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『火刑台の終止符(ピリオド)〜やり直し聖女ジャンヌ・ダルクは、最愛の騎士と歴史を覆す〜』  作者: れおん
第5章:戴冠式の光と影(ロイヤル・マーケティング)

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第47話:パリへの道(ロジスティクス)

「……よし、全軍停止! ここで昼飯だ。予定より15分早いけど、早めの休憩を入れるぞ!」

ルイの声が、パリへと続く街道に響き渡った。

ランスを出発してからというもの、軍の移動スピードは格段に上がっていた。かつての人生では、兵士たちは重い鎧に喘ぎ、食料不足で泥を啜るように歩いていたはずなのに。

「ルイ、みんな全然疲れてないみたいね。あんなに重い荷物を背負っているのに、足取りが軽いわ」

私は、馬を止めてルイの隣に並んだ。兵士たちは、ルイの指示で作らせた「背負いバックパック」……荷重を肩だけでなく腰にも分散させるように革紐の太さを工夫した袋を使い、軽快に動いている。

「……ジャンヌ、大事なのは根性じゃないんだ。物理だよ。重さを一点に集中させないで、体全体で支える。……ほら、俺たちが学校の登山行事で使ってたリュックの理屈だよ。あの時は重くて嫌だったけど、まさかこんなところで役に立つとはな」

ルイは、手元の羊皮紙に書いた「運行管理表」にチェックを入れながら、満足げに頷いた。

「それに、食事の管理も徹底してる。……ただの固い干し肉じゃなくて、塩分と糖分を混ぜて固めた特製の『携帯食』を配ってるからな。……ガス欠……じゃなくて、エネルギー切れを起こす前にこまめに補給させるのが鉄則なんだ」

ルイの指示で、兵士たちは街道の脇に座り、煮沸した清潔な水で手を洗ってから食事を摂り始めた。中世の軍隊とは思えない、衛生的で統制のとれた光景だ。

「……信じられん。これほどの行軍速度を維持しながら、一人も脱落者が出ないとは」

後方を歩いていたアランソン公が、馬を寄せて驚きの声を上げた。

「軍師殿、貴殿のやり方は、魔法というより……何か、恐ろしく緻密な『歯車』のようですな。我ら騎士の常識が、音を立てて崩れていく」

「……魔法じゃないですよ、公爵。……ただの『効率化』です。……無駄な時間を削って、必要なところに力を注ぐ。……俺たちのいた場所じゃ、当たり前のことですから」

ルイは、少し照れたように鼻を擦った。高校生の彼が、部活動の遠征で、どうすれば一番効率よく目的地に着けるか計画を立てていた時の、あの「段取り力」が今、フランス軍を最強の機動力集団に変えていた。

「……ジャンヌ。敵は今、俺たちの移動速度を完全に見誤ってる。……あいつらが『まだ遠くにいるだろう』って油断してる間に、パリの門の前に現れてやるんだ」

ルイの瞳には、冷徹な勝利へのカウントダウンが刻まれていた。

「……物理と、栄養と、時間の管理。……これが、俺たちの作った『最新の武器』だ」

兵士たちの活気ある声が、夕暮れの街道に響く。

歴史の教科書が語る「パリ攻略の遅滞」という悲劇を、二人の高校生は、科学的な「スピード」で塗り替えようとしていた。

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