② ギヴ・アンド・テイク
朝晩、寒くなってきましたね。皆さんお元気ですか?
今回も短めです。宜しくお願いします。
『目には目を。』という言葉には、独特な信頼性がある。
仕返しの仕方としては安直かつ最も直接的で、良心すら感じてしまう。
なぜこんな話から始まるのかというと、理由は単純。私達の仲間をブチのめした奴らに対しての、文字通りの『ブチのめし返し』が控えているからだ。
今回集まったメンバーは、ざっと55人。
社会から見放されたならず者集団という表現で間違いない私達ではあるが、見るからに札付きの悪党みたいな奴らから、折り目正しくスーツを着て日がな一日中コンピュータを弄る生活が似合いそうな優しい人相の奴らまで、様々な出自と過去を背負ったメンバーで出来ている。
Poison De Pacific。
止めどない開発に汚された海岸線から這い出た憤怒の汚泥、または社会から排斥された者達の抗い続ける限界線。これが今の、私の居場所だ。
私物のウインドブレーカーに、くすんだカーゴパンツ、溜まり場からくすねたぺしゃんこの防弾ベストを組み合わせたオンボロの戦闘服で、私は数多のエンジン音で満ちた喧噪の中へと紛れ込んだ。
「レイラ!乗っていくでしょ?」
「おう。」
ロックバンドの野外フェスで聞くような大音量の中であっても、アレックス・芦川の声は良く通る。彼女の話を聞き返すことは滅多にない。
「今日は正念場だよ。上手くいけば、コレはただの仕返しじゃ終わらない。奴らをこき使ってやがる親玉まであぶり出せるかも知れないしね。」
「えーと…『牛蛙』、だったっけか?」
「そうさ。このあたりでコソコソ裏取引してるような奴らの記録は根こそぎアイツに監視されていた。クスリの取引、個人間の殺しの契約、売春に至るまで…。アンタも見ただろ?」
確かに見た。『牛蛙』派閥の息がかかった集団の関与が疑われる、電子麻薬の個人的な売買といったあらゆる違法行為に使われた通信は、全てにサイン代わりとでも言うように同一のクラック跡が確認されたのである。
「随分と分かりやすい痕跡だった…アレじゃ、ただ取り締まることを見据えて内情を詳しくディグってるだけ、ってんじゃ言い逃れできないだろ。」
「ああ。アタシらみたいなシロウトでもここまで詳しく相関図が洗い出せたってのに。しかし、どういうわけかアイツが表で糾弾される気配は一向にありゃしない。」
「裏で助けられてる奴らが多すぎるんだ…。議会のやつら、とことん腐ってやがる。」
「そうなんだろうね。でも、だからこそさ……アイツをいち早くビビらせて、この形勢をひっくり返した奴らが次の『神奈川特区』の…天下を取る。掃き溜めみたいにウロついてた米兵も最近じゃ取るに足らないやつらばっかさ。」
「天下か。いいね、テンション上がってきた!」
「どうせ定点に留まってるのは苦手なくせに。よく言うよお前は。」
「邪魔されないってのはいいことさ、アレックス。私にもじゅうぶん需要のある話だよ?」
「フフ、そうかい。」
前方で並列陣形を取っていた男達のバイクがひときわ大きな唸り声を上げ、次第に暗闇の中で点在していた光の波が前方へ押し流され始める。
生まれたときから、この街はあらゆる障壁によって隔絶されていた。祈りを乗せた灯籠のように流れゆくこのひとつひとつは、どこへも行けなくなった者達がどこへでも進み続けられるよう研いだ、不条理を薙ぐ鋼鉄の翼だ。
昏くとも、確かにここには道が在る事を示してくれる。
「さァ、まずはここからさ。
取るに足らないチンピラ相手だが…まずはひときわ蠱惑的な血の匂いでも、届けてやるとしようかしらね!!」
アレックスのバイクが、絡まった泥を跳ね飛ばして動き出す。
さぁ、不条理には不条理を。
単純で、純然たる暴力の時間だ。
いかがでしたでしょうか。
まだなんとも、って感じですよね。
明日もこのくらいの尺で更新です。込み入った話はまたこんどです、おたのしみに。




