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「次に行くか。こっち」
「これなー長かった読むの大変だったー難しかったし」
「長かったけどすごかったな。すごい長いスパンの話すぎて気が遠くなったけどな」
「まず図書館になかったよ、話題作だけあって貸出中。学校の図書室になかったら買うところだったわ」
「俺買ったよ。本には糸目つけてはいけないっていう家の方針だからさ」
「さすがブルジョワー」
あたしと楓で瀬川を冷やかす。そうなんだよね、瀬川のおうちはとっても教育熱心。
「苦手なテーマ過ぎて、かなり飛ばし読みしたからあまりあれこれ言えるほど読み込めてないんだよね」
「まじで?もったいない。といってもよくわからんところ多かったのは確かだけどな。面白いけど確かに難しい専門用語多いし」
「あまりそのあたりは気にせずさらさら読んだけど、描いてる内容は重いんだよな。冒頭から重くてよくこれ出せたなって思った」
「いやほんと。それも驚いたし、重さもね。正直最後まで読んで、爽快感というより吐きそうだった」
「吐きそうって!デリケート過ぎじゃね」
「デリケートなの!わかる?いろいろ想像しちゃうとまじでしんどかった。とはいえ強烈に面白かったけどね」
「うん。だけど、ちょっと思ったのが、彼らの人間関係ってどれも変だったな」
「変?」
「変というか不健全というか。純粋にしてもいびつというか」
「そうか?そこは全然感じなかった」
「人間関係っていうか男女の愛情みたいなのな。一方的だったり、有無を言わさずだったり、これだけ濃厚な展開なのに、いやだからこそかな、いびつな関係ばかりだなと思った。逆にそういうのじゃない異性愛じゃない関係のほうは、認め合ったり尊重しあったり思いやりあったり、いろいろ人間味あって関係性がちゃんと見えてよかったのにな」
「確かにそうかも。それって作者の恋愛観なんじゃないのかな」
「孤独ってこと?」
「そうかも。そういうのにじみ出ちゃうとか。全然違うのかもしれないけど」
しばらく作品の話をあーでもないこーでもないって話して、急に楓がいい出した。
「星、見に行くか?」
「えっ星?」
「この時間ならちょうどいい今から暗くなるし。今だと土星が見やすい位置にいるしな」
「えーそうなんだ。詳しいんだ」
「詳しいってことない。地学もとってないしむしろ苦手。ただ見るのは好きだし、そんないいやつじゃないけど望遠鏡あるから担いで見にいこうぜ」
「土星なんて見たことないや。考えたこともない」
「惑星はあかるいから目立つよ。すぐわかる。久しぶりだな楓と星見るの」
瀬川、楓と見たことあるのか。