文系少年は少女だった、らしい
あ、名前つけてから失敗に気がつきました。
この名前だと兄弟居ますよねと判断される……まぁいいか。
前回の先輩の所であったヒキはまだ使用されては居ません。
えー私は今大変戸惑っています。
大好きな先輩『上条祀』先輩が、どうやら妹の攻略対象者の婚約者らしいことが発覚し、さらに攻略対象者は先輩から眼中にないと断言されている状況のようでした。
うん、色々と違いますね。
私は家にいないし、先輩は悪役と言うよりなんだかアレだし。
随分と私が記憶している?内容と違うようだと先日書き出しましたが、どうやらまた違う部分が発覚しました。
それは夏休みの自由研究として毎年やっている、一日一冊以上本を読んでその読書感想文を書くと言うモノ、今年で七年目に突入なので、そろそろ新規開拓すべきかと先輩から借りた本も読み尽くした日、文筆業を営んでいる伯父が私と同年代くらいの女の子を伴ってやってきました。
事前アポ無しでの訪問だったため、非常にお恥ずかしい格好をお見せしてしまいました。
そろそろ寝間着にまわそうかなぁと着ていたお気に入りの浴衣、デザインも着心地も良いですが如何せん着倒しているので正直よれよれです。
家の中で、出かけないままというならかろうじて許されるような格好でした。
お客様来るならキチンとしたの着ていたのにー
ついつい伯父をジト目で見てしまいます。
「はっはっは、ゆるして真夜ちゃん。オジさんそういう性癖目覚める予定はないの」
「…………」
「ホント勘弁して。女の子の真夜ちゃんがいるのに突然お客さん連れてきた僕が悪かった。ホント勘弁してください」
謝ってはいるが、それは本気でないことは丸わかりだ。
だから容易く許すわけがない。
ジトーーっと見つめる。
見つめ続ける。
すると私たちのやり取りに耐えきれなかったのか、女の子が意を決したようにこちらを見た。
「義崇先生何やってるんですか……えっと、初めまして柳六花と言います。若輩者ですが、義崇先生と同業のよしみで本日おじゃまさせていただきました」
自己紹介後深々と頭を下げられた。
え、同業者?
多分同い年くらいだよね?
こう見えて実は成人済みですと言われたら、お肌の手入れの仕方とか、私くらいの年齢の時していたこととか聞き出すよ。
「いいのですよ、柳さんは悪くありません。こちらこそ初めまして、私佐伯真夜です。この悪戯好きな伯父の姪です。どうぞ、お上がり下さい」
でもそんなことは表に出さない。
だって今は叔父さんに対してのお仕置き中でもあるから。
「真夜ちゃん、六花ちゃん、もう少し僕にも優しくして」
「愉快犯は埋まればいいと思うの」
「あの、さすがに突然連れ出されてなので……」
「えっ、柳さん伯父がすいません」
思わず土下座した。
いきなり連れ出されるってどーなの。
しかも先輩って言ってるし、同い年くらいにしか見えないけれど、彼女は伯父の同業者と言うことなんだろうし。
本当に、いたたまれない。
年を聞いたら中学一年だという。
私と同い年ー
イェーぱちぱちぱち。
うん、こんな年齢でデビューするような天才ばかすかいる訳じゃないし、多分、きっと、彼女が攻略対象者なんだろうなぁ……あれ、そうすると彼女じゃなくって、彼?
「あの、失礼ですが、女の子、ですよね?実は男の娘というオチじゃないですよね?」
「いくら胸がないからってあんまりです!」
「え、いやだって、この伯父が連れ回しているから……」
「あぁ、うん、ゴメン。義崇さんに連れ回されているけど、正真正銘女です」
おっぱい無いけど……とボソリと言われました。
重要なことなんですね、以降指摘しないです。
そうか、女の子か。
確か中学校の時に二卵性の双子の妹が水の事故で死亡。
妹が生前書いていたお話を文芸部の冊子に自分が書いたモノとして、自分で本当に書いたモノと両方提出していて、妹の書いたモノの方が評判が良くってだからこそ自分が書いた物が好きと言ってくれたヒロインにのめり込むんだったか……妹の作品を超えたい、自分と妹は違うのだと示したい、でも妹の書いたモノを発表したい、そんなジレンマを乗り越えて作家デビューするのが話だったはず。
そう、才能のある妹がいた、なのだ。
でも話をして家族構成やなんかを聞き出してみると、一人っ子だという。
兄妹は一寸欲しかったかなぁと言い、金槌なので高校はプールがないところを受験するのだそうだ。
彼女、なのかなぁ?
どうだろう。
既に作家として収入があるという。
今日は資料として探している本が、有ると言った伯父に付いてきたのだそうだ。
朝いきなり訪問してきて出かけるぞと言われたそうだけど、同居しているご家族は快く送り出したとか。
叔父さん、既に懐柔済みなんですね。
いつもの事ながら恐ろしい。
だから仁志伯父様のお友達に秘書になって欲しいとか言われるんだ。
政治家の秘書になったらこの国の政治が恐ろしく引っかき回されるんだろうなぁ……
それにしても、どうなのだろう。
教えて貰ったペンネームから、自分が気に入っている最近一押しの作家さんだと発覚したけど。
ライトノベルで出た方はアニメ化決定しているらしいけど。
うん、ほんとどうなんだろう?
それにしても会話が弾みます。
読書傾向がかぶっているのと、私が割合論文だろうと専門書だろうと文章であれば喜んで読むので知識が広く浅くあるおかげで彼女との会話について行けます。
いや、うん、ウチの伯父と対等に会話できる時点ですごいよ。
あの人何聞いても応えてくれるからね。
しかし割と人の好き嫌いが激しい伯父が誰かを連れてくるとは。
しかも女の子。
これは
「ロリコン?さすがに姪と同い年の女の子とか、ひくわー」
「違うからね!真夜ちゃん違うからね!!六花ちゃんもそんな顔しないで!!!」
「いくら変態とはいえ、ロリコンはないわー」
「もうロリって年齢じゃないでしょう!」
懸命です。
一生懸命に否定します。
しかし否定されればされるほど本当ではないのかと思えます。
だって、この方未だ未婚。
大変おもてになるのに、結婚の話が出たことがありません。
「一応まだ十二なのでロリです」
「えっと、十三なのでロリではない?」
「確か十三歳までの子供と、五歳以上年齢の離れた子供に対する性愛の事をロリータと……」
そう言う定義だったはず。
ペドは元々幼児等に性的嗜好を示す言葉で、古代ギリシャの社会的・制度的少年性愛を示す言葉が転じただったはず。
うん、日本のお稚児さんとかと同じだね。
「真夜ちゃん、君一体どんな本読んでるの!」
「この家の本はすでに読破済みです」
えっへん。
ちなみに近くの図書館も。
さすがに入学したばかりの中学の図書室はまだですが……あそこ古書置き場や保管庫もあるので、いつか先生方の信頼を勝ち取って読めるようになりたいです。
「ちゅ、中国語のやドイツ語のもあったと思うけど」
「任せてください、中国語であれば白文で読めます。ドイツ語はまだ辞書片手ですが」
「ウチの姪が思ったよりハイスペック……」
「ハイスペックなのではなく、欲望に忠実なだけです」
愛と欲望です。
それがあれば面倒なことも何とか出来ます。
面倒や手間すら、愛に変換されます。
英語は何とか読めるようになったので、今はドイツ語が目標です。
発音難しいので話せませんが、読み書きだけは出来ます。
ちなみにこのことを知った先輩は、呆れていました。
欲望で話すより先に読み書きを覚えたことに……
「どこへ行く気だウチの姪」
「とりあえず中国で周瑜の足跡追いたいです」
「あぁ、三国志ね。女の子なんだから辺境秘境行きたがらないで」
「良いですね~私は曹操が好きなのですが、日本だと余り人気が無くて」
「日本は判官贔屓が好きだからねー」
「源義経ですね!」
ほんと、打てば響くなぁ。
ぽんぽんぽんと会話が飛ぶのに、私も柳さんもそれが苦になっていないようで、最終的にはアドレス交換をしてお友達になった。
私が先輩から借りた本を見て、出来たら読みたいので先輩を紹介して欲しいと言われた。
先輩に聞いてからね。
彼女が探していた本というのが古いモノで、確かに余り図書館とかで見ない稀覯本だった。
代々それなりにお金があって、それなりに本好きが生まれる家だから個人宅にもかかわらず合ったのだろうけれど……あれ、確か結構良い値段するんだよねー今買おうとすると。
所持している人にしても、貸そうと思えるような代物じゃないし。
なるほど、だからか。
祖父母が居ない事が判っている日に、私だけが居る時間。
狙ったんだな。
それに公立中学で作家デビューか……面倒事にならないと良いんだけど。
そう言う対応がマニュアル化しているような私立に入った方が、先々の面倒少ないだろうなぁ。
ついそう思ってしまい、編集さんとかに学校探して貰ったら?と言ったら、目をまん丸にして驚かれた。
学校とかには黙っているけれど、両親には話しているので実は微妙な感じになっているとのこと。
あーうん、税金関連専用の通帳作って税金分だけ入れて親に渡すとかしたら良いんじゃないかな?
それ以外は自分で管理か、どこかに依頼して委託運用とか。
若しくは私立の学校の学費とか生活費用に回すとか。
多分親御さん、浮かれて散財したり、仕事止めようとか話しているんだろうなぁ。
子供の収入にたかるようになったらダメだと思う。
しかも未だ十代前半の子供に……
でも文筆業で食べていくのって難しいんだよね?
ヒット作品がコンスタントにないと売り上げ伸びないし。
契約する出版社によって、五冊出してようやく他の出版社で四冊出したのと同じ売り上げの収入とか聞くし。
伯父みたいに一人でふらふら、書く雑誌を選びませんってスタイルなら食べていけるのかもしれないけれど。
まだまだ義務教育機関で、未成年なのだから養って貰っていて当たり前のハズなんだけどなぁ。
難しいね。
そんな風に思いながら別れたけれど、夏休みが終わり学校が始まった頃転校生の噂があった。
珍しい。
高校からは入れないけれど、確かに中学のウチなら編入可能なんだよね。
編入試験難しいけれど。
寄付金がっぽり出さないとだけど。
推薦者三人以上って条件厳しくなるけど。
そうまでして転入してきたのは柳六花さんで、私のクラスだった……あぁ、うん、ウチの学校ならノウハウあるしね。
下手にちょっかいかけると破滅一直線になる生徒も多いしね。
納得したけれど理解しがたい現実にびっくりだよ。
こうして多分攻略対象なはずの少女は私の友達となり、お金関係の親族間のごたごたから離れるために転校してきました。
学校の寮に住むそうなので、遊びに行くのが楽しみです。
中学デビューし、処女作がアニメ化したという作家さんは存在します。
というかすごすぎてびっくり。
しかし私の好みではなかった……一時期ラノベその作家さんの書かれた本であふれていました。
現在もコンスタントに並んでいます。
ちろっと中学デビュー作家という下りをモデルにしましたが、詳しい家族関係やそのほかは知りません。
本来ゲームでは高校生作家といった感じでしたが、中学生でデビュー。
そして性別が違う。
兄弟は居ないという形で違いが出ています。
トラウマと言うよりも、自分より才能あふれる兄弟が居て、その兄弟はもう居ないというのがゲームでの本来のシコリでした。