婚約破棄は甘い毒
それは、レスト王国王城のフェニックスの間で行われていた王立学園の卒業記念舞踏会で始まった。
「今ここに、俺はチベ公爵家令嬢サラサとの婚約を破棄し
ダミー男爵家令嬢ニーセと婚約を行う。」
そう、レスト王国第一王子マイク14世は宣言を行った。
王子はピンク色の髪をした男爵令嬢ニーセを抱き寄せながら続けて言った
「それと合わせ、次期王妃であるニーセに対しての非道な行いを
償ってもらうため、元公爵家令嬢サラサに対し毒杯を下賜するものとする」
「マイク殿下、婚約破棄は承りましたが、ニーセに対する非道な行いとは一体?
合わせて、なぜ私が元公爵家令嬢で、毒杯を頂かなければならないのですか?」
公爵家令嬢サラサはそう発言した
「まず元公爵家令嬢というのは、俺が次期公爵として、今外交に出て国内におられない
父に代わり代行権限でお前を公爵家から追放したからだ」
王子の横にいたチベ公爵家長男でありサラサの弟であるラーサが言った。
「ラーサあなたにその権限が、あると思うの?そしてお父様が帰ってきたらどうなるかわかっているの?」
「なにをいう、元姉よ、王子に婚約破棄される愚か者を追放したんだ、
父も喜ぶに違いない。そして今は俺が公爵家当主代行、何の問題もない」
「ラーサわかったわ、本当にそれでいいなら構いません。ではマイク殿下
なぜ私が毒杯を頂かなければならないのですか?」
「サラサ、お前はそんなこともわからないのか?」
と王子が言った。
「はい、マイク殿下、毒杯をいただくようなことの心当たりはありませんわ。」
「折角お前の名誉を守ってやろうと思っていたのに仕方がない、それでは教えてやる」
「はい、マイク殿下お教えください。」
「まずお前は、男爵令嬢ということで、ニーセにひどい中傷を行ったであろう」
きょとんとした顔で、サラサは言った。
「はい、マイク殿下、そんな事実はありません。」
マイクは鬼のような形相で言い放った。
「何を言う!!男爵家如きが俺に近づくなと何度も何度も、それもお前だけでなくお前の側仕えにまで
叱責されたと聞いたし俺もそれを目撃したぞ、これは次期王配に対しての不敬罪である!!」
呆れた顔でサラサは答えた
「はい殿下、確かに似たようなことを言った覚えはありますが、それが何か?
宮廷典範に書かれている王家のものに直答および、側仕えできるのは子爵家以上という
事実を言ったまでですが?」
「俺が認めたんだ何が問題だ!!次期王妃なのだから問題ないだろう!!」
サラサは頭を抑えながら言った。
「王子、失礼ですがお体の方は大丈夫ですか?」
「失礼な!!お前は一体何を言っている!!」
まるでFXで全財産をとかして蕩けたような顔でサラサは言った。
「王子、わかりました。不敬罪が仮に適応されるとしても言葉だけのことで毒杯は
司法制度を無視しすぎているのではないかと…」
王子は、横にいた男に目配せを行った。するとその男、司法長官の息子が言った。
「元公爵家令嬢よ、お前は、複数の嫌がらせや、そして彼女への直接の危害行為
そして言葉にするのも痴がましい行為を行なった罪がある。
そのため、王と共に外遊に出ている我が父になり代わり、本来であればもっと重い刑罰を受けるところを
お前の元弟であるラーサの嘆願と、公爵家に傷をつけないため毒杯を賜れるようにしたんだ。
ありがたく思え!!」
「本当にみなさん正気ですか?」
長官の息子が言った
「何を失礼なことを言っているんだこの売女め!!」
「売女とはあまりに失礼ではありませんか?私がなにをしたと?証拠はあるのですか?」
殿下が目配せをすると殿下の後ろに控えていた男たちが前に出てひとりづつが話し始めた。
「俺は、王国騎士団団長の息子キーン、俺はここに告発する。この売女は、ニーセの教科書を盗み
このようにインクで汚した上で破りすてゴミ箱にすてたのだ!!」
「それを誰かが見たのですか?」
「この教科書は、俺が見つけた、状況的にお前しかない。これ以上の証拠があるか!!」
「本当にそれでいいのですわね、それで他には?」
「俺は、王国会計局局長の息子フリー、俺はここに告発する。この売女は、ニーセの祖父の形見である
このペンダントを奪いゴミ箱にすてたのだ!!」
サラサは頭を抱えながら聞いた。
「それを誰かが見たのですか?」
「俺がゴミ箱から見つけた、状況的にお前しかない。これ以上の証拠があるか!!」
「はぁ、本当にそれでいいのですわね、それで他には?」
そして合計10人ほどの王国の次代を次ぐであろう重鎮の子息が同じような発言を繰り返した。
「王子、並びに今発言された方々、本当にいいのですね、発言を撤回するならこれが最後の機会ですわよ」
「「なにをいうこの売女め!!」」
「最後に聞くのですけど、なんで私が売女なのですか?」
王子は言った。
「それは俺が教えてやろう!!お前は何度も姿を眩ましていた。それは男がいるのであろう。」
「ここにきて思い込みですか・・・わかりました。それでは確定ということで、陛下、全員失格です。」
その場にいる人間は彼女が何を言っているのかわからず困惑した。
「「???」」
「お前は一体何を?」
王子は言った。
その次の瞬間、ニーセがガラスのように割れて消えていき
そして王城地下の魔法陣の上に皆は転送された。
「お前は魔女、いや魔王だったのだな!!ものどもこいつを滅ぼすのだ、褒賞はおもいのま・・・」
王子の発言しようとしたが次の瞬間
「この愚か者!!」
舞踏会の壁があったところに王を含む王国の重鎮の姿があった。
「え?父上?」
「もうお前など子ではないわ!!、サラサよ教えてやれ」
「はい、陛下、それでは皆様方、対ハニートラップ対策研修用VRMMOへのご協力ありがとうございます。
ただいまを持ちまして記憶の封印を解きます。」
「え?ニーセはハニトラのトラップ用に作られた仮想人格?」
王子は呆然とした顔で言った。
「はい、その通りです。見事に次代の国を継ぐべき方々が全てひっかかりましたわよね」
「いや、それは記憶がなかったのだし、仮想現実なのだから今のは帳消し・・・」
「いえ、それでも平気であると入る前に堂々とおっしゃっていらしたかと、陛下これで約束通り
婚約は破棄させていただきますわ。」
「え?」
「もともと望んでない婚約ですが、国内情勢を鑑み我慢していたのですが、こんな簡単なトラップにかかる
王子など不要です。ですので、このトラップに引っかかるならと、陛下と賭けをしていましたの」
「いや・・・それはなんとか・・・」
「今回トラップに引っかかった方は、次期当主候補から排除の上、再教育もしくは追放が待っていますので
みなさまごきげんよう。」
「待ってくれー」
王子は泣きながらサラサに縋り付くが護衛の騎士により引き離される。
「あ、陛下約束は守っていただきますわよ」
サラサは部屋を出る前に振り返って言った。
「ああ、わかった。こうなるともう仕方がない」
「それではお願いしますわね。」
サラサは部屋から出ていった。
「父上、あなたの後継は俺しかいないんだから見捨てないですよね」
「ああ、お前には言ってなかったな、お前には8歳になる弟がいる。」
「え?」
「後継者争いに巻き込みたくないが故に、公爵家に預けておった。」
「え?」
「サラサ嬢がそれはそれは可愛がっておってな。この子と結婚すると前からな・・・」
「え?」
「このゲーム中も何度も抜け出してあっていたのじゃ」
「いやそれは不貞行為では?」
「弟とのスキンシップが不貞行為か?それも8歳の男の子となにをやるんじゃ?」
「・・・」
そしてハニトラに引っかかるようなバカは粛清されましたとさ
めでたしめでたし。