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『火刑台の終止符(ピリオド)〜やり直し聖女ジャンヌ・ダルクは、最愛の騎士と歴史を覆す〜』  作者: れおん
第1章:運命の交差点

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第10話:鉄の匂いと、約束の剣

「武器を作るって……ルイ、本気なの?」

森の奥、一段と草木が深く茂る場所。

そこには、ルイが数日かけて掘り進めたという、小さな横穴があった。

「ああ。本物スチールの剣はまだ無理だけど、鉄屑を集めて叩き直せば、子供の力でも扱える『鋭い鉄』にはなる」

ルイは、村の鍛冶屋の裏に捨てられていた古びた農具の破片や、錆びた鉄の輪を取り出した。

現代の知識があれば、鉄の性質も、炭を使って火力を上げる方法も知っている。

「村の鍛冶屋のおじさんに、こっそり『手伝い』として入り込んで、フイゴの使い方を覚えたんだ。……あのおじさん、酒を一杯奢る約束をしたら、喜んで教えてくれたよ」

ルイは、八歳の子供とは思えない手際で、穴の中に組んだ小さな炉に火をつけた。

現代で見ていた動画や、趣味で調べていた「鋳造ちゅうぞう」の知識。

それが今、五百年前の世界で具現化されようとしていた。

「……熱いね」

私は、火を見つめながら呟いた。

火刑台の、あの焼き付くような熱さとは違う。

何かを新しく生み出すための、生命の熱だ。

「樹里……ジャンヌ。君は、どんな剣がいい?」

ルイが、赤く熱せられた鉄を石の上で叩きながら尋ねた。

キン、キン、と高い音が、森の静寂にリズムを刻む。

「……重いのはいらない。この小さな身体でも、風を切るように振れる、細くて鋭いのがいいわ」

「わかった。……フェンシングのレイピアと、日本の小太刀のいいとこ取りをしてみるよ」

ルイは、大汗をかきながら鉄を叩き続けた。

彼の小さな腕には、この数ヶ月の鍛錬で、硬く引き締まった筋肉がつき始めていた。

「現代のはがねに比べれば、強度は落ちる。でも、今の俺たちの技術なら、相手の鎧の隙間を狙うだけで十分だ。力で叩き切るんじゃなく、急所を『置く』ように突く」

数時間が過ぎた。

ルイが冷水に浸したその「鉄の棒」は、まだ粗削りではあったが、鈍い銀色の光を放っていた。

「……できた。俺たちの、最初の『武器』だ」

差し出されたのは、長さ五十センチほどの、細身の直剣。

つかには、私が編んだ丈夫な麻紐が巻き付けられている。

手に取ってみると、驚くほど軽い。

けれど、ひとたび振れば、空気を裂く鋭い音が鳴った。

「……すごい。これなら、私にも扱える」

「君の分と、俺の分。……これで、ただの『ごっこ遊び』は終わりだ」

ルイも、自分用の少し短い、短剣に近い剣を腰に帯びた。

子供の服に隠れるほどの、小さな、けれど致命的な「牙」。

「……ねえ、ルイ。これを使う日が、本当になければいいのにって、時々思うの」

私の言葉に、ルイは火を消しながら、静かに首を振った。

「歴史は、もう動き始めてる。村の大人たちは気づいてないけど、遠くの街からは戦火の匂いが漂ってきてるんだ。……俺たちは、備えるしかない」

私たちは、出来上がったばかりの剣を、秘密の横穴の奥に隠した。

それは、私たちが「現代の子供」から「中世の戦士」へと脱皮した証でもあった。

ドンレミ村の穏やかな風。

けれどその風の中に、私は微かに、鉄と血の匂いを感じ取っていた。

運命の足音は、一歩ずつ、確実に近づいてきている。

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