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秋葉原ヲタク白書23 AKIBA ROUND MIDNIGHT

作者: ヘンリィ

主人公は、SF作家を夢見るサラリーマン。

相棒は、老舗メイドバーの美しきメイド長。


このコンビが、秋葉原で起こる事件を次々と解決するという、オヤジの妄想満載な「オヤジのオヤジによるオヤジのためのラノベ」シリーズ第23作です。


今回は、老舗メイドバーのヘルプがオープン準備中に謎の失踪!どうやら、アーティスト気取りの元カレに誘拐されたらしく…


お楽しみいただければ幸せです。

第1章 消えたつぼみん


「昼は聖槍(せいそう)naive(ナイーブ)のコラボカフェ、さっきはコンビニにいたね。そして今はメイドバーの早番」

「口説いてるの?」

「ココが…君の大動脈。刺せば、あっという間に死ねる。君が最後に見るモノは俺の瞳だ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


つぼみんが消える。


あ、つぼみんはミユリさん(僕の推し!)がメイド長を務める御屋敷のヘルプの子だ。

いつものように、恐らくオープン30分前に出勤し準備を始めたようだが失踪する。


なかなかのトランジスタグラマーで、多分メイド服なんだけど、誰か知らないか?


「いなくなったみたい、だけじゃ警察は動けないんだょ。せいぜい制服組が事情を聞く程度だな」

「ミユリさん、本気なの?だったら、彼女のスマホとか追ってみるけど?」

「こりゃ虎吉さんの出番だょ」


解説しよう。


ミユリさんが呼んだのは僕を含めて3人。

最初の台詞は新橋から万世警察に転勤になった新橋鮫だが、今回は頼りにならなそう。


次の台詞は女サイバー屋のスピアで、そのぉ、まぁ、実は僕と、キスとか、した仲←

最後の台詞が僕でミユリさんからの頼まれゴトなんて滅多にナイから一肌脱ぐ覚悟だ。


モチロン、他力本願だけどね←


僕が名を挙げた虎吉さんは、界隈を仕切る組織の若頭だが、つぼみんに頭が上がらない。

と逝うのも彼女は縁あってメイドをやってるが、実は、その筋の会長さんの孫娘なんだ。


虎吉さんのトコロの若い衆に街を探してもらうのがいいんじゃないかな。


早速、スマホを抜いて虎吉さんに「つぼみんが…」とか連絡しつつ、早くも帰ろうとしてる鮫の旦那の襟首を掴んで立ち止まらせる。


「あ、鮫の旦那!お願いがあるんです」

「先ず、届を出してくれょ」

「お手間はとらせませんのでー」


カウンターには、恐らくつぼみんと知らない誰かの飲みかけのグラスが2つ置いたまま。


ミユリさんから、シャープペンシルの芯を1本もらい細かく砕いて粉末にする。

その粉末を恐らく相手側と思しきグラスに息で吹きかけて静かに払い落とすと…


おぉ!誰かの指紋がクッキリ浮かび上がる!

海外ドラマで冒険野郎が使った手なんだぜw


鮫の旦那のスマホを借りて浮き出た指紋を撮影してもらい万世警察で照合をお願いする。

そうこうする内に虎吉さんがやって来て事情を聞くや泡を食って若い衆に電話しまくる。


「路地裏の裏の裏まで探すんだ!あと、タクシー会社、コンビニのATM、ホテル、秋葉原駅は地上も地下も隈なく探せ!末広町駅も忘れるな!」

「つぼみんのスマホ、信号が消える直前に基地局を経由してたわ。案外近くなの。多分プライム24だと思う」

「ごめーん、ミユリ。とりあえず今宵はナースデイってコトでいいかしら?」


仕掛けが一斉に同時平行で動き出すw


虎吉さん(紺ブレにチノパンのみゆき族スタイルw)が次々スマホする中、凄腕サイバー屋のスピアがつぼみんの行方を特定する。


最後はアキバの有名メイドでミユリさんの親友リンカさんがナース服(彼女の御屋敷はナースバーなんだw)のままで店に入って来る。


つぼみん探しで店を空けるミユリさんに代わりメイド長をやってくれる…あ、ナース長かw


ところで、スピアが特定した先はラブホ化が著しいシティホテルだが、その名を聞いて僕はもう1人、強力な助っ人を思いつく。


ランボー(者)の出番だ。


第2章 謎の月面神殿


アキバ 1005 pm プライム24ホテル


巷で「アキバのランボー」と呼ばれるランボー(者)は援(助)交(際)シンジケートのマダム。

今やサロン経営にも乗り出すヤリ手だが、本業(援交w)でプライム24ホテルはよく使う←


「フロントは2Fなんだけど、1Fの身障者用のEV(エレベーター)を使えば、フロントを通さず直接客室へ逝ける。もともとデリ(ヘル)に優しい構造だから」

「先ずホテルの防犯カメラを見たい。つぼみんのスマホの信号がココでロストしてる。彼女がホテルに入った確認が必要だ。上手く逝けば彼女を誘拐した人間も一緒に写ってるカモしれない」.

「任せて。ホテルのマネージャーには色々貸しがある」


そして、僕には彼女のシンジケート乗っ取りを図った裏マダムを退治した貸しがあるw

まぁ僕の貸しがなくたって、ミユリさんの頼みならランボー(者)は何でもやるだろう。


果たして、長身のクールビューティは革ジャンを颯爽と翻して…ん?1Fのスタバに入る?お茶かな?え?店の奥に何かあるの?


ホテルの事務室だw


窓のない狭いオフィスの応接セットで痩せたマネージャー氏がカップ麺をすすってる。

ランボー(者)が隣に座ると麺をすするのがピタと止み話が進み彼女が膝に手を置くと…


マネージャー氏は真っ赤だ!

ホントわかりやすい人だな笑


氏は、カップ麺片手に狭いオフィスを対角線で横切って角のデスクへ向かう。

そこで縦横3画面ずつ並んだPC画面でホテル内のアチコチをモニターしてる。


僕達も手招きで呼んでくれ、早速ロビーの画像をメインに数時間前から早送り再生。

全員で目を凝らすまでもなく、あっさりメイド服のつぼみんが19:04にcut-inする。


よかった生きてる←


男連れと逝うか男に追い込まれるようにしてホテルに入って来る。

まぁホテルの性格上、そういうカップルは決して少なくはないが笑


氏が画面を次々スイッチし、メイド連れの男が最上階のスイートへ消えるのを確認する。

防犯カメラの位置を知り抜いてるかの如く男の顔は写らないが、最後の最後で振り向く。


ズームをかけたが、同時に画像の粒子が荒くなり人の顔だか砂嵐だかわからなくなるw

とりあえず、僕は虎吉さん、ミユリさんは…スピア?何で彼女を呼ぶの?まぁいいか。


何はともあれ超特急で急がなきゃ!

今頃、スイートの中でつぼみんは…


そこへ鮫の旦那から、グラスの指紋は警察のデータベースに該当ナシとの連絡が入る。

ガッカリだったが、コレも何かの御縁だから旦那にもホテルに来てもらうコトにする。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


何と1番最初に来たのは鮫の旦那だ。


ダメ元でスイートに行ってもらったが、中の男は手帳を見せても強気を崩さず、逆に令状を見せろとスゴまれスゴスゴ帰って来るw


少し情けない←


お次はスピアで、ミユリさんと砂嵐みたいなズーム画像を前に何やら頭をヒネりだす。

最後は真っ先に来ると思った虎吉さんで、完全に目付きがイっちゃってる男が一緒だ。


何をするつもりだろう?


「ウチの鉄砲玉です。ピザ屋の出前のフリして部屋に入れます。おい、チャカは持ったか?」

「うすっ」

「死んで来い」


止める間もなく、男はホテルの貸出コスプレ(種類豊富だw)の中からピザ屋っぽいストライプシャツに着替えスイートへ突入する。


ドアが開き鉄砲玉がスイートの中に消える。

やった!中に入れた!が、10分過ぎ、20分…


何も起こらない。


「くそ。しくじったか」

「しかし、銃声とかもしませんね」

「もともとオモチャなんで」


あのなーw


僕は狭いオフィスでガックリ肩を落とす。

一方で、別の一角で黄色い歓声があがる。


「出来た!うーん中々いい出来だわ」

「さすがね、スピア」

「セクボ(スピアと付き合いのあるストリートギャング)の連中に探させるわ」


見ると、スイートに入る瞬間に振り向いた男の画像が…スゴいクリアに仕上がってるw

ヤタラと目元パッチリな気もするが、細面な優男の人相がクッキリ浮き上がっている。


さっきまで砂嵐画像だったのに!

スピア、何したんだょ?スゲェw


「エッヘッヘ。闇アプリのイイのを仕入れたの。元がプリクラの補正アプリなんで男でもヤタラ美人顔に仕上がるのが難点だけど」

「確かにwでも、この画像なら人探しにも使えそう。警察にも撒こうよ。鮫の旦那!犯人の画像が上がりましたょ!」

「えっ?どれどれ…うーん素晴らしい出来だな。しかし、さっきの男とは何か違うな」


鮫の旦那は首をヒネってるが、彼はドアチェーン越しに見ただけなので見間違えだろう。


そこへ…


「シッ!静かに」

「え?どうしたの、ランボー(者)。何か仕掛けたの?」

「ウチのエースを呼びました」


ランボー(者)が指差す画面に、キャバ嬢かと見紛う盛り髪の美少女がカメラを見上げ、正面のドアを指差し小首を傾げている。


し、しかし!カワイイッ!天使だっ!


こんな子がデリで来るのか!まさに目を疑うばかりの美少女だっ!

この子が、あんなコトやこんなコトもスルのか?しかも、全裸で←


横のランボー(者)が小声で指示を出す。


「そう、そのドア。開けさせて。後はやるから。GO」


スイート前の盛り髪美少女にランボー(者)がインカムで突入を指示する。

美少女は、瞬時に営業微笑を浮かべて全く躊躇いなくドアホンを鳴らす。


難なくドアは開き、ドアチェーン越しの会話が始まり…え?ホテルからのプレゼントで3Pしに来た?ホ、ホントかょ?いや、ウソか笑


次の瞬間!


美少女の鼻先をかすめるようにしてボルトカッターが開いたドアの隙間に差し込まれる!

ドアチェーンが切断されるや両脇に控える虎吉さんのトコロの若い衆が室内に突入する!


ところが!


そのまた次の瞬間、突入した若い衆が次々とドアの外へ叩き出される!

蹴り出された者、殴り飛ばされた者、腹を押さえヨロケながら出る者…


どうやら、室内は大乱闘のようだ。

しかも相手は予想外の強敵らしい。


あ、ランボー(者)が飛び込んで逝く!

今まで横にいたのに、いつの間にw


暫くして満身創痍の若い衆がヨロヨロ出て来てカメラにVサインを出し…倒れるw

フト映画の1シーンを想い出す。我、203高地にアリ、203高地を占領せり!


うーん確かに目の周りに青痣をつくり横たわる彼の顔は、誇らしげに輝いて見える。

旅順陥落。時にアキバ 1149 pm 。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


ソレは異様な光景だ。


外で物憂げに煙草をふかす美少女はともかく、中は血で血を洗う凄惨な白兵戦の直後で未だ蠢く男をランボー(者)が馬乗りになって押さえている。


突入部隊はほぼ全滅で、うつ伏せや仰向けになって屍累々、室内は苦悶と呪詛に満ちる。

そして、その問題の男なんだが…スピアの優男画像とは似ても似つかないマッチョ系だw


しかも金髪の白人だょ?

コイツが全員を相手に?


さらなる驚愕は、その次の()に待っている。

ドアを開けるとソコは…荘厳な宮殿の寝室。


ラブホのスイートなんてこんなモノかもしれないが、フェイクのギリシア石柱が並ぶ階段の上にアラビアンな屋根付きのダブルベッドだw


もちろん、つぼみん&優男は影も形もない。


第3章 コズミックアートの世界


アキバ 0017 am スイートルーム


どうやら、金髪男は、つぼみん&優男が逃げる時間を稼ぐための囮だったようだ。

恐らく、鮫の旦那がモタモタしてる内に2人は裏の非常階段から逃げたのだろう。


金髪男は、恐らくフランス語だと思うんだけど、ランボー(者)に押さえ込まれてなお、意気軒昂でギャアギャアと文句を逝っている。


しかし、正しいのは実は彼の方だ←


何しろ、正規の料金を払い彼が借りた部屋へ暴力で押し逝ったのは僕達の方なのだw

…と(フランス語で)恐らく主張してるであろう彼が色々気づく前に次の手を打ちたい。


残念ながら、唯一の手がかりだったつぼみんのスマホの信号はココでロストする。

実は途方に暮れるシーンなんだが、虎吉さん&鮫の旦那がコンビで突破口を開く。


先ず鮫の旦那から。


「何っ?奴は外国人(エイリアン)だったのか?ホントか?宇宙飛行…」

「ええっ?宇宙から来たエイリアンだったの、この金髪のオッサン」

「そうなんだ。当局に登録(レジストレーション)されてるらしい」


次の瞬間、ランボー(者)に組み伏せられてた金髪男の胸を食い破ってエイリアンが出現し…

ってソッチのSF映画の宇宙生物エイリアンではなくて外国人登録証明証(エイリアンレジストレーションカード)のエイリアンだ←


先の指紋照合でやり方を覚えた?鮫の旦那が金髪男の顔写真を照合にかけたトコロ、在日外国人データベースにヒットがある。


しかも、実名もわかったけど後で色々と差し障りが出そうだから仮にパリ男と呼ぶけれど、このパリ男は、何と宇宙飛行士らしい。


一方で虎吉さんは…


スピアが補正した誘拐犯?の画像を見て目を丸くしている。

この画像の男は覚えがありやす、確かお嬢の元カレですぜ。


え?つぼみんの元カレ?


「お嬢が未だ@ポエム(大手メイドカフェ)でメイドをやってた頃、言い寄って来やがった自称アーティストの厄介な野郎です」

「アーティスト?まさか音楽系ですか?」

「いいえ。テリィさんみたいな音楽家なら未だ許せるんですが。奴は香りのアートとか言ってやした。確かキャミソール・何チャラとか言うエッチな名前の胡散臭い野郎で」


香炉(キャソレット)・ジャンだw


大小イベントやフェスなどで香りメインの空間演出を得意とする自称アーティストだ。

ほとんどキャンドル・ジュンの二番煎じって気もスルが全く訴えられズのさばってるw


彼曰く、ポジティブなメッセージがあればソレを増幅し香りの力で多くの人に届けるのがパフォーマンスアーティストとしての人類的な使命←


恐らくギャラもジュンにジャンじる…いや、準じるのだろう。

しかし、フランス人宇宙飛行士とツルみ一体何やってンだょ?


真夜中のアキバでさ。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


アキバ 0137 am / パリ 1937 pm


答は時差7時間の海の向こうから、しかも激怒しながら飛んで来る。


スピアがホテルのオフィスまで来てPCを開いて見せてくれる。

画面にはベレー帽の気取ったオッサンで、またもや金髪の白人。


「え?誰だょ?このエスプリ系のオッサン。もしかしてリカちゃんのパパン?えっと、確かピエールだったっけ?」

「違うわょ。コチラはソカピさん。ヨーロッパ宇宙機関(ESA)の方だって。何かテリィたんにお話があるんだって」

「その『たん』はヤメてくれ」


とりあえず、スピアに枝葉末節な抗議をしてから(おもむろ)に画面の中の白人に目を向ける。

しかし、画面の中の白人は先手を取り、僕の眼底を貫く針のような言葉をぶつけてくる。


「取り返しのつかないコトをしてくれたな、ジャパニーズオタク」

「ええっ?何のコト?」

「お陰で実験は失敗だ。全てのデータを取り直さねばならない」


ソカピさんは、ヨーロッパ宇宙機関ESAが企画するartist in spaceの統括責任者とのコト。

artist in spaceとは芸術家に宇宙環境の中でアートを追求してもらうプロジェクトらしい。


アーティストは、作品に反映する条件で科学者から科学的・技術的レクチャーを受ける。

科学者は、アーティストの自由な感性を刺激しながら、自らも刺激を受け新発想を得る。


両者が、相互にプラスの影響を与え合うデータの採取が今回の「アキバ実験」の狙いだ。

ソレを君達が台無しにした!と海の向こうで激怒するソカピさんって実に困った野郎だ。


「キャソレット・ジャンはアジアを代表する感性の持主だ。コレは電脳都市アキハバラにジャンのイメージする月面宮殿を再現し彼の感性を刺激するためのプロジェクトだったのだ」

「ハイ?そもそも何チャラ・ジャンの月面宮殿ってラブホのスイートのパクリじゃね?しかも、元カノとヨリを戻すのに使った御宿泊料金をお宅らに払わせるってプロジェクトだったんじゃナイの?」

「え?何だ、そのヨリって?ジャパニーズ・ワビ&サビがサイバー化した新感覚の1つなのか?」


(見事にピントのズレてる)彼は語る。


誰もが宇宙に魅了される、不思議に思い恐怖を感じ、あらゆるコトを感じる、その感情の再現こそがアートなんだ、だから、君は宇宙にいるコトを感じろ、そうすれば何かを表現せずにいられなくなる、君の作品を存在させずにはいられなくなる、伝えたい気持ちが溢れ出る、発想を最も純粋に表現した心の形、ソレこそがアートだ…


何を逝ってるのかワカラナイ笑


あ、この会話だけど、スピアの恐らく闇アプリだと思うけど、それぞれの発言をAIが翻訳し文字化して画面に弾幕を張る仕組みだ。


とりあえず、この闇アプリは「ヨリを戻す」が上手く訳せないようだw


ソコへ、ただでさえ狭いオフィスにドヤドヤ新たな一団が入って来て話はさらにややこしく…

セクボの追跡チームの連中が昭和通りの先でスピアの画像どおりの2人組を見つけたらしい。


おぉ!つぼみんだょ☆

良かった!生きてる♬


「大丈夫か、つぼみん!あ、あれ?目が逝っちゃってるけど大丈夫か?しっかりしろ、つぼみん!」

「…私は月の女王として生まれ変わるの。昨日までの人生を捨てるの」

「げ!つぼみん、何を言い出すんだ?あ、酔っ払ってるな?誰がアルコールを飲ませたんだ?彼女は未成年だぞ」


追跡チームに取り押さえられながらも噴き出すのはキャソレット・ジャン。

人民服を彷彿させる丸首っぽいスーツをパリッと着こなしながら笑ってる。


「秋葉原のオタクの諸君!ナンボ何でもこのアラサーのメイドが未成年ってコトはナイでしょ。笑える」

「いいや。彼女は未成年だ。アキバのメイドは全員、永遠の17才だからな」

「OH!DON'T BE THAT WAY」


見ればジャンは貧相な男で、コイツが芸術家気取りで誘拐し、メイド姿の元カノにラブホであんなコトやこんなコトを…


やっぱり許せん←


「とりあえず略取誘拐でしょっぴくけど、どうするテリィ?泥酔となると強姦が成立するか微妙だけど、準強姦なら堅くイケる。ってかコレ、つぼみんは薬物投与されてんじゃねぇの?検査してビンゴなら、こいつら全員ゲームオーバーだ」

「鮫の旦那、ソレってスイートに監禁してあるパリ男(ESAの宇宙飛行士)も共謀で同罪ってコトでいいスか?」

「え?ウチの宇宙飛行士もか?おい、ジャパニーズオタク、ソレだけは勘弁してくれ。今までの高圧的な態度はESAを代表して謝罪する。ココは貴国の誇るワビ&サビの精神で内々の処理をお願い出来ないだろうか?」


画面の中のソカピ統括責任者の泣きが入る。

でも、今さら遅いょ一昨日(おととい)来やがれ蛙野郎。


「ヲタクを代表してESAの公式謝罪を受け入れる。ただし内々の処理は既に不可能な状況にある」

「ジャパニーズオタク、ソレはナゼだ?」

「この模様は、さっきからスマホTVのリアリティショーでオンエアされてる。リアルタイムで」


第4章 芸術家達の退場


アキバ 0317 am スタッフルーム


もちろん、盗み撮りしてリアルタイムで流してるなんてのは口から出まかせだ。

とこらが、真に受けたジャンとソカピが、先を争って自供を始めるから愉快だ。


先ず、ジャンはつぼみんに未練タラタラで薬物の力を借りヨリを戻そうとしたコト、そのために、ESAのアーティストプログラムを利用するコトを思いついたコト、その際、ジャンは"MoOn+&co.(ムーンプラス&コー)"時代の実績を流用したコト、そーしたコトをESAやMoOn+&co.は全く関知してなかったコト(このコトだけをソカピは繰り返し主張w)、などドンドン自供がススム←


解説しよう。


発端は、パリの名も知らないウェブマガジンが主催した"夢の月面神殿コンテスト"だ。

同誌編集長の思いつきで始まったらしいが、裏にバチカンがいるとの噂が今も絶えない。


1万人規模の月面都市に必要とされる神殿のコンペで世界中のクリエイターが応募する。

当時デザイナー企業"MoOn+&co."にいたジャンはプロジェクトリーダーとして参戦。


彼がまとめた"月面地蔵計画"は、東洋神秘思想の具現化として何とグランプリを獲得。

内容的には月の周回軌道からお地蔵さんをバラ撒くと逝う残念系だが欧米人には大ウケ。


無人の月の荒野のアチコチにヤタラとトゲトゲのついたお地蔵様が立っている…

あ、トゲトゲは月面の塵と擦れて静電気を充電するための仕掛けらしいんだが。


シュールと逝えばシュール…なのか?


因みに"MoOn+&co."はオフィスを持たずメンバーはインターネットを通じ協働する。"アートは普遍の言語"をモットーとする国際的かつ多国籍な芸術企業とのフレコミだ。


うーんわかったようなわかんないような←


とにかく!ソコへ芸術家なのかどうかもよくわからないジャンが東洋神秘担当として入り込みアキハバラに月面神殿を建立して新しい感性の地平線を目指すmovementにESAはマンマと金を出し、挙句、幼気(いたいけ)なつぼみんが危うく元カレの毒牙に…


どうやら、ソレが今回の真相のようだ。

後は警察の仕事。鮫の旦那にお任せだ。


しかし…欧米人って東洋とか神秘とか逝うモノにカラキシ弱いんだょな。

あと、アキハバラってワードにもさ。ホント参るぜw


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


アキバ 0458 御屋敷(ミユリさんのメイドバー)


明け方、全てが解決したので、念のためミユリさんと御屋敷を見に逝く。

すると…何と大入り満員の大繁盛で、まだまだ営業は終わりそうもないw


「リンカ!ありがとう。きゃあ、スゴい人ねぇ。え?何やってるの、貴女?」

「オペ」

「センセー、助けてくれ!次は俺の番だ!」


何とプライム24ホテルで「負傷」した虎吉さんのトコロの若い衆が全員来てるw

確かに全員負傷してルンだが、ヤタラお行儀よくリンカさんの前に並んでいる←


リンカさんに介抱される順番待ち?

虎吉さんも?怪我してないでしょ?


どうやらリンカさんのナースディ営業は大当りのようだ。

やっぱり、ナースって僕達男子の永遠の憧れなんだょな。


多分明日には、つぼみんがまた元気な姿を見せ、また今宵とは別の賑わいが戻るだろう。

きっと彼女は元カレとの不幸な過去を恥じ暫くは黒歴史として封印したがるに違いない。


確かに、愛情は弱点になる←


でも、そうとわかっていても人は誰も愛するコトを止められない。

だから、どんな相手でも、その人を愛した過去を捨てちゃダメだ。


僕達の人生に意味があると逝うのなら、ソレはどんな過去にも意味があると逝うコトだ。

つぼみんに、どんなコトがあったのかは聞かないケド、どうぞ自分の過去を捨てないで。


どんな過去にも意味があり、今の君に影響を与え続け、君の未来を形作って逝く、大事な人生の裏地になって逝くのだから。


え?裏地のない人生?


やめてくれょwそんな人生なんて、着心地が悪過ぎるに決まってるじゃないか。



おしまい

今回は、アーティスト気取りの元カレ、彼に騙されるヨーロッパ宇宙機関、国際的デザイン企業、そして常連?からは新橋鮫、ランボー(者)、虎吉さんなどが登場しました。


スピアの登場以来、影が薄くなったつぼみんにスポットライトを当て、秋葉原の1夜の出来事を追う形式で描いてみました。


秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。

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