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『火刑台の終止符(ピリオド)〜やり直し聖女ジャンヌ・ダルクは、最愛の騎士と歴史を覆す〜』  作者: れおん
第5章:戴冠式の光と影(ロイヤル・マーケティング)

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第45話:深夜の作戦会議(進路相談)

祝宴の喧騒が遠のき、ランスの街に静寂が訪れた頃。

私は、重いドレスを脱ぎ捨てて、ようやくいつもの軽い革鎧に着替えていた。

部屋の隅では、ルイが何枚もの羊皮紙を床に広げ、炭でぐちゃぐちゃに図を書き込んでいる。

「……はぁ。やっと静かになった。あのおじさん連中の世間話、マジで中身なさすぎて脳が腐るかと思ったぜ」

ルイが首を鳴らしながら、床に寝転がった。

高校の放課後、誰もいない教室で、文化祭の予算が足りないって頭を抱えていた時と全く同じポーズだ。

「お疲れ様、ルイ。ラ・トレモイユ卿の顔、真っ青だったわね。あんなに露骨に脅して大丈夫なの?」

「脅しじゃないよ、ただの『コンサルティング』……あ、いや、アドバイスだ。あいつらが自分の財布のことしか考えてないなら、その財布を俺が握っちゃえば、君に余計な手出しはできなくなるだろ?」

ルイは、天井を見つめながらポツリと言った。

彼の目は、明日の祝宴ではなく、もっと先の、歴史の暗雲を見つめている。

「……ジャンヌ。戴冠式が終わった今、ここが一番の『分岐点ルート』なんだ。史実の君は、ここからパリ攻略に失敗して、運命が急降下していく」

「……ええ。知ってるわ。……私が捕まって、火あぶりにされる未来バグよね」

私が隣に座り込むと、ルイは起き上がり、真剣な目で私を見た。

「そう。……王様はもう満足しちゃってるんだよ。『王冠を手に入れたから、もう戦争はいいや、平和に暮らしたい』ってね。……でも、そんなの甘すぎる。イギリス軍はまだパリを握ってるし、チャンスがあればいつでも君を消そうとしてるんだ」

「……王様を説得するの? 私の言葉じゃ、もう届かないかもしれないわ」

「……言葉だけじゃダメだ。……『今、パリを攻めるのが一番得だ』っていう、圧倒的なデータ……証拠を見せなきゃいけない。……現代の……いや、俺たちのいた学校でも、やる気のない部員を動かすのは、熱血な根性論じゃなくて『これをやれば絶対に勝てる』っていう確信だっただろ?」

ルイは、床の羊皮紙の一枚を指差した。

そこには、パリの防衛網の弱点と、今のフランス軍の士気の高さを数値化したような、奇妙なグラフが描かれていた。

「……明日、王様に『進路相談』を申し込む。……『パリを落とせば、税収が三倍になりますよ』って、耳元で囁いてやるんだ。……守銭奴の側近たちが、飛びつくようなエサをぶら下げてさ」

「……ルイ。あなた、本当に性格が……」

「……知ってる。……でも、君が笑って卒業……じゃなくて、この戦争を終わらせるためには、俺が泥をかぶるくらい安いもんだよ」

ルイが、照れたように鼻を擦った。

その顔は、軍師なんて大層なものじゃなく、ただの、お人好しなクラスメイトの顔だった。

「……ありがと。……じゃあ、明日も『最強のペア』で、王様を丸め込みに行こうか」

「……ああ。……不戦勝(ストレート勝ち)でパリまで行っちゃおうぜ」

深夜の静かな部屋で、二人の高校生は拳を合わせた。

歴史が用意した「悲劇」を、論理ロジックでぶち壊すための、最後の戦いが始まろうとしていた。

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