3 意外とデンジャラス
悪役令嬢や聖女が登場している話をたくさん読んで楽しくなり、自分でも書いてみたくなり小説を書くこと挑戦しています。
春の推理2024にエントリーしてこの話を書き始めました。
最後までお付き合いいただけたらうれしいです。
どうぞよろしくお願いします。
「心当たりがありすぎるってなんだよ。スパイとかじゃあるまいし!」
「いや……、スパイって言うか目撃者?
最近、3件ほど見たこと誰にも言うなって言われたことあるし、告られて断ったら逆切れされることもあったし、何度断っても絡んでくる人とその取り巻きもいるし……」
ユキは指を折って数えて「うん、殺されるってレベルとは思わんけど……。6パターンぐらい思いつくわ」と言った。
「お前……、俺の知らないところで結構デンジャラスな毎日送ってたのね……」
俺はあきれてユキの顔をじっと見た。
「儂ほど人畜無害な奴っていないよな。言うなって言われなくても言わんわ!と思う」
確かに、ユキだったら何か他人の弱みを握っても、特にこちらに攻撃してくるような人でなければ、それは言わないと思う。
ただ、それは俺だから、そうわかるのであって、他の人から、もし弱みを見られたと思った人からならどうだろう?
「いや、俺はわかるけど、他の人から見たら、お前、無表情の何考えてるかわからんマイペース野郎だぞ。何気に毒舌だし」
「えっ、儂、そんな風に見えるのか? じゃあ、なぜ、こんなにもてるんだ?」
「いや、一部の女子にはもてるかもしれんが、全男子には嫌われてるぞ、お前」
「DD、お前も男子じゃん」
「いや、俺はユキのこと知ってるから。良く知らない奴らからすれば、ほら、さっきのからかってきた奴らとかからすれば、お前は挑発に乗ってこないいけ好かない奴だと思う」
「へー、儂、挑発に乗って言い返してるけどな」
「だから、それが冷静だから、相手からしたらいけ好かない奴になるんだよ」
ユキはほーっと感心するような表情で俺を見た。
「よく回り見てんな」
「お前ほどじゃないけどな」
「儂は自分の気に入った人しか見てないけどな」
「……お前に口止めした奴の方が可哀そうになってきたわ」
「あ、そろそろカウンターに戻らんと」
ユキがあわてて封筒に脅迫状を戻して、こちらに戻してきた。
「えっ、俺が持ってるの?」
「うん、それで帰りに下駄箱に付箋張らせて。文章これから考えるから。
後、今井茜って剣道部だよな?
DD、連絡つく?」
「あ、うん、連絡先は知ってるけど……」
えっ、告られたって、もしかしてあかねに?
「じゃあ、俺がちょっと話したいことがあるって連絡しておいて」
結局、午後4時45分までの図書館のカウンター当番が終わるまで、俺は図書室で宿題をして過ごし、50分にはユキとふたりで下駄箱に向かった。
「これ、貼るけどいいか?」
見せられた付箋には『あのこと? 代田』と書いてあった。
「いっ?」
俺はびっくりしてユキを見た。
「犯人が投函ミスしたこと、これで気が付くだろ?
そしたら、儂の方にまた何かよこすかもしれんし。これぐらいのメモなら無くなっても問題にならんだろ?」
「いや、それはそうだけど……」
「下駄箱間違えられてる方が嫌だろう。何か違うもの入れられるかもしれんし」
「ま、それもあるな……。わかった、貼ろう!」
そういうこと言われたら下駄箱開けるの怖くなるじゃんね!!
恐る恐る開けたら特に何も変わってなくてほっとする。
上履きを入れて蓋をするとユキがその上に「悪霊退散!!」と言いながら付箋を貼った。
「そういうとこ……。やっぱお前面白いわ」
「誉めてくれて、ありがとさん」
ユキがニヤッと笑った。
いつも無表情の奴が不気味に笑ってるのになんかかっけえ……。
「ん? なんだよ?」
ユキが俺の表情を見て言った。
「いや、一部のマニアな女子にもてるのわかるような気がする……」
「惚れ直した?」
「いや、お前そういうことサラッと言うから変な噂とか言われるんだろ!!」
学校を出て少し歩いてからあかねにLINEする。
すぐ既読がついて電話がかかってきた。
『園山が私に話があるってどういうこと?』
「いや、連絡付けてくれって言われただけで……」
俺がしどろもどろに返事をすると、ユキが手を出してきたのでスマホを渡す。
「あ、今井さん? 儂、園山。ちょっと確認したいことがあるんだけど、これからどこかで会えない?」
あかねの返事は俺には聞こえない。
「うん、わかった。じゃ、DDに代わるわ」
『弾! これからあんたんち行くから、園山連れてきて!!』
マジですか?
通話を切ってからユキに「これから家来れる?」と確認する。
「ああ、今井さんがそうしろって言ってたから、わかったって返事した。
寄れるけど、DDん家ちは大丈夫?」
「とりあえず大丈夫だと思う。母さんも姉さんもまだ帰ってこない時間だし」
「じゃあ、急で悪いけど寄らせてもらう」
家に着くともうあかねが我が家の前にいた。
「遅いよ!」
「悪い悪い!」
俺はあわててカバンから鍵を出したが、玄関のドアを開けたとたんに「おかえりー!」と声がかかりびっくりする。
「ねーちゃん、帰ってたの?」
「帰ってちゃ悪いか?」
俺の姉である凛がもう帰宅してた。
「あー。あかねちゃん久しぶり。あれ、ゆきとクンもいるじゃん!」
「いいから! ちょっと学校の課題で話あるから! 邪魔しないでよ!」
俺達は2階の俺の部屋に階段を上って向かった。
「「お邪魔しまーす」」
あかねとユキは凛にそう言うと、俺の後をついてひょこひょこ階段を上ってくる。
部屋に入るとあかねはユキに詰め寄る。
「話ってなに?」
「とりあえず、座ろうよ」
ユキがマイペースに言って、カバンを床に置いて座った。
あかねもユキと向かい合って座る。
俺はクローゼットの方へ行き振り返って2人に言った。
「俺、着替えたいんだけど……」
「後にして!」
あかねが俺に威嚇するように言う。
「今井さんの後ろで着替えればいいじゃん」とユキが言うと「はっ?」とあかねが反応する。
「今井さんが見なきゃいいんだろ? 今井さん、振り向かないでね」
ユキがにっこり笑って言った。
硬直するあかね。
「DD、儂は見ててもいいんだろ」
「いや、できれば見ないでくれる方が助かる」
「なんだそれ? じゃあ……」
ユキがずいっとあかねの隣に移動する。
「これで儂からも良く見えない。さっさと着替えろや」
あかねがさらに硬直してる。
「ほら、今井さんが見ないように我慢してくれてるうちに」
「!! 我慢なんかしてない!!」
あかねがユキに詰め寄った。
「あっ、そう? 見たいのに我慢しているのかと思った」
あかねはふーっとため息をついてから言った。
「……それで確認したいことって何?」
「儂に脅迫状が来たらしいんだよね。で、心当たりをつぶしていこうと思って。
でも、脅迫状に『あのこと』を話したら殺すって書いてあるから、知ってる人に確認すりゃいいかと。
あの時、大場さんと一緒に来てたよね。
だから、知ってるでしょ? 今井さん。
大場さん、脅迫してくるほど、儂のこと恨んでる?」
「えっ、まいのこと? 確かに、恨んでるとは思うけど……。
でも、どうしてまいを振ったの? 好きな人はいないって……」
「ん? 好きな人はいないけれど、だからと言って好きでもない人と付き合う理由にはならん」
「……でも、まいかわいいし、男子にも人気あるし……」
「好きでも嫌いでもない、だから付き合わない、それだけ。
で、あの時の大場さんのキレ方、尋常じゃなかったから、ちょっと気になって。
DD、脅迫状貸してくれる?」
「えっ、なんで弾が持ってるの?」
「犯人が間違えたらしいんだよね。下駄箱」
着替え終わった俺はカバンから封筒を取り出し持って行った。
「わ……、マジ私の後ろで着替えてたとか、ありえないんだけど……」
「なんだよ、ここ俺の部屋だぞ!?」
「大丈夫だよ、今井さん。気を使って着替えてたから。わざと露出したりしてない」
あかねは信じられないような顔でユキを見て、それから俺を見た。
「園山ってこういう感じの人なの?」
「うん。こういう感じ」
ユキが眉毛のあたりを指でかきながら「いやーお褒めに預かり光栄です」と言った。
脅迫状をあかねに渡すと気持ち悪そうに見て言った。
「これをまいが、と思ったの?」
「候補のひとり。儂を恨んでいそうな人数えたら6人ぐらい浮かんで、そのうちのひとりが大場麻衣さんってだけ。
ただ、あのことが告白したってことなら、今井さんは知ってるから、聞いても誰かに話したことにはならんかなと思って」
「6人って……、あんた何してんのよ、いったい……」
「大場って図書委員だよな」と気が付いた俺はユキに聞いた。
「ああ、ちょっと図書委員で、トラブルがあって、助けた」
「そうだよ。園山が助けてくれたから、自分のこと気にしてくれてる、好きなのかもって盛り上がったんだから……。
だから、断られて、すっごい怒ったんだよ。思わせぶりなことするなって!」
「じゃあ、助けない方が良かったのか?」
「そーいうわけじゃないけど……。でも、まいはこんなことしないと思う。
それに、私や他の女子にも、その、園山がひどいって話してたし、今更、口止めなんてしないでしょ?」
「……ひどい? なんでだ? 女子の言うことはよくわからんな……」
ユキがちょっと傷ついたような表情をした。
「ま、しょうがないよ! 気持ちの持って行き場ってものがね。特に女子は傷つきたくないもん」
「男子だって傷つきたくないぞ」
「……弾、こいつ、結構面倒な奴だな」
あかねが俺に顔をしかめながら言った。
「今井は、じゃねえ。今井さんは……」
「今井でもあかねでもいいよ。弾は私のことあかねって呼ぶし」
「そうなの? じゃあ、あかねって呼ぶわ。儂のことは好きに呼んで」
「そこは指定するとこだろ?!」
あかねが突っ込んでがくっとする。
「おお、お笑いのセンスあるね、あかねって」
「……わかった。弾と同じにユキって呼ぶ。それから、6人も恨まれてるって言うの、ちょっとわかる気がする……」
今回はほぼ会話で進んでいますね。
会話を書くの楽しいです!
読んで下さりありがとうございます。
次も頑張ります!