ご主人様の主張
儀式の間を出た後、ご主人様(笑)に連れて行かれた場所はお城だった。
職場兼自宅で他にも2人の星守が交替で川の管理をしているそうだ。
ご主人様に抱えられたまま城内移動している途中なのだが、ご主人様の自分語りが止まらない。
「グレーテルは僕がサボってるって言ってたけど、別にサボってるなんて事はないからね!」
まずは自分がちゃんと働いていることを強調するご主人様。
「僕は同時にたくさん使い魔を操れるけど、戦闘が苦手だからそれでグレーテルはいつも文句を言ってるんだ」
グレーテルが使い魔を同時に扱えるのは6体だけど、ご主人様は倍の12体を扱えるらしい。
星守級なら平均は8体くらいで、12体同時はかなりの実力者ということになる。
ちなみに歴代最大記録は16体らしい。
ご主人様はまだ若いのでピーク時にはそれに迫れるのではと噂されているそうだ。
「とにかく僕は争いがあまり好きではないんだ。川の管理だって好きで選んだ仕事だけど、楽な仕事でもないしサボっているワケではないよ」
私の視線が冷たい事を気にしているご主人様。
「あー…大丈夫ですよ。ご主人様は悪い人では無いと認識してますから」
正直私の視線が冷たい理由はご主人様が一般人が引くレベルのオタクに見えるからで、別に仕事云々は真面目に働いているならどうでもいいと思う。
「今日もシフトが休みなだけで明日は仕事だし。使い魔も決闘用だと僕だって8体くらいしか動かせないからね!」
「その決闘用とそれ以外ってそんなに違うんですか?」
「操作に必要な魔力の量が違う。決闘用の使い魔は動作に速さや細かさ、パワーも必要だから主人の負担も大きいんだ」
「僕が12体動かせるのは細かい調節がちょっと人より得意なだけなんだ。だから決闘用の使い魔ばかりだと管理できる数も減る」
その細かい調整が上手いというのが引っかかる。
本人に自覚は無いんだろうけどご主人様には何か人をイラつかせる才能がある気がする。
そして目覚めた状況から自分が本当は決闘用なのではと気になった。
「私は…何用なのでしょうか?」
「素体のスペックだけなら決闘用。かなり細かい動作も可能な作りだけど、配分的には愛玩用かな?」
愛玩用。それは見て可愛がるか触って可愛がるか不安になる用途じゃない?
「いや、やっぱり研究用かなーここまで歪な魂は珍しいから同意が得られるならキミを研究したい」
「研究!?」
猫耳美少女人形を隅々まで研究って変態じゃん!
「使い魔の意思を尊重するけど、気が向いたら付き合って欲しい」
「…考えておきます」
気が向いたらとか言ってるけどなんか最終的には結局その研究とやらに付き合わされる気がしてならない。
瓶底眼鏡のモヤシ男子がお人形相手にキミを研究したいとか生理的に無理。
ひとつ屋根の下で生活しなきゃいけないとかやっぱ無理。
でもここにいないと存在そのものが消えるのも怖い。
とりあえず今は様子見かな?
ものすごく不安だけど。
本物の変態はかえって安全と聞いたことがあるしそれを信じよう。