表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『火刑台の終止符(ピリオド)〜やり直し聖女ジャンヌ・ダルクは、最愛の騎士と歴史を覆す〜』  作者: れおん
第6章:巴里奪還(アーバン・タクティクス)

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

55/67

第55話:引越し大作戦(キャピタル・リロケーション)

パリ奪還から数日。街の治安はルイの「炊き出し作戦」と「夜間パトロール」によって、驚くほど速やかに回復していた。けれど、肝心の新王シャルル7世は、まだランスやロワールの城に留まり、パリ入りを渋っていた。

「……あの王様、まだ『パリは怖い』とか言ってるのか? 現代の……いや、せっかくテストで満点取ったのに、職員室に答案を取りに来ない生徒みたいなもんだぞ」

ルイが、市庁舎の一室で山積みの羊皮紙を前に頭を抱えていた。窓の外では、市民たちが平和を享受し、活気に満ちた市場の音が響いているというのに。

「ルイ、側近のラ・トレモイユ卿たちが止めているみたいなの。パリに入ると、自分たちの権益が薄れるのを恐れているんでしょうね。……かつての私も、これで何度も足止めを食らったわ」

私は、窓際に立って遠くの空を眺めた。歴史が繰り返そうとしている「政治の停滞」という嫌な予感。

「……だろうな。あいつら、自分の財布のことしか考えてない。……だったら、その財布をパリに向けさせるしかない。……ジャンヌ、文化祭の時に『一番いい模擬店の場所』をどうやって決めたか覚えてるか?」

ルイが、不敵な笑みを浮かべて顔を上げた。

「ええ。一番人が通って、一番売上が出そうな場所にみんな群がったわね。……あ、まさか」

「そう。……俺は今、パリの主要な商店街の『営業許可証』を全部預かってる。……これを、王様と一緒にパリに来る貴族たちに優先的に割り当てるって、ラ・トレモイユに手紙を書いたんだ」

ルイは、羽根ペンをくるくると回しながら続けた。

「……『パリの不動産バブル』を逆手に取るのさ。……今パリに来れば、一等地の利権が手に入る。遅れれば、他の貴族に全部取られる。……そう煽れば、あいつら、明日には馬を飛ばしてくるぜ」

「……ルイ、あなた、本当に性格が……いえ、頼もしいわ」

私は呆れを通り越して、ルイの「欲望をコントロールする力」に感心してしまった。

数日後。ルイの計算通り、王太子……いや、国王シャルル7世の豪華な行列が、あんなに渋っていたのが嘘のようにパリの門をくぐった。

「おお……! これが、我がパリか! なんと活気のある、美しい街だ!」

王が馬車から身を乗り出して、整然とした街並みに感嘆の声を上げる。背後では、側近たちが「どこの店が儲かるか」と血眼になって周囲をキョロキョロと見渡していた。

「……よし、ターゲット入城。……これで『王の不在』っていう不安定なフラグも折れたな」

ルイが、群衆に紛れて私に親指を立てて見せた。

高校生の彼が、文化祭の最後に「やる気のなかった担任の先生」を無理やりステージに上げて、胴上げさせた時の、あの悪戯っぽい、けれどどこか優しい目。

「……さあ、ジャンヌ。……これで、君を売り渡そうとする奴らの口も、金と利権で塞いだ。……次は、イギリスとの『最終交渉エンディング』だ」

「……ええ。……もう、誰も私を捕まえることはできないわね、ルイ」

私は、王を歓迎する鐘の音を聴きながら、隣に立つ最高の相棒と拳を合わせた。

歴史が用意した「サン=ドニの惨劇」も「捕縛の罠」も、二人の高校生は、欲望という名の「力」を味方につけて、軽々と回避していった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ