夜空に昇る太陽
空を見上げる。
空は雲一つ無い、藍で染めた様な藍色。
鳥は寝暮に帰りひっそりと荘厳な空間が仕上がっている。
少しずつ生き物が静まっていく暗闇とそれを静かに、それでいて柔い星々の明かりが地上を照らす。
少年はふと隣に佇む少女を見やる。
少女は物言わずただ、空を見上げている。
「ねぇ、陽和。何してるの?」
彼女の名前を呼びながら声をかければ熱心に見上げていた空から目を離し、ゆっくりと視線をこちらに向ける。
太陽を連想させる暖かく、そして深い茜色の瞳が声をかけた少年を映す。
「そうだなぁ…なんだろう。この夜空は暗いなって星見てた?とかかな」
陽和と呼ばれた少女は自分でさえも分からないといった様な答えにならない生返事をする。
彼女自身夜空を見上げるという行為に特にこれといった目的などは無いのだろう。
そんな曖昧で不思議な返答に少年は小さく笑う。
「ぷっ…くく…何それ、変なの」
少年の今にも消えそうな藍色の瞳が楽しそうに伏せられる。
その様子を見た少女は少し恥じる素振りを見せ、むくれた。
憤慨しているのではなく、知人への対応特有の照れ隠しというものだ。
「もう、夜空ったらいつもそうやってからかうんだからっ」
少年から目を逸らし、また空へと視線を返す。
この時間はいつまで続く事が許されるのだろう。
それは結局は人間が言える事とは言えない。
この世に神という概念があれば話だが。
「この空ね、夜空の瞳の中みたいだなぁって少し、思ったの」
少年は少女の言葉に目を見開き少女を見やる。
「この空…が…?」
「そう、何かおかしかったかな?」
「ううん、別に…」
それはもう返答全てがと喉元まで出かかった言葉を押し殺し、少年も空を見上げる。
不意に思い付いた途方もない、答えもない疑問を少女にぶつけることにした。
「あのさ、陽和?僕らの知っている夜ってさ、本当に夜なのかな」
この質問に完全回答も、模範的な回答もない。
確かに夜は人の夜という概念から生まれた一時的に暗いだけの時間。
日中行動する生物に対する休息時間と言っても過言ではないと言える。
そして夜行動物の楽園だ。
「きっと本当に夜なんだよ。私からすればね、夜空の時間かなって思う」
照れ笑いする彼女はいつも不思議な事を言う。
俗世間の呼び方で例えるならば…そう、電波少女とでも言える。
「それなら朝は陽和の時間だね」
だってそれはもう、太陽の様なのだから。
名前も、容姿も、性格も。
何に対しても優しくて明るくて。
でも、知られる事は苦手で。
「でもね、朝と夜が楽しめる事だってあるんだよ」
少女は自信あり気に笑う。
「それはね───金環月食。」
それは僕達の摩訶不思議で静かな物語。
「ほら、夜の空に太陽が昇った。」
とても不思議系短編小説如何だったでしょうか。
なんの前振りもなく書いたもので不安定なふわふわ感が出ていたらなと思います。
くっそ短い短編小説をここまでお付き合いありがとうございました!
文才は糞ですが良ければ多作品創ろうと思いますので他作品でもお会い出来たらなと思います。
それではこちらのサイトでの処女作短編お粗末様でした!
これからよろしくお願い致します!!