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『火刑台の終止符(ピリオド)〜やり直し聖女ジャンヌ・ダルクは、最愛の騎士と歴史を覆す〜』  作者: れおん
第5章:戴冠式の光と影(ロイヤル・マーケティング)

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第49話:市街戦のシミュレーション

サン=ドニの門が目前に迫る中、ルイは馬を止め、地面に詳細なパリの市街図を広げた。

それは、彼が現代で見ていた歴史資料の記憶と、斥候スカウトたちが命がけで集めてきた情報を組み合わせた、この時代で最も正確な「攻略マップ」だった。

「……ジャンヌ、見てくれ。パリの街中は迷路だ。正面から馬で突っ込めば、二階の窓から石を投げられて、俺たちは袋のネズミになる」

ルイが指差したのは、入り組んだ路地と高い建物が密集するエリアだ。

高校生の彼が、放課後に部室で対戦ゲームの戦術を練っていた時のように、視線は冷徹に「地形の利」を分析していた。

「ルイ、でも門を突破しないことには始まらないわ。……かつての私は、ここで足を射られて動けなくなった。あの高い壁の上から、無数の矢が降ってくるのよ」

私は、古傷が疼くような錯覚を覚えながら、そびえ立つパリの城壁を見上げた。

そこには、イギリス軍の精鋭たちが手ぐすね引いて待っている。

「……わかってる。だから、今回は『壁』を登らない。……『門』を物理でブチ抜くんだ。……ジャンヌ、あの時学校の理科室で、粉塵爆発の実験、見たことあるだろ?」

「粉塵爆発……? あの、小麦粉とかが燃えて、ドカンってなるやつ?」

「そう。……密閉された空間に、細かい燃えやすい粉を充満させて、そこに火をつける。……現代の……いや、俺たちのいた化学室の知識があれば、この時代の頑丈な門だって、内側から吹き飛ばせるはずだ」

ルイは、大きな樽をいくつも積んだ荷馬車を指差した。

中身は、極細かく挽いた石炭の粉と、乾燥させた細かな藁の粉。

それに、ルイが独自に調合した「燃焼促進剤(油脂)」だ。

「……夜中、霧に紛れて門の隙間にこの粉を送り込む。……で、遠くから火をつけた矢を一本放つだけだ。……ドカン、といけば、門のかんぬきなんて一発で消し飛ぶよ」

「……そんなこと、誰も考えたことがないわ。……ルイ、あなたは本当に、騎士道っていう言葉を知らないのね」

私は呆れ半分、感心半分で溜息をついた。

騎士たちは正々堂々とハシゴをかけ、名誉のために壁を登る。

けれどルイは、物理の法則を利用して、最も安全に、最も効率的に「障害物」を排除しようとしている。

「……騎士道で飯は食えないし、君の命も守れないだろ。……俺は、君が安全にパリに入城して、笑顔でこの戦争を終わらせる『ルート』を攻略してるだけだよ」

ルイは、少しだけ照れたように笑い、再び地図に目を落とした。

その瞳には、すでに門が吹き飛び、私たちがパリの石畳を悠々と歩く姿が映っているようだった。

「……よし。……決行は今夜。……化学サイエンスの力で、パリの門をこじ開けてやろうぜ」

ルイの号令とともに、兵士たちが音を立てずに動き出した。

歴史が語る「パリ撤退」の悲劇を、二人の高校生は、理科の実験のような鮮やかさで、粉々に打ち砕こうとしていた。

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