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『火刑台の終止符(ピリオド)〜やり直し聖女ジャンヌ・ダルクは、最愛の騎士と歴史を覆す〜』  作者: れおん
第2章:ドンレミ村の再起

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第25話:トゥールの軍備(カスタマイズ)

軍の集結地であるトゥールに入った私たちは、まずその「惨状」に言葉を失った。

「……これ、マジかよ。文化祭の準備期間の方がまだ統率取れてるぞ」

ルイが呆れたように呟いた。

そこにいたのは、泥にまみれた装備で地面に座り込む兵士たちと、酒を煽りながら言い争う騎士たち。

絶望が、おりのようにキャンプ全体に沈殿している。

「神の声が聞こえる聖女様だかなんだか知らねえが、ガキがいくさに口を出すんじゃねえ!」

一人の荒くれ者の騎士が、私たちの前に立ち塞がった。

彼の手には、刃こぼれした重い大剣。

「……口を出すんじゃない。これ、もっと使いやすくしてやるって言ってるんだ」

ルイは怯むことなく、騎士の剣をひょいと指差した。

現代の動画サイトで見た「武器のメンテナンス」や、物理の授業で習った「重心」の知識。

彼はこの数年間、ドンレミ村の鍛冶場でそれを実践してきた。

「その剣、重すぎて振り遅れてるだろ? 柄のバランスを変えて、刃を少し研ぎ直すだけで、今の倍の速さで振れるようになる。……試してみるか?」

ルイの挑発的な、けれど自信に満ちた提案。

現代の高校生が、得意分野で大人を論破しようとする時の、あの少し生意気な目だ。

「……ふん、ほざけ。やってみろ」

ルイは近くの作業場を借りると、現代の「工業製品」の精度を思い出しながら、その大剣に手を加えた。

余分な重りを取り除き、テコの原理を最大限に活かせるよう、グリップの長さを調整する。

数時間後。

剣を返された騎士が、半信半疑でそれを一振りした。

「……っ!? なんだ、これ。羽のように軽い……!」

「重心を数センチ手元に寄せただけだよ。……あと、そこの甲冑。関節の油が切れてる。現代の……あー、魔法の油(オリーブオイルを精製したもの)を差せば、動きが劇的にスムーズになる」

ルイの「理系高校生」的な知識が、中世の武具を次々とアップデートしていく。

兵士たちは、神の奇跡ではなく、目の前で起きた「具体的な改善」に目を見張った。

一方、私は――。

「……皆、聞いて。戦場グラウンドに出る前に、まずは身体を清潔にしましょう。傷口を洗うだけで、病に倒れる仲間は半分に減るわ」

私は現代の「保健体育」や「家庭科」で習った衛生概念を説いた。

一度目の人生では知らなかった、死ななくていい理由。

煮沸消毒、栄養価の高い食事の配分。

「……ジャンヌ、これならいける」

夜、二人で囲んだ焚き火の前で、ルイが満足げに笑った。

「聖女のカリスマと、現代のエンジニアリング。……この組み合わせ、最強だわ。オルレアンのイギリス軍に、とびっきりのサプライズをかましてやろうぜ」

「ええ。……でもルイ、あんまり夢中になりすぎて、寝不足にならないでね」

「わかってるって。……テスト前の徹夜よりは、マシだよ」

ルイはそう言って、特製の「戦術ノート」を閉じた。

そこには、オルレアンの城壁をどう守り、どう攻めるか、現代の戦術理論に基づいた緻密な計画がびっしりと書き込まれていた。

祈りの声は、もう絶叫ではない。

それは、勝利を確信した「作戦会議」の声へと変わっていた。

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