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『火刑台の終止符(ピリオド)〜やり直し聖女ジャンヌ・ダルクは、最愛の騎士と歴史を覆す〜』  作者: れおん
第5章:戴冠式の光と影(ロイヤル・マーケティング)

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第48話:先制攻撃(プリエンプティブ・ストライク)

パリの外郭、サン=ドニの門が見える丘。

かつての人生で、私はここで「退却」の命令を聞き、悔し涙を流した。

けれど、今の私たちの前には、疲弊した兵士も、足りない食料も存在しない。

「……いたぞ。イギリス軍の増援だ。あいつら、のんびり焚き火なんかしてやがる」

ルイが、レンズを組み合わせて自作した望遠鏡を覗きながら、不敵に笑った。

パリの守備隊を助けに来たはずのイギリス軍の別働隊は、私たちがこんなに早く到着するとは夢にも思わず、完全に油断しきっていた。

「ルイ、あそこの陣地を強襲するの? まだ日は高いわよ」

「いや、正攻法じゃ犠牲が出る。……ジャンヌ、あれを使うぞ。……文化祭のキャンプの時に、みんなで必死に作った『アレ』の巨大版だ」

ルイが指差したのは、兵士たちが数人がかりで組み立てている、木製の奇妙な装置だった。

それは投石機カタパルトに似ているが、もっと細長く、先端に大きな「ゴム」……の代わりとなる、弾力のある動物の腱を幾重にも束ねたものが付いている。

「……巨大スリングショットか。……ジャンヌ、これに『特製の発火装置』を載せて、敵の食料庫をピンポイントで狙う」

「……発火装置? また煙幕スモーク?」

「いや、今回はもっと強烈だ。……油と硫黄を混ぜた、消えにくい火だ。……現代の……いや、俺たちのいた化学室で、こっそり実験した燃焼効率のいい燃料だよ。……あそこに火がつけば、あいつらは消火に追われて、戦うどころじゃなくなる」

ルイの合図で、装置がギリギリと音を立てて絞られる。

高校生の彼が、放課後の部室で模型を飛ばして遊んでいた時の、あの無邪気な、けれど緻密な「角度計算」が今、兵器へと昇華されていた。

「……風速、距離、放物線。……よし。……放て!!」

バチンッ! と空気を引き裂くような音がして、火のついた樽が放物線を描いて飛んでいった。

それは見事な放物線を描き、イギリス軍の陣地のど真ん中、最も燃えやすい藁の山へと着弾した。

「なっ……何だ!? 空から火が降ってきたぞ!!」

「消せ! 水を運べ!!」

大混乱に陥る敵陣。

ルイが計算した通り、彼らは武器を手に取る前に、自分たちの寝床や食料を守るために走り回る羽目になった。

「……よし、今だ! ジャンヌ、突っ込め!!」

「ええ! ……全軍、突撃!! 敵の混乱を突くわよ!!」

私は軍旗を振り下ろし、白い鎧を閃かせて丘を駆け下りた。

背後には、ルイが整えた最高の体調と、最新の装備に身を包んだ精鋭たちが続く。

戦う前から、勝負は決まっていた。

情報を制し、距離を制し、そして「科学的な嫌がらせ」を制した高校生の軍師によって。

「……これが『物理ロジック』の力だ。……中世の騎士道なんて、煙に巻いてやるよ」

ルイの冷徹な、けれどどこか楽しげな声が、風に乗って聞こえてきた。

パリの門は、もう、すぐそこだった。

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