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多賀野君篇

柴又君よりBLよりかも知れない……。

 僕と寮が同室の、卒業浪人三年目の柴又(しばまた)がとうとう卒業する事になった。

 僕は、柴又の親友の多賀野(たがの)

 現在は、大学の院に在籍している。

 僕は柴又が好きだ。もちろん友情だが......。

 この頃勘違いされて、少し愉快な事になってるんだが柴又は気付いてないだろうな。

 そこがまた好きな所なんだけど。


 この三年間、柴又が卒業出来ないように単位を取らせまいとあらゆる事をして来た。


 柴又が大学四年の時は、確か僕自身も四年だったけど取り敢えず麻雀をさせたっけ。柴又ってなかなか弱くて......どうやって勝たせるか悩んだな。あー懐かしい。

 今もだけど、柴又って肌が白くてどっちかっていうと女顔をしてるんだよね。

 そのせいか、男も女もお近付きになろうとするんだ。迷惑な話だよ。

 柴又は、外見はもちろんだけど中身が面白いのに。

 まぁ、誰にも教えてやるつもりはないけど。

 それに、なかなか俺様な一人称のせいか近寄っては来ないし。もし来たとしても、近付けさせはしないけどね。

 話を戻そう。

 柴又が卒業浪人の一年目には、方向音痴な彼を引きずって全く違うキャンパスに連れて行き、そのまま置いてけぼりにしたからか結局次の日になって部屋に帰って来たな。

 あの時は、僕に怒ろうとしながら疲労に負けて沈没してたっけ。

 卒業浪人二年目には、院の後輩の部屋で麻雀させて、ビールを買ってくるとか適当なこと言って柴又の財布をガメて来たんだっけ?

 でも、やっぱり心配になって事務員の手伝いをしながら再発行用紙を抜き取って、全く違う場所に移して置いたんだ。

 いや、アレは正解だったな。柴又ったら、遅刻で入れなかったって言ってたし。

 そして今年三年目は、僕も修士課程が終わるから卒業後の事を心配して、あちこち奔走してたんだよね。

 もちろん就職の事なんかじゃない。

 柴又と卒業した後もお付き合いするための工作さ。

 だから、今年は柴又を卒業させてあげるつもりは端からあったんだ。

 でも、もしまた浪人しちゃったら完璧な計画を遂行することが出来たんだけど。

 まぁ、贅沢を言うつもりはないよ。七、八割の出来だし。

 そういえば、柴又は自分で僕の妨害工作を回避したことに浮かれて気付いてないみたいだけど、本来の試験日近くには麻雀は完徹させたけど後は何もしてないんだよね。

 完徹ぐらいだったら受かるでしょ。正確には、四回も同じ勉強してるんだし。

 ってな事を言ったら、また憤慨するんだろうな。......飽きないヤツだ。

 今、柴又は目の前でこちらをジロジロと見ている。さっき、教授の話を聞く前に軽く『ちょっと悪かったなって顔』を造って謝ったんだけど、やっぱりすぐに外したのがいけなかったかな?

 でも、それにしてはちょっと怯えた目......。

 佐々木教授の名前を出して、意味深に独り言を言ったことにビビったのかな?

 何を考えてるんだか......。大概予想はついたよ。

 っていうか、何時までもそんなでいたら頭からガブッと喰っちまうぞ?

 多少本気なんだけど。

 と、いきなりハッと気付いたような顔をした柴又が、

「お、おい多賀野。まさかとは思うが、教授に何かするつもりじゃないよな?」

 とかっていうふざけた事を言ってきた。

 元から、あんなじぃさんを苛めて楽しむ趣味は持ち合わせていないが、多少の不幸は味わって貰いたいなとも考えていた。

 なんたって、柴又が浪人して落ち込む姿を見れる可能性を僕以外の人間が減らしちゃったんだからね。

 でも、簡単にしないよって言ってしまうのも楽しくないなー。......ふむ。

「何言ってるのかなー、柴又ってば。僕に何が出来るって言うのさ」

 親友の僕を信じようと葛藤してるなぁ。

「……、そうだよな。何もしないよな?」

 信じるには信じるが、一応確認ですか?

 いいよいいよ、そんなに心配するなら何もしないよ。……柴又が卒業するまではね。

「そうだよ。一介の院生にどうこう出来るはずないでしょ」

 そういえば、今日の定食に鰤大根って載ってたな。柴又が大好きな。

「もうお昼食べた?」

 食べてる訳ないよね。いつも一緒に食べるんだから。案の定、

「いや、今から。食いに行くか?」

「そうだね、今日は鰤大根があるって。柴又、好きだったよね」

 大好きだったよね?

「ん。まあな」


 今こうして、柴又と学校生活を送れるのもあとちょっとか。

 なんだか、感慨深いな。

 とはいえ、柴又は卒業後のための就活をしてる訳ないから、その世話をしてあげて。……結局のところ、これまでと全く変わらないんだよね。

 柴又はまだ気付いてないだろうなぁ……逃がしはしないけど。


 あっ、隣りに柴又がいない。後ろで立ち止まって、何か考えてるなぁ。

「柴又ー?」

 こっちを見た目が、少し潤んでた。柴又は、大学を出たら僕と離れるって思ってるんだろうな。

 まぁ、卒業式を楽しみにしときなよ。お祝いは、就職先とマンションの鍵だから。

 柴又は、きっとヤな顔をするだろうね。でも、いいんだ。照れ隠しだって知ってるからね。

「今行く」

 柴又が、僕の方に一歩踏み出した。


 『貴方の隣りに立つ人物は、どんな存在ですか?』


 柴又と、自炊のための買い出しに出掛けた休日に、雑誌の写真を撮らせて欲しいと言われた事があった。

 僕が写真を撮られていた間、暇そうにしてた柴又にインタビューしていた。その時の質問だ。

 柴又は、ちょっと考えて「知り合い」なんて言葉で終わらせちゃったんだった。

 僕は予想通りだなぁとは思ったものの、『悲壮な顔』を被ってみたんだよね。

 そしたら、柴又ってば罰が悪そうにしてたな。

 今また同じ質問を柴又にしたとしたら、なんて答えるだろうね。

 ……きっとまた「知り合い」だろうな。

 なんて言っても、彼は照れ屋だし。


 もし僕が同じ質問をされたら、きっと

「柴又のことは言葉に変えたり出来ないんだけど、敢えて言うなら……愛情の塊だね」

 って、言うな。なんたって、柴又の分まで言うんだから。


 そうして、柴又にヤな顔されながら白髪になっても一緒にいるんだよ。

 ふふふ、幸せだなぁ。

多賀野君は、腹黒いのか純粋すぎるのか分かんないキャラでした。次は、柴又君と多賀野君の過去話にしたいです。

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