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8 勝負の昼休み

春の推理2024にエントリーして連載しています。

中学生男子が主人公の推理物です。

語り手は代田弾だいただん、中心人物である園山雪人そのやまゆきと『ユキ』の親友です。

ユキからだけ『DD』と呼ばれています。

予定ではこの話を入れて3話で完結の予定です。


最後までお付き合いいただけたらうれしいです。

どうぞよろしくお願いします。

 俺とユキは2時間目と3時間目の間の休み時間からこそこそ弁当を食い始めた。

 ユキはまいから貰ったおにぎりの包みを開けて張り付けられてた付箋を見て笑った。


「まいって思ってたより気遣いの人なんだな」

 そう言ってラップを剥がしておにぎりをぱくつきながら付箋を見せてくれる。


『最初からラップを使って握ってる。食材には直接触ってないから!』と書いてあった。


「他人の手作り料理を食べられないって人もいるそうだし、作るにしても気を使ってくれたんだな。

 作ると決めた時もすごく悩んだんだろうな。

 でも、じゃあやめるじゃなくて、工夫してやるところがすごいよな。

 うん、うまい!」


 おにぎりの方がこそっとは食べやすそうだな。

 俺は箸で弁当のおかずを口に放り込んでは蓋を閉めつつもぐもぐした。


 何とか半分食べたが、ユキはもらったおにぎりを全部食べ終えてしまっていた。


 4時間目が終わると、俺は残りの弁当を急いで食べ、ユキは「時間あるならちょっと…」と教室を出て行った。

 俺は急いで5分で食べ終え、廊下に出た。ちょうどユキが戻ってきた。

 歩きながら話す。


「どこ行ってた?」

「圭先輩のとこ。近藤と話すけど、圭先輩のことは言っていいのかダメなのか、確認してきた」

「なんだって?」

「できれば言わないでくれると助かるって。後、紗枝先輩と拓斗先輩の動きで気が付いたことがあれば教えてくれるって言ってた」

「そうか」


 俺達は階段を上り、3階の社会科準備室に向かう。

 引き戸のすりガラスから中の電気が点いていることがわかる。もういるんだ。

 俺がノックすると「はい」と近藤の声がしたので俺とユキで部屋に入った。


「……園山も一緒か」と椅子に座っていた近藤が顔をしかめて言った。


「一緒に調べてたんで」

 ユキが低い声で答える。


「で、代田、相談ってなんだ?」


 俺とユキは手前の椅子に座った。


「俺の下駄箱に入っていた脅迫状のようなメッセージ。

 誰が入れたのか、作ったのかみんなで調べたんですけど、作った人はわかりました。

 でも、その人は俺の下駄箱に入れてなくて。

 近藤先生の下駄箱に入れたそうです。だから、その先のことを聞きに来ました」


 俺が言うと、近藤先生がユキを見た。

「やっぱり、お前が作って入れたのか?」

 俺は言い返す。

「先生違う。ユキは脅迫状の活字や古新聞の色から作った人を探し当ててくれたんだ」


 近藤先生が「えっ?」と聞き返す。


「あのメッセージは近藤先生に対してのいたずらだったそうです。

 それが代田の下駄箱に入っていたことに、その人も驚いていました。

 だから、どうして先生が手にした脅迫状が代田のところに来たのか、知りたいです」

 ユキが冷静な感じで言った。


「俺じゃない。俺は……確かに受け取ったけれど……」

「誰に渡したんですか?」

「誰って……」

「紗枝先輩ですか?」


 近藤先生が目に見えて動揺している。


「そうなんですね」

 ユキがため息をついた。


「じゃあ、紗枝先輩がDDの所に入れたんだな」

「ちょっと待て! 本当にお前が作って入れたんじゃないんだな?」

「はい、代田の所に脅迫状が来て、次の日に儂、体育倉庫の丸太の事故に巻き込まれそうになって。

 嫌な感じがしたんで、協力してくれる友達と一緒に調べたんです。

 そうしたら、脅迫状は作った人から近藤先生まで渡ったことがわかった。でも、事故のことはまだわからないから、最後まで調べるつもりです。必要なら学校に報告します」

「俺は何も知らないぞ!」

「でも紗枝先輩に渡したんですね?」

「紗枝がお前が入れたと言ったんだ! 返すからと言われて渡した……。

 俺は何も知らないし関わっていない!」

「そうか、それでDDの下駄箱の付箋を見て不安になったのか……。

 先生と紗枝先輩、一昨日の昼休み、どこにいましたか?」

「一昨日……、あ、お前たちが事故のことを報告に来た時か! 俺は職員室にいたぞ」

「田中先生に聞けば確認できるか?」

 ユキが呟くと近藤先生はぎょっとしたような顔をして「おい、俺は関係ないからな!」とまた言った。


「関係ないはないでしょう? 先生の彼女がしたことなんですから」

「もう別れた! 

 昨日、代田の下駄箱に入れたのかと聞いたら、わけのわからないことを言い出したので、最初から何もなかったことにしようと、別れた。もう関係ないからな!」


「えーと……。でも事実は残りますよ。先生が何もなかったことにしても、紗枝先輩はそうじゃないでしょう? しかも事故まで起こしてるかもしれない」


 その時、引き戸が開いた。焦った顔の圭先輩がそこにいた。


「紗枝と拓斗が体育館の方に向かった。それから……」

 圭先輩が後ろを見ると、1年女子がそこにいた。


雪人ゆきと先輩、ごめんなさい!!

 紗枝先輩に脅かされて、私……、まい先輩を体育館に呼び出しました。……ごめんなさい!」

「七瀬がオレの所に青い顔して来て、話を聞いたんだ。

 あわてて体育館の方を廊下の窓から見たら、紗枝と拓斗が一緒に歩いて行くのが見えて。

 とりあえず知らせに来た」

「近藤、もう関係ねえじゃ済まねえぞ!」

 ユキが叫ぶと走りだす。

 俺は圭先輩に「近藤先生を連れて体育館に来て下さい!」とお願いして、すぐ追いかけた。


「あかねも一緒だと思う!」と俺は走りながら言う。

「だと思うけど、だからって安心はできないよな!」


 階段を2段飛ばしで駆け下り、昇降口に出ると職員室から出てきた体育の三上みかみ先生に「こらっ! お前ら走るな! 止まれ!」と怒られる。


 俺達は立ち止まらず、玄関を飛び出て体育館へ走った。

 体育館の入り口は少し開いていて、その隙間に手をかけて全開にして中へ入った。


 誰もいない。


 俺とユキは体育館の真ん中まで進むと立ち止まって周囲をぐるりと見回した。

 体育館の舞台奥の方から人の声がかすかに聞こえた。

 ユキがそちらに走りだした時、あかねの大きな声が聞こえた。

「まいを離しなさいよ!!」


 俺達は舞台の上に上がると奥を確認する。

 奥の左側の倉庫のような場所から鈍い衝撃音と「あかね!!」とまいの声がした。


 俺達は倉庫に走りこんだ。


 そこにはあかねが壁にもたれるように座りこみ、そばではまいが拓斗先輩に捕まえられていて、あかねの方に行こうと必死にもがいていた。

 少し離れたところに紗枝先輩がいた。スマホを構えて動画を撮っているみたいだ。


 俺は「あかね!」と言いながらあかねに駆け寄った。

 ユキは「離せ!」と言いながら拓斗先輩に近づいて、拓斗先輩が振り回した右手をつかんで止めると腹を蹴ろうとした。

 拓斗先輩が腹をかばおうとして左手でつかんでいたまいの腕を離す。

 まいはよろけながらもあかねの方へ来て座り込んだ。

「あかね!!」

「まい、大丈夫?」

 あかねもまいを心配し、ふたりで手を握り合った。


 俺は立ち上がりユキの隣に行く。

 ユキと俺とで暴れる拓斗先輩をなんかと組み伏せる。


「なにやってるのよ!」とスマホを手にしたまま紗枝先輩が叫ぶ。


 まいが叫び返す。

「拓斗先輩が丸太の犯人で、それを動画に撮ってた紗枝先輩が拓斗先輩を脅してる!」

「僕は……、嵌められたんだ! 紗枝にそそのかされて……!」

 拓斗先輩が抵抗するのをやめて呟いた。


 その時、体育館に入ってきたらしい近藤先生と三上先生、圭先輩と七瀬と呼ばれていた女子の声が聞こえた。


「舞台横の倉庫です!」と俺は大声を張り上げた。


 倉庫に先生達が入ってくると、紗枝先輩がスマホを隠そうとする。

「先生! 紗枝先輩のスマホで動画が撮影されてます!」とまいが叫ぶ。

 

 三上先生が紗枝先輩に近づきスマホを取り上げた。

 七瀬と呼ばれていた女子が「まい先輩、ごめんなさい!!」と涙ぐみながら謝っている。

「紗枝先輩に脅かされてたんでしょ。わかってたから……」

 まいがあかねと七瀬さんの真ん中で両方の背中に両手を伸ばしさすっている。


 まいと七瀬さんがあかねを支えて立ち上がり歩き出す。

 俺とユキは拓斗先輩の腕を両側から捕まえた状態で引き立てて歩き出す。

 紗枝先輩も近藤先生に促され、歩き出した。


 三上先生が紗枝先輩のスマホを手に俺に声をかけてくる。

「これはどういうことだ?」

「紗枝先輩と拓斗先輩に聞いて下さいよ。

 俺達はまいとあかねがふたりに体育館に呼び出されたと圭先輩と七瀬さんから聞いて、危ないと思って走ってきたんです」

「そのスマホの中の動画をいくつか見れば、何があったかわかると思います」

 ユキも短く言った。


「とりあえず、中3の3人は俺と一緒に指導室に来い。

 その後、中2と中1は保健室にいるように」

 三上先生がそう言って、先頭を歩き出した。

読んで下さりありがとうございます。


拓斗先輩、まったく喧嘩強くなかったので、殴り合いとかのひどい暴力沙汰にならずに良かったです。

次も頑張ります!

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