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オリジン・シード  作者: 草間
巨大棺構造体”メガコフィン・ストラクチャー”
15/19

14話 デカいことを求められるにはデカい理由がある

■巡洋艦アークⅣ後部タイタン用ハンガー・ケージ


 私はネロに抱えられ、もとい付き添われながらアンジェラが帰還したタイタン用のハンガーに向かった。そこではタイタンが既にハンガー・ケージに収容され、所定の位置に戻されているところだった。移動が完全に終わると、人体で例えるなら喉の下である胸元あたりが開いてアンジェラがぬるっと出てきたあたりだった。彼女は近寄ってきた飛行機の搭乗用階段車両のような大型ドロイドが付き終わるとそれに沿って降りてきた。


「態々迎えにきてくれなくても、管制はいいの?」


「クラウディアに任せているわ。他の航空隊も収容に入ってる。それにしてもとんでもない事態(ケース)だったわね」


「でも勝てた、見た時もだけどここまで接近されたのは恐ろしかったけど勝てんだから安心だよ」


「そうならいんだけど。報告と検証が必要そうな事態よ。悪いけど同じように送って行ってくれる?」


「えぇ……それは、構わないけど」


 運転はアンジェラがするのでは、と問いかけようとした時。彼女のフルフェイスヘルメット部分が展開されて茶の髪や素顔が開放される。最初に見た時の第一印象が作り物のような美しく整った顔。それが今は汗に濡れて若干焦燥しているような疲れた顔にも見えた。いやそれを隠さない程度に浸かれているのだ。ネロは彼女の頼みに気づいていたのか、パウチタイプの飲料を渡して回復を促していた。



巨大構造体(メガストラクチャー)コントロール・ルーム


「よくないわね。私よりまずナンブのメディカルチェックの結果を見てからね」


「宇宙怪獣を呼び寄せている可能性となりますと、脳髄から脊髄神経系統を探っていたと思われます」


「ザ・マスターはそこまで考えていなかったのかそれとも……まぁいいわ。結果はどう?」


 有志連合と海賊ギルドの戦いがひと段落したと思えば次は宇宙怪獣。地球を襲って壊滅させた宇宙怪獣が私を狙っている。何か探られているような感触があったことが伝わっているもので、それは確信となったがではそれがどういう類で探り当てたのか。


 それを探るために今は私はコントロール・ルームでうつ伏せにされて寝かされている。診療台のようにせり出してきたブロック構造に寝そべりシャツをめくってちょうど背中のあたりを晒している状態だ。病院の検査を受けているような感覚といえばそう。ただコードを貼って繋いで何かをモニターしているわけではない。


「アクセス痕跡がありますね。しかしこれは参りました。21世紀の人間は対策がされていないとは」


「あぁ……それは盲点だわ。どうする?今ここで体を開くわけにはいかないし」


「ちょちょっと待って、さっきからアクセスとか手術とか何の話なんです!?」


「私達にはネットワーク・アクセス用の生体パーツがあるのよ、特に軍人には強固なセキュリティのものが」


「教導院の騎士はある程度不要なのですが、その技術をナンブ様に応用するのは難しそうです」


「まぁソニアの話はいいから。とにかくそこにアクセスされてたわけだけど、セキュリティ処置していないから素通しなのよねアナタは。塞いでおかないとこれからも居場所辿られて襲われるのは確実でしょ」


 頭が痛いわ、とため息を吐くネロから解説が入ってきた。浮遊体であるプリムがふんわり浮かんでこちらをずっとレーザーのような光で探っているようで、その結果が逐次彼女らに逐次送られながら説明を聞かされる。なんと今のご時勢では一部のネットワーク、特に軍事用であったり職業によって固有のネットワーク同士で繋ぐなら体の方にプリントされた生体基盤を入り口に用いるようだ。


 いかにも未来のサイボーグ的な話なのだが、使う回線が4Gであったり5G……34世紀なら34Gかなみたいな話ではなく生体由来の波長を使うらしい。脳波とかが近いともいうがそれを用いる技術が確立されたようで基盤等はセーフティであったり防壁であったり。とにかくそういう規格の入口出口であるらしい。しかし私にはそれがない。ないなら使えないのでは?と思うがところがどっこい生体の波長なのでずっと開いている状態らしいのだ。


 彼女らがそれを利用して私にどうこうするのは考えられないが、それでも気づけなかったのは規格されている入り口が見つからなかったためだという。ソニアが言っていたのはインプラントとか規格がなくても勝手にアクセスできるかららしい。彼女からは……一応ないと思いたいが有志連合の中でも思惑が少し違う彼女だ。プリム達が釘を刺してくれたので私相手に何かをすることないだろう。本人はやらないと言ってるんでないと思いたい。



「対処はどうするか、ってところね。宇宙怪獣相手以外でもないと困るのはそうだけど、手を付ける判断は出来ないわ」


「外的な手術処置は様々な事情が付き纏いますし取返しがつきません。そこで疑似的に隠ぺい遮断する装置を急増ですが作ってみました。こちらを」


「……ちょっと本当にこんなものでなんとかなるの?」


「もしやこれは構造体の構成物質で作られたものでは?でしたらこうした対応のための素材としてはありえますね」


 疑問の声がでるネロと感心の声のソニア、両者正反対の聞こえたもので私も振り返ってその装置とやらを拝んでみようと試みた。どんなものか、首につけるデバイスとかフレーム状のサイバーなものかと思ったのだが、差し出されたそれは全然イメージしていたハイテックなものではなかった。なかったというか……見たことあるというか、使ったことがあるやつだ。


 あの、なんか小さい磁石を首筋とかに貼って血流を良くする……ようなあれ。ご丁寧にテープもついている。


「それ?それで本当になんとかなるの?それ血行を良くするやつじゃないの?」


「はい。これで生体波長への不正なアクセスどころか大体のものを遮断できます。そのままうつ伏せになってください。ソニア、指定の箇所へ装着を」


 はい、と言われたソニアによりあの…あれが、石がついた丸いテープが首筋や肩の付け根とかコリそうなところに貼られていく。本当にこれでなんとかなるのだろうか。確かに貼られていくとここで目覚めてから何か()()()()()()()()()()()が解消されていくような気がする……プラセーボ効果でないといいのだが。


「まぁこれで対策出来たとしてあとはこの構造体での対策ね。解析のデータが出てるけどちょっとまずいわ……二度目に来られたらとてもまずい、アンジェラもあの状態だし」


「まだ大丈夫、あと1度なら大丈夫よ」


「それは大丈夫とは言わない。酒盛りは切り上げてここを出るしかないわね」


「あぁいう武器が出来たのだから防衛設備を構築して、それで防げないのかな」


「次も似たようなのが出たとして、大きさや能力がどうなるかは断言できない。管制官としての意見は早急に離脱したほうがいい。宇宙怪獣もこの宙域にでて再生者がいないことがわかればどっかいくでしょ」


「それもあまり推奨できないわね。無傷の宇宙怪獣を放置しておくのは危険すぎる」


「ここ凝ってますね、可動域の都合でしょうか」


「そこまで曲がらないから適当に……あっ痛い痛い!」


「だからってアンジェラの状態、そしてこの艦隊で何とか出来る相手ではないわ。それに出たら出たの話。出現していない今考えることではない」


「では今回は移送作業は中止して試験生産エリアや生体バンクにあるサンプルをパッケージング。それを持ち帰りともなりますか?問題は残りますが」


「アークⅡの乗員をどうするか、ね。幸い食料等もあるから生存はできるでしょうけど再生者の身柄ではなく構造体を狙っていたら話が変わってくる」


「水分補給をした方が良さそうですね。まだ起きてから1日経ってないと聞いていますから。足のほうもやりましょうか?もうすこし開いていただければ……」


「さ、裂ける!股が裂けちゃうから!」


「ちょっと聞いてるの!?ソニアはいつまで遊んでいるの!教導院側のオブザーバーなんだからあなたも対応を出すぐらいはしなさい!」


 いつのまにか磁石シートを貼っていたはずのソニアから整体のほうのきっついマッサージを受けることになっていたのだが声が漏れているあたりで叱られてしまった。緊張感がないのでそれはそうなのだが、マッサージの練習人形のようにされていた私がどうできたものか。一方ソニアは渋々といった具合に私を起こし、求められる今後の対応に対しての意見を述べる。何を今更考えることがあるのかという声色だったのが驚きだ。


「アンジェラが黙っているようにわかりきったことです。災害のような宇宙怪獣だったもの、相手が目標を持つ思考のある相手ならやりようはいくらでもあります」


 何を、と思ったのだろう。ネロや今度のことで話していた士官一同の視線がアンジェラに向けられる。パウチ系の飲料を折りたたむとアンジェラは気だるげに口を開く。今までのような突発出会ったり散発ではない相手……目的がわかっているならその分考えを辿ることが出来る。


 今回の場合明確に狙って来た目的がある。私か、遺跡構造体。そのどちらかではあるが淡い期待などを除外すれば再生者である私を狙って来ている方が納得がいく。宇宙に点在する遺跡よりも目覚めたばかりのオンリーワンの人間、ただ一人の存在を狙って出現している。処置が終わったならとっととフィナメスに向かうべきだと。


「目標を見失ったというのならば順当に考えてまた次をここに送り込んでくる可能性が高い。次に出た時までに防衛機構を構築できるかわかないのならば、私が残る。1度くらいならば撃退できるし、いない上で撃退されれば当分の対応は考えるでしょ」


「……わかった。戦闘班長の指示に従う。タイタン用のケージや装備をこちらに移して、そのスペースに試験生産施設を移動させる。艦長もよろしいですね」


「作業を始めて、時間がないわ。震動が来てからでは遅いから、お願い」


 艦長らの無言の承諾を受けてゆっくり立ち上がったアンジェラは、テーブルにまだ残されていた果物を適当に掴んで口にし始め……その後にエナジーバーを齧っていく。果物を水代わりに摂取し、さらに2000キロカロリーのバーを食べている。あの少しの時間の出撃でそこまで疲弊したのだろうか。とにかく異常に疲労しているように思えた。その彼女が、ここに残るとはどういうことだろうか。


 何かを言おうとする前にバナナを差し出されて止められてしまった。


「我々の使命はナンブ、あなたの確保と無事に送り届けること。それとは別に地球人類が持つ使命がある。宇宙怪獣の脅威の撃退と排除。どちらも優先されるべきこと。ソニア、解説を」



「ザ・マスターがこの宇宙にいた時代より人類から恐怖の存在とされていたのは危険な図体が故ではありません」


 出現すれば物理的な衝撃波として影響が現れる。しかも宇宙を漂っているだけでこの宇宙にある社会に凄惨な影響が出る。出た場合、放置して人が住む惑星に影響が出るようであってはならない。そのために特措法という超法規的なものが存在する。それは長い間続いていた上に、地球人類が銀河連邦に加入してから加えられた条文すらある。


 排除できる可能性があるなら全力にあたること、とくに戦力を持つならばと。義務の話がされていた。そして今予期された襲来と対応可能な戦力がある。ならば対応できるかわからない状態ではあるが、可能性があるアンジェラと武装を残すのがいい。今度は構造体事持っていかれるかもしれない。そんな予兆があると。


「い、いやそれはアンジェラを見捨てていくということでは……私はそういうのは、あまり」


「今ナンブ様を失うわけには行きません。数々の惑星と宇宙、地球の再生という目的があるのです。同意もされたと思いますが」


「しかしそれにしても……プリムはどうなんだ」


「私はナンブ様が全てですから。その存在のご意思と決定に従います」


「合理的に考えればという話よ。最悪後任への推薦は出しておくから安心して。ソニア、今後の身辺護衛はあなたに一任する」


「言われずとも。無事フィナメスに送り届けた後もお任せください。終生の主をお守りします」


「まぁそんな深刻な顔をしないで。いつくるかはわからないし、今のうちに銀河連邦に連絡をつけておくから。どちらにせよこの巨大構造体(メガストラクチャー)の確保や駐留は必要でしょ」


 そうではない。私にはわからないのは歯がゆいが、あの恐怖を野放しにするのかというのには理解できてしまう。今はわからないがあの時に感じた嘗め回される恐怖感と結びついた巨体。あと少しで食われていたかもしれないのがまた来るかもしれない。いや……異常や異例と言っていたのだ。もしかしたらあぁいったのがこれから始まるのかもしれない。宇宙怪獣が方々の惑星や人々を襲いに来る……私はその始まりなのかもしれない。


 ぞっとする話だ。だからこそ長い期間を見て、ここで止められるなら止めて拡散を防ぎたい。相手が目的を持っているなら一時でも断念させたい。そのため現状一番妥当なアンジェラが残るというのだ。あとは希望者と言うがどこまで残るかはわからないとも。プリムはある程度の損害は覚悟の上で防衛機構を構築するようにも計画していた。私とアンジェラはここでお別れなのだろうか。いつかは分かれることはあるだろうが、このような形であってよいのだろうか。


 その疑問など些事かのように震動が構造体を打つ。


「震源確認!移送作業中だっていうのに……警戒機を出す!測定を急いで!」


「アンジェラ、いつぐらいに出れそう!」


「いつでも」


 待ってくれという言葉もまた震動に打たれて出れず。いや比喩ではなく大きな衝撃でよろけてしまい、私はソニアに支えられることで転ぶことが防がれた。それは私だけではなく、アンジェラやネロ。他の兵士たちも同じく。立ち上がろうとするところにまた衝撃が連続して続いていく。


 何がと確認するまでもない。コントロール・ルームのモニターに映し出されるのは宇宙怪獣の出現を予期させる震動源……それが続々と現れて群れとなしていた。その量から、艦隊とも思えるぐらいの者達が続々こちらに向けて超空間を破って出現しようとして来ているのだ。


「判断が遅かった……」


「いえ、相手が早すぎたのよ」




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