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『火刑台の終止符(ピリオド)〜やり直し聖女ジャンヌ・ダルクは、最愛の騎士と歴史を覆す〜』  作者: れおん
第5章:戴冠式の光と影(ロイヤル・マーケティング)

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第41話:ランス入城(フィールドワーク)

ランスの重厚な城門が、私たちの前でゆっくりと開いた。

かつての人生で、ここに入るためにどれほどの説得と奇跡が必要だったか。

けれど今は、街の有力者たちが跪き、市民たちが道に絨毯を敷いて、私たちの「凱旋」を待っていた。

「……うわぁ、マジでレッドカーペットじゃん。文化祭の演劇部でもここまでやらねーぞ」

ルイが馬を並べ、少し圧倒されたように周囲を見渡した。

高校生の彼にとって、歴史の教科書で見た「戴冠式」は、今や自分たちがプロデュースする「最大のイベント」に変わっている。

「ルイ、みんながあなたの言っていた『清潔な軍隊』に驚いているわ。……ほら、あそこの子供たちが、兵士のピカピカの鎧を指差してる」

「……だろ? 『強くて怖い』より『強くて綺麗』な方が、市民の支持率エンゲージメントは爆上がりするんだ。……現代の……いや、俺がネットで見た『制服マジック』ってやつだよ」

ルイは満足げに頷き、馬上で背筋を伸ばした。

彼は兵士たちに、入城前に川で体を洗い、装備を磨き直すよう徹底させていた。

「身だしなみが整っていない軍隊は、ただの暴徒に見える」という、現代の広報(PR)理論だ。

「……さて、ジャンヌ。ここからが本番だ。……王太子シャルルを、本物の王様にするための『演出』を詰めなきゃいけない」

「演出……? 戴冠式は、神聖な儀式よ、ルイ」

「わかってるって。でも、ただ儀式をやるだけじゃダメだ。……『この人が王様になれば、フランスは本当に豊かになる』って、出席した全員に確信させなきゃいけない。……現代の……そう、新製品の発表会ローンチみたいなもんだよ」

ルイは懐から、ランスの街の地図と、大聖堂の座席表を書き出した羊皮紙を取り出した。

「……あそこの貴族は、まだイギリス軍と繋がってる可能性がある。……こっちの司教は、金に汚い。……全員の『利害関係ステークホルダー』を洗い出して、誰をどこに座らせるかまで、俺がロジカルに決めてやる」

ルイの瞳には、中世の神秘性ではなく、冷徹な「イベント運営者」の光が宿っていた。

高校生の彼が、部活動の予算会議で大人たちを丸め込んできた、あの生意気で、けれど確かな知略。

「……ジャンヌ、君はただ、王太子の隣で一番目立つ場所に立っててくれ。……『神に選ばれた少女が、この王を認めている』っていう、最強の視覚効果ビジュアルが必要なんだ」

「……分かったわ、ルイ。……あなたの描くシナリオ通りに、私は動く」

私は白い軍旗を握り直し、大聖堂へと続く道を真っ直ぐに見据えた。

その夜。

ランスの宿舎で、ルイは深夜まで蝋燭の灯りで「式典のタイムスケジュール」を練り直していた。

歴史の教科書では、ここが私の栄光の絶頂。

けれどルイは、その後の「没落」というバッドエンドを回避するために、すでに次の、そのまた次の手(フラグ管理)を打ち始めていた。

「……絶対に、死なせない。……中世のドロドロした政治なんかに、君を渡してやるもんか」

ルイの独り言が、静かな部屋に響く。

二人の高校生による、王座を賭けた「最大の見世物」が、いよいよ幕を開けようとしていた。

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