『彼女の恋の始まり』
27歳、出版社で働く麻倉優菜は、恋よりも仕事に生きてきた。
自分の気持ちを後回しにして、真っ直ぐで優秀な姉のような存在として、家族や後輩に頼られる毎日。
そんなある日、彼女は取材先で新進気鋭の写真家・一ノ瀬奏汰と出会う。
彼の言葉と写真は、優菜の奥深くに眠っていた“恋”の感情を静かに呼び覚ましていく。
一方、21歳の大学生・佐野遥香は、初めて「恋」に戸惑っていた。
写真部の先輩・立花理沙に惹かれながらも、「女の子を好きになること」に自信が持てず、自分の気持ちに蓋をしてしまう。
けれど、理沙の静かな優しさ、何気ない仕草のひとつひとつに、心が揺れていく。
実は、奏汰と理沙は兄妹。両親は仕事の都合で離婚したが、今も4人で仲良く暮らしている。
そして遥香は、優菜のいとこ。
それぞれが気づかぬまま、どこかで繋がっていた4人の“恋の始まり”が、ひとつの場所――写真展をきっかけに交差する。
これは、人生のなかで出会った「本当の恋」が、
心を少しずつ溶かしていく、4人の物語。
恋と向き合うことは、過去の自分と向き合うこと。
それぞれの「彼女」の、ほんとうの恋が、いま、静かに始まる。
【プロローグ】
プロローグ
2025/06/29 20:30