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NNCは別名白鳥都市とも呼ばれている通り、空から見た形が翼を広げ飛び立とうとする白鳥に見えることからその名前が付けられた。
朝もやの漂う薄暗い中、東の海岸からビル群を照らしながら黄金の光がシティに降り注ぐ光景はマジックアワーと呼ばれていて、国内外で有名である。
都市の空中にはいくつもの郵便ドローンが飛びかっている。食料、医薬品、衣服、生活に必要なものはなんでも――いや、なんでもは言い過ぎだ。法律で定められているように重量三キログラム以内かつ表面積の合計が一平方メートル以内かつ非危険物であるなら、郵便用航路を二十四時間ノンストップで運んでくれる。
太陽光はビルの合間からアスファルトの敷き詰められた地上へと降りていく。
道路はすでに通勤する市民が乗った自動車でいっぱいだ。ほとんどは完全電気自動運転車と市営バスだ。だがこの街にはもの好きが多い。金融エリアやアッパーサイドでは最先端の車が走る一方、未だにオイルを必要とする旧世代自動車だって現役で走っている。運が良ければマニュアル車(オートマチックですらない!)だって見られる。
早くも渋滞しつつある車の列を横目に、徒歩の人々は補修を待つ歩道を足早に歩いている。彼らのうち何人かは地下鉄駅の入り口へと向かっていた。
地下鉄の様相は何十年も前から変わらない。つまりはFワードの落書きとスプレーアートのオンパレードだ。鉄道会社の雇った清掃員が何度消したって翌朝には復活しているのだから手に負えない。落書きする輩にとっては奇麗に磨かれた車両はまっさらなカンバスも同然なのだ。そういうことだから、清掃員と不届き者のイタチごっこは終わりっこない。
街でもそれなりに名の通っている公園の最寄り駅は乗降者数も多い。公園の近くには大学をはじめとする学業施設や市営図書館があり、数ブロック歩けばビジネス街だ。公園内にあるコーヒーやドーナツのフードトラックに寄って出勤するのがこの街のスタイルだ。
新しいものと古いもの、お金とチャンス、夢と希望、甘い恋と人生の罠……そういうたくさんの物がごちゃ混ぜに詰め込まれているのがこのNNCだ。
さて、素晴らしく見えるこの街にも犯罪というものはある。犯罪を未然に防ぎ、実際に起きた事件事故を解決し、犯罪者たちに目を光らせているのはもちろん警察官たちだ。ニューニンフシティでは市警察がそういった業務を担っている。
ニューニンフ市警察(New Nymph City Police Department)、略してNNPDと呼ばれる彼らは、法律と社会の平穏の守護者であり、平和を守るヒーローであり、時に市民から鬱陶しがられる憎まれ役でもある。
とにかく彼らは毎日忙しい日々を過ごしている。
公園近くのアパートメントから地下鉄に乗った、出勤途中のキャサリン・Z・マクレイも警察官だ。
彼女はNNCで一番注目されている警察官と言ってもいいかもしれない。
なにせ、今もっともNNCを騒がしている怪盗・キャット事件の担当警官なのだから――。