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土曜日。自転車で30分程度の大学病院に向かう。場所はなんとなく知ってたけど入るのは初めて。いかめしい門はあるし自転車置き場はどこかわからないし、ロビーがまずどこか問題よりも建物多すぎて何がなんだかわからない。わりと方向音痴で、地図起動するけどなんかよくわからなくてまごまごしていたら後ろから瀬川に声をかけられた。

「迷ってるかなと思ってた。一緒に行くべきだったか?」

図星だけどむかつく。返事しないでおくと瀬川は建物にずんずんはいっていく。よく来ているのか慣れた感じで。

リノリウムの床にはいろんな色のラインがはいっていて、わけがわからないけど、瀬川はそれを見るわけでもなく案内板を見るわけでもない。後ろをついてくるあたしを意識しつつちょっと早足で廊下をすすみエレベーターに乗り込みボタンを押し、降りてまた廊下をすすみ、そして一室の前で立ち止まった。院内学級と書いてある部屋。

後ろから声をかけられる。

「瀬川、久しぶり」

振り向くと、同世代の男子。これが楓なのだろう。背は瀬川より高い、あたしより多分10センチ以上は上、細身。

「楓、元気そうじゃん。これ、前に話した晶。部活やめて暇だっていうから誘ったんだ」

内心ちょっとムッとする。そんなことを瀬川に言った記憶はないのに勝手なこと言うなよって。でもそれを今言うのはなんだかはばかられて、気持ち大人になって振る舞ってみる。

「晶です。はじめまして。今日はよろしく」

楓はあまり感じよくなかった。ああ、とかうんとか言って人のことをろくに見もせず、みどり学級と書かれた部屋の扉を開けて言った。

「先生が使っていいって許可くれたんだ。俺の病室でやるのもなんだからね。よかったよ借りられて」

院内学級は、いかにも学校みたいな小さい机とか椅子もあるけど、丸テーブルもあって楓がそこに適当な椅子を3つほど寄せ集めていた。そして、あたしのほうをやっとまともに見た。

「どうぞ?」


勧められるままにパイプ椅子に座る。布バッグを肩から外して膝に乗せて、なんとなく居心地悪い気分を味わう。さっさと進めてよと瀬川のほうを見ると、瀬川も座って、そしてリュックの中からもそもそと本を取り出している。今回の指定の2つの本。一冊は中くらいのボリューム。もう一つは巻またがるそこそこ長いやつ。

「どっちから始める?」

そう言って瀬川はあたしと楓を交互に見て、答えを求める。誰も何も言わないなら、片方を薦めるつもりだったけど、楓が口を開いた。

「短いほうから行くか」


そうだね、あたしもそれがいいと思う。


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