7 謎解きの続き
春の推理2024にエントリーして連載しています。
中2男子が主人公の推理物です。
語り手は弾。中心人物であるユキの親友です。ユキからだけDDと呼ばれています。
弾の幼馴染の茜、その友達の麻衣が謎解き仲間になりました。
自分のメモでは仮の日付をつけて日にちを把握していたのですが、部活のことを書いていて日付より曜日や!!と気が付いたので、これまでの投稿にも曜日の表記を少し足しています。
剣道部 月水金、家庭科部 月、ボードゲーム部 金、美術部は個人で作品制作があるので随時という感じです。
最後までお付き合いいただけたらうれしいです。
どうぞよろしくお願いします。
ねーちゃんを部屋から追い出して俺達はまた座った。
まいが急に笑い出す。
「ひー、弾がユキを押し倒すって!! ひーっ! 面白ーい!!」
思い出して笑ってるようだ。
恥ずかしいからやめて。
ユキも一緒になって笑いだした。
おいおい!!
「ユキ笑うんじゃねぇ」
「えっ、まいはいいの?」
「良くないけど……。お前だって当事者じゃん!」
「ん? 儂、押し倒された方だし、別にいいけど」
「それ言うな! 押し倒したんじゃねえ。抱きついただけだろ! 友情の抱きつきだ! 変な意味はねえ!」
「わかってるって!」
「だったらもう笑うな!」
「はいはい!」
「はいは1回!」
「はい!」
俺とユキのやり取りを見ていて、あかねまで吹き出す。
「はいは1回って、弾のお母さんがよく言ってたよね」
はっ?
小さい頃の、そして母親の話、友達の前でされるの、すっげー嫌なんだけど。
俺が不機嫌な表情で黙ると、3人は静かになった。
「……じゃあ、謎解きの続きな」と沈黙を破ってユキが話し出す。
「脅迫状のことは近藤に聞いてみるしかないと思う。
DD、相談したいって呼びだしてくれる?」
「えっ、俺?」
「うん、DDからの相談なら、きっと来ると思う。
その時、儂も一緒にいて、脅迫状の話するから。どうしてDDの下駄箱に入れられてたか聞こう。
もうそれしか方法がないよ」
まいとあかねが見合ってから「「私達も!」」と言う。
「まいとあかねは近藤とは関わらない方がいい。
もし紗枝先輩が近藤と本当に付き合っていたら、何されるかわかんないぞ。
あかねと待機してて」
あかねとまいはまた顔を見合わせて「「わかった」」と答えた。
俺が明日の朝、近藤に相談したいということにして今日は解散することにした。
もう午後6時を過ぎている。
「まいは家どこ?」とユキが言う。
「南町。学校からだとあかねの家の前を通って10分ぐらいかな」
「DD、送ってやってくれるか?」
ユキが俺に言った。
「いいよ!!」
まいがあわてて顔の前で手をぶんぶん振る。
「私と弾で送るから大丈夫! 弾、まいの家まで私と一緒に行って、その後戻ってこよう」
あかねが言ってくれて、俺は「いいよ」と頷いた。
ユキがほっとした表情をした。
俺の家を出て、反対方向へ歩き出すユキを3人で見送り、歩き出す。
「グループLINE作ったから」とあかねに言われて、スマホを取り出し確認する。
『謎解き仲間』というグループができていて、招待されてる。
「家に着いたらなんか送るね!」とまいが言った。
部活の話などしながら歩き、まいの家に到着。
「ふたりとも送ってくれてありがとう」
「明日、一緒に登校しようよ! 後でLINEで相談しよ!」
あかねが明るく言ってから俺を見る。
「えっ、俺も? 俺、いつもユキと一緒だけど?」
まいと別れて、あかねと来た道を戻る。
「弾とユキが友達で良かったよ。
ユキのこと、けっこう誤解してた。
何もなかったら、好感度最低のままだったと思う。
弾とユキの友情も素敵だね。良いなと思った」
あかねがしみじみと語りだしたので、俺はうれしいような恥ずかしい気持ちになる。
「……ユキの良さがわかってもらえて、うれしい。
でも、あかねとまいのおかげでユキが抱えていたことがわかったから、ふたりに感謝だな」
「そうだね。悩みって、人に相談できると解決方法が見えてきたりするんだよ。
私達がユキにとって、そういう人になれたらいいね。
本当にユキは何にも悪くないのに、ごめんって謝ってばかりだったから、悲しくなって、弾にちょっときつく言っちゃってごめんね」
「……いいよ。あれで、俺もユキの気持ちを少しは理解できたから。
ふたりがいなかったら、俺、何で言ってくれなかったと、ユキをもっと責めてたかもしれん……。
俺こそ、ありがとう、だよ」
「明日、近藤先生との対決、頑張ってね!」
「いや、俺は呼び出すだけだから……」
「弱気だなあ。ま、ユキのそばに弾がいるだけで、ユキは頑張れると思うよ」
あかねの家の前に到着。
「じゃあ、明日な!」
「うん、後でLINE見てよ! バイバイ!」
あかねと別れて我が家に戻る。
玄関を開けると、ねーちゃんと母の靴があった。
「ただいま~!!」
俺は元気な声で叫んでから家に入った。
夕食を食べ、風呂に入り、宿題をやっつけようと自分の部屋に戻り、スマホを見るとグループLINEに動きがあった。
明日の登校時間を相談している。
俺はいつも家を出る時間と、その時間に歩いて行けば大体途中でユキと合流できることを短く書いて送った。
後はまいとあかねが相談して決めることだ。
宿題を机の上に広げたが、スマホがブーブーうるさい!!
俺はスマホの電源を落とした。
次の日の朝、いつもの時間に家を出ると、あかねとまいがいてびっくりする。
「「おはよう!」」とふたりに言われて、ちょっと後ずさりながら「おはよう」と返した。
ふたりはおしゃべりしながら俺の後をついてくる感じで歩いている。
うーん、早くユキと合流したい。
「そういえば、弾。どうしてユキはDDって呼ぶの?」
あかねが急に俺に話しかけてきた。
「イニシャルじゃないの? 後、ダンって発音するのに力が入りすぎると言われた」
「力が入りすぎる? まあ、最初のダがけっこう力強く言わないとかな?」
まいがダ、ダと何度か口を動かしてみて言った。
「でも、俺、DDってユキが呼ぶのは気に入ってる」
「ふーん。そっか、じゃあ、私達は呼ぼないほうがいいね」
まいがそう言うとあかねと一緒に笑った。
前方にユキの後姿を発見!
「おはよー、ユキ!」
俺は声をかけながら走り出す。
あかねとまいも後ろから走ってついてくるのが気配でわかる。
ユキはいつものように振り向いて立ち止まり、「おはよう」と返事しながら待ってくれる。
無事に合流するが、まいだけゼーハー息が荒い。
「まい大丈夫?」とあかねが心配してる。
「大丈夫……。剣道部ふたりに、体力では、勝てないよ~!!」
「儂も文化部だけど」
「いや、ユキは走ってないでしょ!!」
あかねが突っ込んだ。
学校に着くと下駄箱を開ける。
何もない。安心する。
上履きに履き替え、ユキと職員室の方へ向かう。
あかねとまいには教室に行くように伝えてある。
職員室の手前でユキが立ち止まり「DDがんばれよ!」と言われる。
俺は頷いてから職員室の引き戸をノックしてから小さめにガラッと開けてみる。
事務員さんに「おはようございます。近藤先生いますか?」と声をかけた。
事務員さんが立ち上がり近藤先生を探してくれる。
「まだいらしてないみたい。何?」
「2年B組の代田です。相談したいことがあって、時間作ってもらえないかと。
昼休みに社会科準備室の方に行きますと伝えて下さい」
事務員さんがメモを取り「伝えておくね」と言ってくれた。
「よろしくお願いします」
俺はお礼を言って職員室の引き戸を閉めた。
ユキのところに戻って「伝言頼んできた」と伝えて一緒に教室に向かう。
B組前にはあかねとまいがいた。
「職員室にいなくて伝言頼んできた」
「じゃあ、昼休み頑張ってね!」とあかね。
まいが両手のひらに乗るくらいのハンカチの包みをユキに押しつけた。
「今日、パン買いに行けないかもでしょ? これおにぎり」
「あ、ありがとう」
ユキはびっくりしながらも受け取る。
「昼ちゃんと食べないと死活問題なんでしょ」
ふたりはD組の教室に戻って行った。
教室に入るとユキにクラスの男子が話しかけてきた。
「なあ、園山。結局、D組の大場と付き合うことにしたの?」
「は? 友達だけど」
「いや、振ったんじゃなかったっけ?」
「付き合うとかじゃなくて。その後、話す機会があって友達になっただけ。
……誰かに何か言われたのか?」
「いや、3年の先輩数人に昨日聞かれてさ」
「3年の誰?」
「そんなに怒るなよ。サッカー部の先輩と……」
その男子の隣の男子が口を挟んでくる。
「オレは化学部の先輩に聞かれたよ」
「お前も? 俺もそう!」
「化学部? 拓斗先輩?」
「あー、そんな名前だったっけ? メガネの真面目そうな先輩だよ」
「で、なんて言ったの?」
「昨日は廊下で話ししてたり、昼を一緒に食べてたみたいだけどって言った」
「お前らなあ……」
「いや、事実だろ。実際昨日も今日も廊下で話してんじゃん!」
その時予鈴が鳴って、まだカバンを下ろしていなかった俺達はあわてて仕度を始めた。
担任の田中が入ってくると「代田!」と呼ばれる。
「はい?」と言って前に行くと「近藤先生からの伝言」とメモを渡された。
事務員さんが朝書いてくれたメモ、だと思う。
『2B だいた 今日昼休み 社会科準備室に相談に行きたい』と書いてあり、それに違う筆跡で『OK 近藤』と書き加えられていた。
「ありがとうございます」と俺は受け取って、席に戻りながらユキにニヤッと笑ってみせた。
読んで下さりありがとうございます。
次も頑張ります!




