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『火刑台の終止符(ピリオド)〜やり直し聖女ジャンヌ・ダルクは、最愛の騎士と歴史を覆す〜』  作者: れおん
第3章:オルレアンの奇跡(ロジカル・ウォーズ)

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第31話:跳ね橋の断末魔

崩れ落ちる石橋の轟音が、戦場全体を震わせた。

イギリス軍の無敵を誇った「トゥーレル砦」が、今や孤立した島のように川の中央に取り残されている。

「……う、嘘だろ!? あの頑丈な橋が、あんな細い丸太で……!?」

背後で、フランス軍の騎士たちが呆然と呟いた。

彼らにとって、城壁や橋は時間をかけて削り取るものだった。

けれどルイがやったのは、学校の物理で習った「共振」……つまり、決まったリズムで叩き続けることで、巨大な構造物を自重で自壊させるという、えげつないほど効率的な破壊だった。

「……見とれてる暇なんてないぞ! ほら、次! 門の隙間に油を流し込め! 火矢の準備だ!」

ルイが馬上から、声を枯らして叫んでいる。

その手は手綱を握りすぎて白く震えていたが、目は獲物を逃さない野良猫のように鋭い。

「ジャンヌ、今だ! 敵が混乱してるうちに、一番低い壁にハシゴをかけろ! 現代の……あ、いや、俺が教えた『最短ルート』で登るんだ!」

「ええ、わかっているわ! ルイ!」

私は軍旗を振り下ろし、白い鎧を閃かせて城壁へと駆け寄った。

上空からはイギリス兵の放つ矢が雨のように降り注ぐ。

ガツッ、と鈍い音がして、一本の矢が私の肩を弾いた。

「っ……!」

「ジャンヌ! 大丈夫か!?」

ルイの悲鳴のような声が響く。

けれど、私は止まらなかった。

ルイが作ってくれた「積層装甲」の胸当てが、矢の威力を殺してくれていた。

痛みはあるが、骨までは届いていない。

「……平気よ! ルイの鎧が守ってくれたわ!」

私はハシゴを一気に駆け上がった。

かつての人生では、ここで深手を負って後退した。

けれど今は、ルイが計算してくれた「死角」と、彼が持たせてくれた「防具」がある。

城壁の上に立ち、私は力の限り叫んだ。

「――イギリスの兵士たちよ! 降伏なさい! あなたたちの運命ロジックは、すでに詰んでいるわ!」

私の言葉は、ルイから教わった「チェックメイト」という言葉を中世風に言い換えたものだった。

目の前に現れた、傷一つ負わずに壁を登りきった聖女の姿に、イギリス兵たちは恐怖で顔を引かせた。

「……化け物だ。……あの娘、矢が当たっても死なないぞ!」

「神の御加護だ……! いや、悪魔か!?」

混乱が、砦の中に伝染病のように広がっていく。

その隙を逃さず、ルイに鍛えられた兵士たちが次々と壁を乗り越えてきた。

「……よし、フェーズ2終了だ。……あとは、一番奥の司令塔を抑えるだけだ……!」

ルイが、汗を拭いながら馬を城門のすぐそばまで進めてきた。

彼の顔には、怖さと、興奮と、そして「計画通りに物事が運ぶ」ことへの、一人の理系高校生としての冷徹な満足感が同欲していた。

トゥーレル砦の陥落まで、あと数分。

歴史の教科書が、激しい音を立てて書き換えられようとしていた。

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