表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『火刑台の終止符(ピリオド)〜やり直し聖女ジャンヌ・ダルクは、最愛の騎士と歴史を覆す〜』  作者: れおん
第5章:戴冠式の光と影(ロイヤル・マーケティング)

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

42/67

第42話:リハーサル(場当たり)

「……待って、やり直し! 歩くスピードが早すぎるって。もっとゆっくり、タメを作らないと!」

ランス大聖堂の冷たい石床に、ルイの鋭い声が響き渡った。

まだ夜明け前。本来なら静まり返っているはずの聖域で、ルイは王太子シャルルとその側近たちを集めて、まるで部活の居残り練習のような特訓をさせていた。

「ルイ、もう三回目だよ。殿下だって、慣れないブーツで足がパンパンみたいだし、少し休ませてあげなよ」

私は、祭壇の脇に立つ王太子の疲れきった様子を見て、苦笑いしながらルイをなだめた。

「ジャンヌ、これは文化祭の劇の時と同じだって。……あの時も、主役の歩き方一つで、見てる人の反応が全然違っただろ? みんな『王様がどう歩くか』で、この国の未来を判断するんだから」

ルイは、手元の羊皮紙に書いた「段取り表」に目を落としながら、王太子の前に歩み寄った。高校生の彼にとって、相手が未来の国王だろうが、言うことを聞かない後輩だろうが関係ない。

「殿下、いいですか。胸を張って、視線はあっちのステンドグラスの少し上です。……自分がこの国で一番カッコいいんだっていう、根拠のない自信を顔に出してください。……猫背じゃ、誰も付いてきたくなりませんよ」

「……わ、分かった。ルイと言ったか……お前の言うことは、時々恐ろしく説得力があるな」

王太子が、必死に背筋を伸ばした。

私たちは、この「最高の舞台」を成功させて、自分たちの立場を有利にしたい一心だった。

「よし、次は照明の確認。……ジャンヌ、いつもの立ち位置に行って」

ルイの指示で、私は指定された場所に立った。

そこは、高い窓から差し込む朝の光が、ちょうど私の白い鎧に反射して、背後の王太子をキラキラと照らす絶妙なポジションだった。

「……完璧。これなら、見に来た貴族たちも『神様が本当にこの王様を選んだんだ』って信じるな。……あの時の文化祭の照明担当に見せてやりたいぜ」

ルイは満足げに頷き、ようやく休憩の合図を出した。

「……ふぅ。……ジャンヌ、マジで疲れるな、この時代の大人は」

ルイが私の隣の段差に腰掛け、水袋を差し出してきた。

「本当にね。……でも、ルイ。あの時みたいに、あなたが演出で、私が主役で。……なんだか、学校の放課後を思い出すわね」

「……ああ。でも、今回は失敗しても『先生に怒られる』じゃ済まないからな。……俺はただ、君がこの後、変な政治のゴタゴタに巻き込まれないように、王太子の『凄み』を最大まで引き出しておきたいんだ」

ルイの横顔には、疲れの中にも、二人でこの狂った時代を切り抜けようとする、真剣な光が宿っていた。

「……絶対に、成功させようぜ。……この儀式が終わった瞬間、フランス中が『ジャンヌと王様こそが正義だ』って、理屈抜きで認めちゃうような空気を作ってやる」

大聖堂の窓から、一番新しい太陽の光が差し込んできた。

数時間後、ここにはフランス中の権力者が集まる。

そこは戦場ではないけれど、一歩も引けない、もっと緻密な「勝負」の場所だ。

「……さあ、本番だ。……世界で一番贅沢な『文化祭』を、始めようぜ」

ルイが立ち上がり、埃を払った。

二人の高校生が仕掛ける、中世最大の歴史改変イベントが、いよいよ幕を上げた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ