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『火刑台の終止符(ピリオド)〜やり直し聖女ジャンヌ・ダルクは、最愛の騎士と歴史を覆す〜』  作者: れおん
第1章:運命の交差点

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第9話:異端の萌芽

ドンレミ村の大人たちは、最近の私たちを「少し変わった子供たち」と呼び始めていた。

無理もない。

八歳の子供が二人、泥遊びもせず、日がな一日森に籠もっているのだ。

「ねえ、ジャンヌ。村の井戸、あそこに蓋を作らせるように仕向けたよ」

ルイが、道端の草を弄びながら小声で言った。

「どうやって? 頑固な大人たちが、子供の言うことなんて聞かないでしょう?」

「『神様のお告げで、水の中に小さな悪魔が見えた』って、村の司祭様に吹き込んどいた。あの人、信心深いからさ。すぐに村長に進言してくれたよ」

ルイは、現代の「心理学」というか、単なる「ハッタリ」を使いこなしていた。

科学や細菌の概念がないこの時代。

「不潔だから」と言うより「悪魔がいる」と言う方が、よほど説得力があるのだ。

「……ルイ、それって詐欺じゃない?」

「結果的に村の伝染病が減れば、それは『救い』だろ? 君が将来やることも、本質的には同じだよ」

ルイの言葉に、私は少しだけ胸が痛んだ。

一度目の人生。

私は本当に「神の声」を聞いたと思っていた。

けれど、今の私は知っている。

それが脳の錯覚だったのか、それとも本当に神の奇跡だったのかは分からないけれど。

結果として、私は多くの人間を戦場へ送り、死なせてしまった。

「……私は、今度は自分の意志で動くわ。神様が何を言おうと、私が正しいと思う道を進む」

「それでいいんだ。君が迷ったら、俺が現代の倫理観でブレーキをかけてやるから」

ルイはそう言って、私の頭を乱暴に撫でた。

私たちは、村の広場を通り抜けた。

そこでは、村の男たちが木を切り、家を補修していた。

彼らの動きは鈍く、効率が悪い。

現代の土木工学や、テコの原理を知っている私たちからすれば、もどかしくて仕方がなかった。

「……ルイ、あの滑車の使い方、少し教えたらどう?」

「いや、まだ早い。目立ちすぎると『悪魔の子』扱いされるリスクがある。今はまだ、俺たちの体を作るのが最優先だ」

ルイは慎重だった。

現代で刺されたあの瞬間、彼は学んだのだ。

「無知な暴力」がいかに理不尽で、予測不能なものか。

だからこそ、彼は自分たちが圧倒的な「武力」を持つまでは、手の内を隠そうとしている。

「……でも、あのおじさん、腰を痛めそう」

「……ったく。しょうがないな。ちょっと『遊びのフリ』をして手伝ってくるよ」

ルイは苦笑いして、男たちの輪の中に飛び込んでいった。

「ねえ、おじさん! こうやって紐を引いた方が、軽くなるよ! 秘密の遊びなんだ!」

無邪気な子供の振りをしながら、彼はテコの原理を応用した引き方を教えている。

男たちは半信半疑ながらも、ルイの言う通りに動いた。

「……おおっ!? 軽いぞ! なんだこれ、魔法か!?」

驚く大人たちを背に、ルイは私に向かってウィンクをした。

小さな、けれど確実な「変化」。

私たちの知識は、この中世という停滞した世界に、少しずつ、けれど鋭い楔を打ち込んでいた。

「……ねえ、ジャンヌ」

帰り道、ルイが真剣な顔で私を呼んだ。

「そろそろ、本物の『剣』が欲しくないか? 木刀じゃ、振りの速さに限界がある」

「……剣? 八歳の子供が持ってたら、それこそ怪しまれるわよ」

「だから、作るんだよ。誰にも見つからない場所に、俺たちの『武器庫』をさ」

ルイの瞳には、現代の少年の好奇心と、中世を生き抜く戦士の冷酷さが、絶妙なバランスで共存していた。

運命の日は、着実に近づいている。

私たちは、ただの子供として笑いながら、その裏で牙を研ぎ続けていた。

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