わかったこと
今回はほぼほぼ説明回になってますが、次回から事態が大きく動き出す…かもしれないです。
俺は必死に、それはもう吐きそうなほど必死に脳内の情報を探った。
どのくらいの時間が経ったのだろうか、やっとある程度知りたいことだけは分かった。
一応埋め込まれたすべての情報を調べて、ちゃんとした知識として組み込むことは不可能ではないが、
しなかったのには理由がある。
俺の脳は今非常に複雑なことになっている。
この世界やゲームについての知識は「ある」が、集中しなければ真に知識を理解することはできないのだ。
知識量が、何度も言っているように膨大なので、まだまだ脳の許容範囲が狭い俺が一気にすべてを理解しようとすれば、廃人になってしまう気がしかしない。これは精神力の修行が必要だな。
さて、本題に戻ろう。俺は待ちすぎてうとうとし始めた弟に、申し訳なさを感じながらも声をかけた。
「おい、わかったぞ。腕輪とさっきの扉のこと」
「兄貴、なんか、まだよくわかんないけどお疲れ様ー。死にそうな顔してるけど大丈夫?」
「……大丈夫だ。今はこの状況をいち早く知ることが先決だからな」
まずは腕輪のことについて。
与えられる腕輪は1人1個らしく、「ジョブ」を一度決めてしまえばもう変更することはできないらしい。
「ジョブ」とは、よくわからんが、ゲームから与えられる特技と姿のことだと俺は認識している。
すなわち俺はずっとちび獣人、そして弟はずっと超絶美少女人間にしかなれないということだ。
本来はどんな「ジョブ」につきたいか選べるらしいが、俺たちは「プレイヤー」じゃないから変な風になったのか。
次に、腕輪よりも気になったこと。あの謎の扉だ。
あれは「ガチャ」というものらしく、鉄や金などの鉱石を放り入れたら武器や宝、「アイテム」というものと交換できる構造だ。扉は本来決まったところにあるらしいが、ゲーム世界の住人である俺達には見えないところにある可能性が高い。しかし、同時に俺たちが見たような、不定期に現れる「ガチャ」もあるので俺たちはそれが使えるというわけだ。
さて、この「ガチャ」の場所が分かった弟だが。弟は「ガチャ」を探知することができる能力があるんじゃないかと思う。
「えーなんかダサいなー。それなら僕、兄貴みたいな全能になる能力が欲しかったー!」
「ただの憶測だ。でもお前のおかげで腕輪とか手に入れることができたんだから完全に無駄ではないぞ」
「そ、そうだよね!」
「腕輪を有効活用できるかはわからんがな」
「もう!そうやってすぐに下げてくるー!なんで?腕輪があったら人間に化けれて、人間たちやあの怖い人に襲われる心配はないでしょ?」
「それはそうだけど……俺はこれがあったとしても大人しく息をひそめるべきだと思う」
人・獣人の姿になったからといって、本性はやはりただの弱っちいゴブリンだ。
最初は人間の真似事で周りから認められるかもしれないが、それもいつまで続くかわからない。自分を偽りながら居場所を探そうだなんて、ただただ虚しいだけ。それならばこのまま隠れて、ゴブリンとして隠れる方を俺は選びたい。
それに俺たちがゲームにとっての「バグ」であることを忘れてはいけない。
「バグ」が目立った活動をしてしまったら……何が起こるか予測が全くできない。最悪世界に消されてしまうかもしれない。考えただけでぞっとするな……。
リスクを最小限に、「プレイヤー」がゲームをクリアするまで待つことにした。
弟も訳を聞いてから納得した。
ゲームさえクリアされれば俺たちの元の世界に戻ってくれると思う。
だから無駄に動かず、すべてが終わるまで待とう。
……そう思っていた時期もありました。
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