表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『火刑台の終止符(ピリオド)〜やり直し聖女ジャンヌ・ダルクは、最愛の騎士と歴史を覆す〜』  作者: れおん
第2章:ドンレミ村の再起

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/67

第13話:自警団の胎動

ドンレミ村の広場には、かつてののどかな風景とは異質な熱気が渦巻いていた。

「――槍を引くな! 腕で持つんじゃない、背中で支えろ!」

ルイの鋭い怒声が響く。

そこに並んでいたのは、村の若者たち十数名だ。

彼らが手にしているのは、農具を改造したものではなく、ルイが鍛冶屋を抱き込んで作らせた、一点に重心を置いた実戦用の長槍だった。

「……ルイ、少し厳しすぎない?」

私が横から声をかけると、ルイは額の汗を拭いながら、不敵な笑みを浮かべた。

「これでも手ぬるいくらいだよ。中世の騎士道なんてクソ食らえだ。多人数で一人の騎士を確実にハメ殺す……現代の『集団制圧』の基礎を叩き込んでおかないと、いざって時に村が焼かれるからな」

ルイが指導しているのは、史実にはない「歩兵戦術」だった。

個人の武勇に頼る騎士に対し、統制された集団で面を作り、近づかせない。

現代の機動隊や、あるいは戦国時代の足軽が用いたような、合理的で冷徹な陣形。

「おい、ジャック! 脇が甘いぞ! 隣と肩が離れたら、そこから馬に食い破られるって言っただろ!」

「わ、わかってるよルイ! でもこれ、めちゃくちゃキツいんだって!」

私の兄であるジャックが、悲鳴を上げながらも槍を突き出す。

五年前なら、彼はルイの言葉など鼻で笑っていただろう。

けれど、今のルイには、村の誰よりも速く、誰よりも正確に獲物を仕留める「実力」があった。

村の大人たちは、これを「子供の兵遊び」と見て笑っていたが、最近ではその目が変わりつつある。

彼らの動きが、あまりにも統制され、一糸乱れぬ「武器」へと変貌していたからだ。

「……ジャンヌ。君の方はどう?」

ルイが、若者たちに休憩を指示してから、私に歩み寄ってきた。

「薬草の備蓄と、包帯の煮沸消毒(殺菌)の準備は終わったわ。村の女性たちにも、傷口を泥の手で触らないように徹底させたし」

「……完璧だ。現代の衛生概念があれば、戦場での致死率は劇的に下がる」

私たちは、現代の知識という名の「チート」を、この小さな村に注ぎ込んでいた。

それは、来るべき破滅の運命に対する、私たちのささやかな、けれど執念深い抵抗だった。

「……ねえ、ルイ。噂で聞いたわ。隣の村が、野盗に襲われたって」

私の言葉に、ルイの表情から温度が消えた。

「……ああ。俺も耳にしてる。イギリス軍の残党か、それともただの食い詰め者か。……どっちにしろ、そろそろ『実戦』の機会が来るだろうな」

ルイは、腰に下げた特製の剣の柄に手を置いた。

八歳の頃に作ったあの剣は、今や彼の身体の一部のように馴染んでいる。

「村の連中には、まだ殺しは早い。……汚い仕事は、全部俺がやる」

「ルイ……」

「君は聖女だ。その手は、旗を振るためにある。……血に染まるのは、俺一人でいいんだよ、樹里」

ルイが、一瞬だけ「現代の同級生」のような優しい目で私を呼んだ。

けれどその直後、彼は再び「最強の騎士」としての冷徹な顔に戻り、若者たちに向き直った。

「休憩終わりだ! 次は、盾を持った相手への同時突きをやる。……死にたくない奴から来い!」

ドンレミ村に、再び金属のぶつかり合う音が響き始める。

平和な農村の皮を被ったまま、この村は確実に「要塞」へと作り変えられていた。

運命の日は、もうすぐそこまで来ていた

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ