第8話 参謀長シダvs王子マーン
〜今回の話に登場する人物〜
・シダ…この物語の主人公で、モノボルゥー王国の第2部隊参謀長を務める男
・マーン…"平和の国"ハダクトの3人の王子の1人で、刀使い
戦いにおいて、いかに冷静でいられるかと言うのはとても重要な要素だ。熱い心を持って、冷静に対処する・・・それができる者は強い
シダの得意とする戦術は【金矢倉】
いや、得意とはまた少し違うかもしれない。シダには、クリスのような圧倒的戦闘センスがあるわけでは無い。また、アソートのような飛び抜けたフィジカルがあるわけでも無い。
が、シダの持ち味はその優れた頭脳と、幼少期に身につけた狩で敵の動きを見る観察眼にある。それを活かした戦い方が、金矢倉というわけだ。
金矢倉とは[囲い]という将棋の守りの戦法の一種で、他の戦術と組み合わせたりと、柔軟性に優れている。という特徴を持つ戦術だ。
ちなみに囲いとは、防御を固め、少しずつ相手の隙を探り、仕留めるという戦い方。
つまり金矢倉とは、『防御に重点を置き、敵の弱点を探し出し、他の戦術と組み合わせながらその弱点を突くと言う戦術』と、いうことだ。
シダの使う武器は中盾(足までは隠れないが、体は全て隠せるくらいの大きさ)と片手剣。対する王子((真ん中)マーン)は刀。
まず仕掛けたのはマーン。刀を鞘から勢いよく抜き、居合斬りで盾の付いていない右手を狙ったが、その程度の攻撃は容易に予想がつく。シダは瞬時に反応し、盾で攻撃を防ぐと、2撃目が来る前にバックステップで距離をとった。
「どうした。余裕そうなこと言っていた割に全然攻めてこないな。怖気付いたのか?」
「いやぁ。あまりに動きの遅い一撃だったもので…逆にびっくりして後ろに飛んでしまったよ」
低い体勢で構えるシダに向かって、見下ろしながら煽ってきたマーンに対し、シダは右の頰だけ少し上げ、ニヤリと笑いながら、挑発した。
「なんだと」
「悔しかったら1発でも当ててみな!」
キレ気味のマーンに対し、シダはさらに追い討ちをかけた。マーンからは先ほどよりもエクモムが多く発せられているように感じられる。
次に仕掛けたのはシダだった。
盾は体の前に構えるのではなく、無造作に腕を振りながら右手の剣だけを構え、走って突っ込む。
マーンは先ほどの失敗から、盾の付いていない右腕を狙うのではなく、まずはそれを邪魔する盾の付いた左腕を狙おうとした。
「左の盾は飾り物か?」
「なわけねぇだろ!」
マーンはシダの攻撃をかわし、左腕に向かって刀を振り下ろした。
しかしそれも予想していたシダは、モーションの大きい斬撃ではなく突攻撃をしており、素早く剣を戻し体制を整えると、振り下ろされた刀を左手の盾でしっかりと防いだ。
「飾りの盾に2度も攻撃を防がれた気分はどうだい?」
シダのトドメの挑発で、マーンの虫の居所は最悪となった。
【マインドコントロール】自分や相手の心理状態を支配する技術。
怒りで動きが単調になりやすくなったマーンの動きを予想するのは容易かった。
マーンは怒りで感情が高ぶる中、それでも冷静さを保とうとした。先の2回の攻撃では隙を突こうして逆に動きを予想されたので、ならば逆に、しっかり構えているように見える方を攻撃しようとしたが、それはシダの思う壺だった。
マーンの攻撃を防ぎ、隙を見て4撃ほど入れたシダは、一旦距離をとった。
「傷が痛そうだな。動きがさらに鈍くなっているぞ」
「黙れ!今からとっておきの技を見せてやる」
シダに図星を突かれたマーンは、刀でシダを指しながら、一発逆転を狙う必殺技宣言をした。
とっておきというだけあって、それはなかなかにいい攻撃だった。
ここ一番の速さでシダの間合いに入ったマーンは、一撃目、正面から刀を振り下ろした。シダはしっかりとそれを盾で受け止める。
二撃目、弾かれた勢いを利用してシダの左側の脇を狙って斜め上から刀を振り落とす。シダはそれを左腕を払うようにして盾で防いだ。
「お前は俺を舐めすぎていた。だから剣は使わず、盾だけで俺の攻撃を防ごうとするって思ってた、ぜっ!!」
二撃目の左脇への振り下ろしは囮だった。振り下ろしと同時にシダの右側へと飛んでいたマーンは、弾かれた勢いをそのまま利用して、シダの右脇腹を横に切った。
「イッッ!!やるじゃねぇか」
「どぉだ。お望み通り一発入れてやったぜ」
シダは攻撃をくらい、声を漏らした。先ほどまで不機嫌絶頂だったマーンは、もーそれはそれはいい笑顔でシダを馬鹿にした。
(あいつの攻撃は斬りおろしスタートが多い。しかも左から右へ振るのが約9割と。しかも今のではっきりと分かったが、隙を作ろうとするときは必ず盾を左で使わせようとする。しかも今のあいつの心理状態は・・・そろそろ仕掛けるか)
どうやらシダは、マーンの動きを見破ったようだ。
一呼吸起き、シダがマーンに向かって突撃を開始した。盾は体の若干右側で構え、剣も右側に構えながらマーンへ接近する。
マーンは、これを待ってた!とでも言わんばかりにニヤリと笑うと、シダの左肩を狙って刀を振り下ろす。シダは右側で構えていた盾を、左に払う形で振り下ろされた刀を防ぎ、そのまま右の剣をマーンの首めがけて横に振った。
先ほど一撃入れることに成功したマーンは、頭の回転の調子が良くしっかりとそれを予想し、それをしゃがんでかわした。そして立ち上がりの勢いを利用しながら、先ほど一撃入れた傷口めがけて斬りかかる。
もう一度言う。シダの得意とする戦術は金矢倉だ。この戦術は、正面からの攻めには強いが側面からの攻撃に弱いというデメリットがある。しかし、この戦術は柔軟性に優れていて、他の技術と組み合わせることでその力を増すことができる。
マインドコントロールにより、怒りで動きを単調にする事で敵の癖を分析し、弱点である側面を攻撃させ、少し攻撃を成功させる事で、もう一度同じような攻めを誘導する。
マーンは完全に罠にはまってしまったという事だ。
盾と剣を右から左に大きく振り、遠心力をつけさせその勢いで回転すると、しゃがんでいるマーンめがけて盾を斜めに振り下ろした。遠心力を得た盾は、刀をいとも容易く弾き飛ばすと、無防備になった体を剣で斬り裂いた。
急所を斬られたマーンはその場に倒れた。
「スー…フゥ〜。なんとか倒せたな。感情のコントロールがしやすい相手でよかったぜ」
王子を倒したシダは、深く深呼吸をした後、他の2人の方をちらっと見ると、向こうもけりがついていることを確認した。
「次回!2人の戦いのリプレイを見た後、ストーリーが進む!」byシダ
戦闘シーン・・・伝わってますかね?
回転斬りってダサくね?とか思ったりしましたが、そこはスーパーエフェクトを想像する中で付けてしまってください。(笑)
あと、終わり方はちょっとふざけて見ました。あのセリフ自体は本編とはほとんど関係ないので、あまり気にしないでください。
ではまた〜( ̄▽ ̄)