弟は妹だった
※ブラコン発作で兄が少し気持ち悪めです。生暖かい目で見てやってください。
弟が扉の向こう側に鉄を放り投げてからしばらく沈黙が続いた。
俺は一体何を言えばいいんだろう。弟は何故か真剣な顔をして扉を見つめてるし……。
「あ」
弟の小さな呟きが耳に届いたと同時に扉が光出した。眩しすぎてほとんど何も見えなかったが、袋が扉の中から勢いよく飛び出したのはなんとか確認できた。
光はすぐに消え失せ、しっかりと目が見える様になった頃には扉までもが消えていた。
「お、おい、あれなんだったんだ!?どうしてお前はなんかあるって知ってたんだ!?は、謎すぎて怖いんだが!!」
「えへへ、なんかそんな気がして。不思議だったね。兄貴、あの袋確認しよ」
「どうしてお前はそんなマイペースにいられるんだ……」
弟は平然としながら、扉から飛び出た謎の袋を確認しに行った。
袋の中に入っていたものは以下の通りだ。
・初心者用の鉄剣
・キレッキレのナイフ
・金色の腕輪2つ
鉄ひとつでこれは高いと見るべきか、安いと見るべきか。今起きた一連がゲーム仕様だったとして、武器が出てくるのは納得ができる。ゲームで戦うには武器が必要だもんな。だがこの腕輪は何だ?
「兄貴、腕輪ちょうど2つあるしつけてみよう!あ、なんか微妙にデザインが違うみたい!僕こっちの波波のがいいなぁ。兄貴、いい?」
「どっちでもいい……」
そうして俺たちは腕輪を装着した。
その次の瞬間から多大なるパニックに陥り、正直あまり記憶はない。「パニックすぎて今までの走馬灯が走った」とだけ言っておこう。
結論、俺は小柄な狐のような獣人になり、弟は人間の10歳ぐらいの、いわゆる「美少女」になった。
そう!弟は、弟でありながら妹になったのだ……!これは兄としての夢が叶ったと言えるではないか!泣きそうなほど嬉しい。踊り出したい衝動を必死に抑えながら震えていると、弟は何を勘違いしたのか、
「兄貴、小さくなっても、可愛、かっこいいよ!自信持って!」
と謎に励ましてくれた。かっこいいと言われた俺はさらに体が震えてきた。やめてくれ、にいちゃんの嬉しさ許容量はもう限界だ。
閑話休題
割と適当な性格をしている弟は、自分が人間の少女になったことに対して気にしてない様だ。
闇のように深い、さらっとした長い黒髪。きれいな青いビー玉のような瞳。まだ幼さを残す顔立ち。
そんな弟の姿は非常に目の保養になった。これがゴブリンではなく人間の姿だということだけが残念だ。
俺も俺で体が小柄な獣人になり、最初こそはショックだったが、考えてみればこっちの方が小回りも効くし、偵察とかには非常に役に立つ。別に強がっていない。別にあのゴブリンのムキムキな体形がなくなって悲しんでたりしてない。してないったらしてない。
「兄貴!この腕輪、外したら元の姿に戻れるみたいだよ!」
「はーーーーー!よかった!!!!!」
「兄貴うるさ……」
「ひどい言い草だな!俺が必死に鍛えた筋肉がなきゃあ鉄とかはもう採れないんだぞ!それはそうと、もうひとつ気になってたんだ。この腕輪を交換することができるか試してみようぜ」
願わくば弟~獣人ver.~とか見てみたい。
「あれ?兄貴の腕輪を触ろうとしたら透けちゃうな。どうなってんだこれ?」
弟~獣人ver.~を拝む夢は秒で終わった。
「あ、そうだ。まだお前に言ってなかったことがあったんだ。この腕輪はもちろん、ここ数日起きたことについて俺は少しだけだがわかるかもしれないー」
俺は弟に、ここがゲームの世界になったこと、俺の脳に莫大な量のゲーム知識が埋め込まれたことを説明した。天使レベルに素直で心優しい弟は信じてくれた。
さて、この俺の頭脳は腕輪についての答えはわかるだろうか。
知識だけはある。だがその多さはまるで俺の脳に図書館ができたかのようで、1つの情報を見つけるためには時間と相当の精神力を必要とする。
俺はゆっくり深呼吸をして、全神経を頭脳に集中させた。
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