猫耳美少女と長期休暇
再スタートしました。
以前の投稿部分を加筆修正されています。
貴族→星守とヤドルたちの設定が変わりました。
「「何もしなくていいってどういう事?」」
私とグレーテルの声がハモった。
「だって命の川を一周も出来ないくらい弱ってるんだから…休みなよ」
「確かに。そうですわね」
「わかったようなわからないような…」
命の川は死者の魂を落ち着かせる場所らしい。
イメージとしてはゴツゴツした石が川の水に磨かれてつるつるになる感じで、基本的には流れに身を任せるだけの場所だけど、弱っているとここで力尽きて消えてしまう魂もあるのだという。
石が小さ過ぎてつるつるになった後、次の工程に進めるサイズじゃなかったり、傷が大きすぎて途中で割れてしまうイメージで、私は後者に見えたそうだ。
「石が元々欠けているようにも見えて、光も弱かったからとにかく放っといたら危なく見えたんだ」
心が欠けているという言葉には思い当たる節がある。
子供の頃からどこか冷めてるとか空気が読めないとかドライすぎるとさんざん言われてきた。
性格が悪くて就職もいい会社に入れなくてブラック企業を転々として最終的には派遣で落ち着いている感じだった。
「心が欠けてるって物理的に欠けてたのか…」
「いや、多分キミが思っている意味とは違うと思うけど、とにかく休みなよ」
確かに最終的には色々あって12連勤したところだったから休んでも罪は無い。
「わかりました。休みます」
こうして私の異世界での長い休日が始まった。
「好きなだけ休んで下さいませ。最低と言った事も謝りますわ」
「いえいえ。なんとなくそう言われた理由も理解できますからお気になさらず」
なんとなくグレーテルとも打ち解ける。
「私も星守としてはまだまだ未熟なので実力があるのにサボってるお兄様を見るとつい、イライラしてしまいますの。貴方に罪はありませんわ。よかったらお友達になって下さらない」
「はい。私もこの世界の事は何もわからないので心強いです。よろしくお願いします」
ヤドルより小さい手に包まれる感じで私たちは握手をした。
最初はヒステリックに怒って嫌な感じの娘だと思ったけど、話してみればご主人様の方が変に感じる。
「家も近所ですから落ち着いたらお茶でも飲みましょう。お兄様のところが嫌になったらうちに来るといいですわ」
そういうと「そろそろ交替の時間ですから」と言ってグレーテルは去って行った。
「僕たちも帰ろうか」
ご主人様は私を片手で抱き上げると部屋の扉を開けた。
小さいので片手でもお姫様抱っこのような横抱きでも抱けるのだ。
多分重さも人形だから軽いのだと思う。
「すごい…きれい!」
目の前に広がるのは本でしか見たことがないくらい大量の星が輝く夜空だった。
雲ひとつなく天の川もハッキリ見える。
「でもこれの1つ1つが人だったの?」
今まで聞いた話だとこの空を輝いている星は全部魂である。
「いや。人だけじゃないよ。動物も植物も魂があるもの全てが星になっているんだ」
星はゆっくりと落ちていき、やがて自分の新しい姿を見つけるのだとご主人様は言った。
私もいつかあの星の1つになるのだろうか?
なんだか少し切なくなった。
約1年ぶりくらいの更新です。
R15指定にしなかったので作品自体を書き直そうか迷ったけどとりあえずこのままいきます。