第34話 事件と講義
ガラガラ・・・
「え?」
「あ・・・」
「きゃー!!!」
そこにはタオル一枚で立っている女性の姿があった。美しいうなじ、細くくびれたウエスト、程よく鍛えられた太もも・・・
シダは慌ててとを締め直す。女性はその場に座り込み、困ったような表情をしていた。
シダは驚いたせいで呼吸が荒く、はぁはぁと言いながら扉に寄りかかっていた。
どうしてこうなったのか。それは1時間ほど前に遡る。
王城に一泊することになったシダとクリスは、カスミに案内されて食堂へと向かっていた。
「この部屋はなんの部屋ですか?」
食堂に向かう途中にあった、2階の階段を上がって少し先にある部屋について聞いたシダ。インティスの王城は、モノボルゥー王国の王城とはまるで作りが違っており、何というか、インティスの方が貴族の建物らしく、モノボルゥー王国の王城はどちらかというと要塞に近い者だった。
どうやらシダは、見慣れない建物に興味があるらしい。
「そこは浴室です。ご自由にご使用ください」
そこはどうやら浴室だったらしい。しかし、この会話が後にあの事故を起こすとはまだ誰も知らなかった。
「この王城には私と他に20人の元護衛隊兵士が住んでいます。他は戦死してしまいました」
「そーですか。20人で暮らすには広すぎるかもしれませんね」
「全くその通りです」
クリスは、少し暗い話をしていても、それも話のネタにし、楽しげに話す2人の後ろから眺め、強引にでも連れてきて良かったと、改めて思っていた。
食事は白の豪華さに似合わず、あまりいいものとは言えなかった。そもそもそんないいものを食べられる余裕がある国が年貢ごとにでそんなに騒ぎを起こすわけもないのだ。
しかし、その料理はとても美味しかった。
「これ、誰が作ったんですか?」
「あ、これは私が作りました。お口に合わなかったでしょうか・・・」
「いや、めっちゃ美味い! クリスもそう思うだろ?」
「あぁ。これは美味しいな。これを20人分作ってるんですか?」
「そうですね。毎日私が作るわけではないのですが、半分くらいは私がやっていますね。何故か指名が多くて・・・」
((そりゃこんだけ美味けりゃな))
その料理は絶品だった。約1ヶ月もの間、戦争のためまともな食事をとっていなかった2人にとって、こんな料理が食べられたのは超ラッキーだったと言えよう。
「是非、うちで料理してほしいものですなぁ」
冗談半分で言ったシダのその言葉に、カスミは何故か頰を赤く染めていた。
そして、事件は起きた。
「ご、ごめんなさい」
「いえ。その・・・」
謝るシダ。扉の向こうにいたのはカスミだった。カスミは恥ずかしさに言葉が出ない。
元はと言えば、ここを自由に使っていい浴室だと言ってしまったカスミに非があるのだが、現実悪者扱いされるのは除き扱いの男性側である。
しかし、カスミもそこは理解しているようで、一つ大きく深呼吸をすると、扉の向こうのシダに話しかけた。
「あの、私こそすみません。客人が来たのなんてとても久しぶりだったもので。男性用の浴室は反対側にありますので、そちらを使ってください」
シダは返事をしたあと、慌てて反対側の浴室へと向かったが、心の中ではガッツポーズをしているのだった。
「という事があったんだよ」
「まぁ。あれだ。滅びろ」
シダが寝室でクリスにその事件の事を話すと、クリスはそっと背を向けてからそう小声で言った。
ーー翌日の午後
「今日は呼びかけに応じてくれてありがとう。早速だが始めたいと思う。シダさん宜しくお願いします」
「あいよー」
翌る日の早朝、シダは周辺の田畑を見回った。そして、予想通りだと言わんばかりの表情を見せたと思えば、農民を集めろと言い出したのだ。
そう。これから行われるのは、シダによる正しい農業講座なのだった。
「いいですか? まず、土がいかに重要かというところから・・・」
シダの講義は日没まで続いた。シダから伝えられたこの農業技術が、のち300年に渡って農業の基礎として伝えられていくことを、今はまだ誰も知らない。
「さて、俺の考えたことは大体わかったと思うが、これで少しは年貢の件で役に立てただろうか」
「十分すぎるわ。とても感謝しています」
シダは直接年貢の件に立ち会うことは出来ないが、間接的になら可能と考えた。農業の正しい知識を教えることで生産が安定する。そうすれば年貢を納めるのも少しは楽になるかもしれないのだ。
「さて、そろそろ俺たちは帰ろうぜ!」
「そうだな。これ以上長居をすると、部下たちに心配されてしまう」
切り出したのはシダだった。クリスはシダが故郷に少しでも長くいたいのではないかと、帰ることを言わないようにしていたが、その心配は無かったようだ。
それよりも、何か大事なことを隠しているような表情をしていた。
帰り道、シダは深刻そうな顔で話し始めた。
「なぁクリス。カスミはいつ年貢の回収に兵士が来たって言ってたか覚えているか?」
「2週間前だろ? それがどうしたんだよ」
クリスはシダの言うことがよくわからない様子で首を傾げながら答える。シダは前を向き、決意の表情で続けた。
「明日、軍が攻めてくる」
「なっ!! まさか・・・しかし、経過日数的にもドンピシャだな。で? どうするんだ? その様子だと、もーどうするかは決めてんだろ?」
「あぁ。もちろん返り討ちにする。俺の故郷を荒らしたこと、あの世で後悔させてやる」
クリスはシダの言葉に驚かざるおえなかった。しかし、シダの頭脳を疑うことなど一切なく、冷静に可能性を考えたところ、やはりシダの予想は正しいと判断した。シダほどではないが、クリスもまた頭の回転が早い。
クリスは先程からチラチラと見せていたシダの表情の理由がわかり、スッキリしたと言う様子だ。
「さて! 一度キャンプに戻ったあとすぐにカランコエ出動準備だ!!」
「はいよ。リーダー」
2人は竜馬を急ぎ走らせ、軍の襲撃に備えるのだった。
結局日間ランキングに載るなど夢のまた夢だった。
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