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『火刑台の終止符(ピリオド)〜やり直し聖女ジャンヌ・ダルクは、最愛の騎士と歴史を覆す〜』  作者: れおん
第2章:ドンレミ村の再起

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第19話:鉄と肉の証明

ヴォークルールへと続く街道は、泥濘と深い森に覆われていた。

一度目の人生では、私はただの村娘として、親戚に連れられてこの道を歩いた。

けれど今は違う。

私の隣には、現代の軍事教本を頭に叩き込んだ最強の守護者、ルイがいる。

「――止まれ、ジャンヌ」

ルイが低く、鋭い声で制した。

彼は馬の鼻面を撫で、周囲の茂みに鋭い視線を走らせる。

「……三時と十時の方向。伏兵だ」

「ええ、殺気を感じるわ」

私たちは、現代の特殊部隊が使うようなハンドサインを交わし、馬を降りた。

森の奥から現れたのは、ボロ布を纏った脱走兵たちのなれの果て――野盗の群れだ。

「ひゃはは! 綺麗なガキが二人、迷い込んできやがった!」

「その剣、高く売れそうだな。置いて死ねや!」

十数人の男たちが、錆びた斧や槍を振り回して襲いかかってくる。

中世の野蛮な暴力。

けれど、ルイの瞳には「恐怖」の欠片もなかった。

「……ジャンヌ、左右は任せた。中央は俺が『面』で制圧する」

「了解。……怪我をさせすぎないようにね、ルイ」

「努力はするよ。……でも、こいつらは少し『教育』が必要みたいだ」

ルイが地を蹴った。

その動きは、重い鎧を前提とした騎士のそれではない。

現代の格闘技、そして脱力による超高速の踏み込み。

キンッ!!

金属音が響くより早く、ルイの細身の剣が、先頭の男の槍の穂先を叩き折っていた。

「なっ……!?」

男が驚愕する間もなく、ルイの掌打しょうだがその顎を打ち抜く。

脳を揺らす現代の打撃理論。

男は白目を剥いて、泥の中に沈んだ。

一方、私は左右から迫る二人を、最低限の動きで捌いていた。

「……神様。私に力を貸して」

呟きながら、私は剣を振るう。

一度目の人生で培った直感と、現代で学んだ空間把握能力。

敵の剣筋が、まるでスローモーションのように見える。

私の剣は、敵の武器の「支点」を突き、その力を利用して相手を転倒させる。

力任せではない、理詰めの剣技。

「……ば、化け物か、こいつら……!」

わずか数分。

広場には、絶命こそしないものの、戦意を完全に喪失して地面を這いずる男たちの姿があった。

ルイは返り血を拭うこともなく、静かに剣を鞘に収めた。

「……ふぅ。身体が軽いな。やっぱり現代のトレーニングは裏切らない」

「ルイ、今の『カウンター』、完璧だったわよ」

「サンキュ。……さて、こいつらを縛り上げたら、ヴォークルールはすぐそこだ」

ルイは道端に転がる野盗を一瞥し、私に向かって手を差し出した。

「準備はいいか、ジャンヌ? ロベール・ド・ボードリクールに、俺たちの『実力』を見せつけに行くぞ」

「ええ。……神の声なんて信じないあの男を、力ずくで納得させてあげるわ」

私たちは再び馬に跨った。

中世の常識を塗り替える、若き二人の「異端児」。

その噂がフランス全土に広まる日は、そう遠くない。

夕闇の中に、ヴォークルールの堅牢な城壁が、巨大な獣のように姿を現した。

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