、こうして心をなくしたように泣く。



突然の着信。相手は咲人。

私は涙を拭いて、落ち着いた声で応答する。

「もしもし?」

「...。」

「泣いてる?」

咲人は泣き虫だ。何もなくても、不安で泣く。

「...夢香が泣いてるんじゃないかって思って。そう思ったら涙が出てきた。」


私には理解できない。人を愛する気持ちが。

人の心を、愛す気持ちが。



「ねえ、咲人。これは夢なのかな?」

「...え?」

「ここに地球があって、生物が生まれて、私がいて、咲人がいて。気持ち悪いくらい、変に、うまくできた世の中。私は信じられないの。どうしてこんな世界が、存在するのか。」

「...俺は君が、その夢じゃないなら、それでいいよ。」

「じゃあ、咲人、私が夢だったらどうするの?」

「俺も夢になるよ。」

「意味わからない。どうやってなるの?」

「死ぬよ。」


乾いた声だった。

セピア色の、かさついた、潤いのない無機質な音。

私達は、一体何の為にここに在るんだろう。

きっと、目的なんかはどこにも存在しないんだ。

何かの罰か、それともご褒美なのか。

私達はその価値をこの世界で見つけていく。



もう一人の夢香は今夜も揺りかごの中で眠るのである。



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