表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『火刑台の終止符(ピリオド)〜やり直し聖女ジャンヌ・ダルクは、最愛の騎士と歴史を覆す〜』  作者: れおん
第4章:進軍のパテ(リアルタイム・ストラテジー)

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

34/67

第34話:勝利の余韻と「次の一手」

オルレアンの街は、一週間が過ぎてもお祭り騒ぎが続いていた。

けれど、総督府の一室では、ルイが現代の「ホワイトボード」代わりに、大きな平らな石板に炭で図形を書き殴っていた。

「……ダメだ。みんな浮かれすぎてる。イギリス軍は撤退したんじゃない、『体制を立て直すために引いた』だけだ。現代の……いや、俺たちの感覚で言えば、まだ前半戦が終わっただけだよ」

ルイは、炭で汚れた手を顔で拭い、黒い筋を作りながら私を振り返った。

その目は、完全に「受験勉強の追い込み」に入った高校生のそれだ。

「ルイ、少しは休んで。デュノワ様も『聖女の休息が必要だ』って、豪華な食事を用意してくれてるわよ」

「食べてる暇があったら、この『地形データ』を頭に叩き込みたいんだ。……次はパテだ。あそこはオルレアンみたいな攻城戦じゃない。広い平原での、ガチンコの野戦オープンフィールドになる」

ルイは石板の一点を、カツンと叩いた。

「イギリス軍の強みは『ロングボウ(長弓兵)』だ。……現代の……スナイパーみたいな連中だよ。近づく前に、ハリネズミにされて終わる。……史実の君は、運良く突撃が成功したけど、今回はもっと確実に、論理的に勝たなきゃいけない」

「……弓矢の雨を、どうやって防ぐの?」

私は、一度目の人生で見た、空を埋め尽くす黒い矢の群れを思い出して身震いした。

どんなに勇気があっても、物理的に届かない距離から射殺されれば終わりだ。

「……『煙幕スモーク』だ。……あるいは、視界を遮る何か。……現代の戦術じゃ、敵の視界を奪うのが基本だろ? ……火薬はまだ安定しないけど、大量のわらと、ある『化学物質』を混ぜて燃やせば……」

ルイは、化学の授業で習った「不完全燃焼」や「発煙」の仕組みを必死に思い出そうとしていた。

高校生の彼が、部活の遠征の荷物リストを作るみたいに、真剣な顔で「可燃物」のリストを書き出していく。

「……ジャンヌ。君はただ、俺が作った『煙』の中から、最高に格好よく現れてくれればいい。……相手がパニックになった瞬間が、勝負チェックメイトだ」

「……煙の中から……。なんだか、舞台の演出家みたいね、ルイ」

「ははっ、そうかもな。……でも、これが俺の選んだ『最強のサポート』だ。……君を、一発の矢にも当てさせない。……それが、俺の今学期の『絶対評価』なんだよ」

ルイが、少しだけいたずらっぽく笑った。

その笑顔には、死線を越えた者だけが持つ、不敵な余裕が混ざり始めていた。

「……分かったわ。あなたの演出プランに、乗るわよ」

私は、白い鎧の感触を確かめた。

オルレアンを救った「奇跡」は、まだ序の口に過ぎない。

これから始まるのは、現代の知恵と中世の武力が激突する、全く新しい戦い(ゲーム)だ。

「……よし。……全軍に伝えてくれ。……明後日、出陣だ。……ターゲットは、パテの平原。……イギリス軍のプライドを、煙に巻いてやろうぜ」

ルイは石板の図を乱暴に消すと、力強く立ち上がった。

その背中は、もはや一年前の頼りない高校生のそれではなく、一人の軍師の風格を漂わせていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ