5 謎解き仲間
春の推理2024にエントリーして連載しています。
中学生男子が主人公の推理物です。
語り手は代田弾、主人公の親友の園山雪人からだけDDと呼ばれています。
他の人は弾と呼びます。
最後までお付き合いいただけたらうれしいです。
どうぞよろしくお願いします。
昼休み、俺とユキは購買に走りパンをゲットし教室に戻った。
大場とあかねがB組前で弁当を持ち、待ち構えていた。
「話があるって言ったよね!」
大場が俺に向かって言う。
なんでだよ。ユキに言えよ!!
「パン買いに行かないと昼抜きになる。死活問題だ」
ユキが真面目な顔で言う。
大場はため息をついて「ついてきて」と言った。
大場とあかねが進んで行った先は国語科準備室と名のついた空き教室で、ふたりはそこに入っていく。
「ここ入っていいの?」
俺は戸惑って立ち止まったが、ユキは特に気にせず入ったのであわてて追いかける。
「私、国語係だから。国語の話し合いで使いたいって許可もらってる」と大場。
へー、科目の係なんてと思ってたけど、こういう特典があるのか。
机を寄せて4人で昼食を食べる……、なんか変だな?
「で、何であかねと仲良くなったの?」
大場がにっこり笑って言う。
「あかねに聞いてるんだろ。どこまで話した?」とユキがあかねに聞いた。
「昨日のことを……」
「脅迫のことも?」
「うん、ごめん」
「まあ、いいけど。大場さん、疑って悪かった。それは謝る。ごめん」
「うん、ひどいよ。でも許してあげる。
で、私もその謎解きに参加させてよ」
「謎解きって……。ゲームじゃないんだから」
嫌そうに答えるユキ。
「なによ! あかねにはいいって言ったのに、私はダメなの!!」
「えーと、昨日あかねにも言ってなかったけど、儂、本当に狙われてるかもしれなくて……」
ユキが俺を見るので俺は話し出す。
「昨日の昼休みさ、ユキに棒倒しの丸太が倒れてきて。
確認したら、陰から倒れるタイミングが取れるように長縄がしかけてあったんだよ。
でも、先生に報告に言ってる間に長縄が消えてたんだ。
だから……、あんまり関わらない方がいいと思う。
あかねも今朝はありがとうな。
そんなわけだから、大場さんも……」
大場さんが顔を赤くしている。
なんだ?
「すごい! なにそれ!
こんな推理小説みたいに面白そうなこと、絶対関わりたい!!」
「ん? ……大場さんって、推理小説好きだっけ?」とユキ。
「そう! 推理物にはうるさいわよ!
さらに園山が痛い目に合うのが見れるかもなんて役得じゃない!」
「いや、それどういう趣味?」
あのユキが気味悪そうに大場さんを見る。
一部のマニア?
そんな言葉が俺の頭に浮かんだ。
「園山が狙われてるんなら、私達は大丈夫でしょ!」
「いや、巻き込まれでもしたら……」
「大丈夫だって! そうしたら、園山と代田くんが身体を張って守ってよね!」
「……無理」
「俺も無理っす」
黙っていたあかねが話し出す。
「まい、手伝えるところは手伝うくらいにしようよ。
そのかわり、謎解きがどこまで進んだか、ちゃんと教えてよね!」
「だから、謎解きじゃないって!」
ユキが憮然とした表情で言い返す。
「儂の中ではそのうちのひとりは拓斗先輩なの。大場はもう関わりたくないだろ?」
「そう、なの? そうだなあ。確かに、もう関わりたくないけど、図書委員では一緒だし、大丈夫だと思う」
大場がゆっくりと考えながら言った。
拓斗先輩って図書委員だから、ユキとよくいる俺も顔と名前ぐらいは知ってる。
メガネの頭良さそうな真面目な感じの先輩だ。
大場と何かあったのか?
そういやトラブルで助けたとか言ってたよな、昨日。
俺はあかねに聞いてみた。
「昨日言ってたユキが大場を助けたトラブルって何?」
「えっ!」
あかねが大場をちらりと見てからこちらに向くと、首を振る。
「いいよ、あかね。気を使わなくても。
あのね、拓斗先輩に告白されて断ったんだけど、しつこくて。
図書委員の時に書庫に行った時、追いかけてきて……、園山が助けてくれたの」
「あー、儂が言ったんじゃないからいいか……。
それで、大場を逃がした後、『このこと誰にも言うなよ!』と言われたんだよ……」
ユキが言っちまったーという感じで言った。
「それが口止めのひとり、か」
俺が聞くと、ユキが頷く。
「まあ、でも、脅迫状を作るような感じではないね」と大場。
「そうか? なんか鋏で新聞切ってるの似合いそうだけど?」
ユキの言葉に大場が吹き出すように笑った。
「やだあ、想像したら笑える!」
涙を目に浮かぶほど笑ってから大場は言った。
「拓斗先輩は違うと思う」
「そうかあ、思うだけじゃなー。
でも先に美術部の方を当たれば、拓斗先輩と話をしなくても済みそうだし……」
ユキは何やら天井の方を見上げて考えてから「わかった!」と言った。
「あかねと大場も謎解き仲間ってことで。
何か調べたり、手伝って欲しい時は声かける。
それ以外は勝手に動かないで。自分の身は自分で守る。ちゃんと報告しあう。それなら大丈夫か?」
「じゃあ、私も園山のことユキって呼んでいい?」
「まあ、いいけど……」
「代田くんは弾ね」
急にこっちに話を振られて焦る。
「う、うん、いいよ」
「私のことはまいって呼んでね!
じゃあ、LINE教えてよ!」
「儂持ってないから。DDと交換しといて」
「えっ?」
「儂、携帯もスマホも持ってない、から」
「「え~!!」」
あかねとまいの声がハモッた。
「じゃあ、弾とどうやって連絡取ってるの?」
「特に取ってない」
「うん、特に何も?
だって部活も違うし、遊ぶ時だって学校で約束すればいいし。そんなに困らないよな」
俺達の言葉に目を丸くするふたり。
「まあ、いざとなったら、普通の電話だな」
「そうそう、たまーにユキが家電から俺のスマホにかけてくる」
「だから待ち合わせの時は使えないよな。うん」
「この人達、信じられない……」
まいが呟いた。
いや、人達ってなに?
スマホ持ってないのはユキだけだから。
学校の中ではスマホは出して触ってはいけないルールなので、下校したらあかねが3人のグループLINEを作ってくれることになった。
読んで下さりありがとうございます。
次も頑張ります!