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『火刑台の終止符(ピリオド)〜やり直し聖女ジャンヌ・ダルクは、最愛の騎士と歴史を覆す〜』  作者: れおん
第1章:運命の交差点

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第3話:白昼夢の終わり

「……ルイ?」

私の喉から、ひきつったような声が漏れた。

ルイの身体が、ゆっくりと、けれど抗いようのない力で崩れていく。

コンクリートの地面に、彼が膝をつく。

その場所から、信じられないほどの速さで紅い池が広がっていく。

「あ……あぁ……」

目の前が真っ白になった。

かつての戦場で、何度も見てきた光景。

けれど、その「死」がルイに訪れるなんて、一度だって考えたことはなかった。

「おい、マジかよ……刺しちまったぞ」

「チッ、逃げるぞ!」

ナイフを持った男たちの声が、遠くで響く。

逃げていく足音が、路地の奥へと消えていく。

そんなことは、もうどうでもよかった。

私は倒れ込むルイの身体を、必死に抱きかかえた。

「ルイ! 目を開けて! ルイ!!」

叫ぶ私の手に、生温かい液体がまとわりつく。

鉄の匂い。

かつて、私の鎧を汚していた、あの死の匂いだ。

「……じゅ、り……」

ルイの瞳が、力なく私を映した。

その瞳から、みるみるうちに生命の灯が消えていこうとしている。

「喋っちゃダメ! すぐに、すぐに助けが来るから!」

私は叫んだ。

神様。

もし、本当にあなたがいるのなら。

一度目の人生で私を火刑に処したのは、許しましょう。

けれど、この人は違う。

この人は、私に「平和」を教えてくれた人。

私をただの「女の子」として笑わせてくれた、たった一人の人。

この人を連れていかないで。

「……ごめん……アイス……約束した……のに……」

ルイの指先が、私の頬に触れた。

そして、その手が力なく地面に落ちた。

「いやぁぁぁああああ!!!」

私の絶叫が、路地裏に木霊した。

なぜ。

なぜ、私は彼を守れなかった。

かつてフランスを守り、王を導いたこの手で。

たった一人の、大好きな少年さえ救えないのか。

涙が溢れて、視界が滲む。

もう一度だけ。

もう一度だけチャンスをください。

今度は、私が彼を守るから。

最強の騎士に、私が彼をしてみせるから。

その時だった。

ルイの亡骸を抱きしめる私の周りに、小さな光の粒が舞い始めた。

あの火刑台で見たのと同じ、眩いほどの白い光。

「……っ!?」

光は瞬く間に膨れ上がり、路地裏の景色を飲み込んでいく。

熱い。

けれど、今度の熱さは心地よかった。

まるですべてを包み込む、母のような温もり。

私はルイの手を、決して離さないように強く握りしめた。

「……どこへでも、一緒だよ、ルイ」

意識が遠のく中。

私の耳に、懐かしい風の音が聞こえた。

それは、フランスの乾いた大地を駆ける、自由な風の音だった。

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