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1-1 ゴブリンの修行は目立つので危険

「……っ」

 苦しい。熱い、寒い。

 何だこの感覚は?風邪でも引いてしまったのだろうか?

 それにしても窮屈な場所だな……。

 早くここから……出たい!


「オ……オギャアア!」

 それが俺のこの世界での生誕であった。


 気付いたら見慣れない場所にいました。

 それだけならどんなによかっただろうか。目の前には見たことも無い生物が何故か友好的に接してくる。若干黒い薄汚れた緑色の肌を持つ腰みののみを纏った小型の二足歩行生物。顔は醜悪で気持ち悪く、歯並びはぎらぎらと剣呑で牙まで生えている。額には一応鬼の証だとでも言うようにほとんどコブにしか見えない角も生えている。

 ファンタジーが好きな少年少女ならばこの簡単な説明だけで一体のモンスターの姿を思い描くだろう。そう、目の前にいるのはそのゴブリンだ。

 なぜそのゴブリンが有効的に接してくるのか。それは俺の体を見てもらえば簡単に分かる。薄汚れた緑色の肌に腰みの。

 つまりは俺もゴブリンなのであった。


 なぜ……こうなった。

 多くのゴブリン達が寝静まる森の中で俺は寝転がったまま森の木々の隙間から星空を見上げる。そこにあったのは真っ赤な月。血のように紅いその月は地球には存在しない。つまりここは地球では無いのだ。

 なぜ俺がそんな場所にゴブリンとしているのだろう?

 最後の記憶は天気の悪い日に学校に居たくらいである。自習であったため、勉強する気が起きない若干怠惰な学生だった俺は若干うとうとしていたことは否めない。それでもいつの間にかゴブリンに変貌するようなおかしなことはしていないはずなのだが……。

 まあ、なってしまったものはしょうがない……と考えるほかないのだろうか。ゴブリンの俺が地球に戻ったって殺されるかよくて実験動物として捕獲されるだけである。

 俺はこの世界で生きなければいけないんだな。

 覚悟にも似た何かを心の中で感じながら俺は眠るために瞼を閉じた。


 ゴブリンになってから一週間の時間が経過していた。俺は未だ子供のゴブリンだが三か月を経過すると成体になるほどゴブリンの成長は早い。

 そしてゴブリンとしての俺は同時期に生まれた他のゴブリンと比べて言語の習得が早く、大人に交じって会話できていた。と言っても早くに成長するためか大人になっても喋れないゴブリンにも多かったりするのがゴブリンの現状ではあるのだけれど。


「今日も精が出るな」

 そう言って話しかけてきたのは部族長だ。鳥の羽の飾りが付いた鉢巻をしているのがトレードマークである。俺は一応この人の息子になるのだが百人ほどこの人の息子がいる。父親と言われても別段何か親愛の情を感じたりしないのはゴブリンという種族の特徴なのだろうか?群れのリーダーで偉い人っていうのが周りの認識でもある。部族長の息子だからと言って優れたことなどはない。ただ会話できる少ないゴブリンのうちの一人がこの人であることは事実だが。

「うん、強くならないといけないからね」

 なんたって最弱の代名詞を争うゴブリンだ。下手をしたらスライムにも負ける。この世界のスライムが強いかどうかは分からないがな。俺は黙々と自身の優れた部分であると思われる魔力操作を扱いながら筋トレをしていた。

 理由はよくわからないがこの魔力というやつは生命力の一種みたいで筋トレや走り込みなどをしながら操作しようとすると体を循環しているのがよく分かる。魔力が作られているのは心臓付近からのようでここから血を巡るように全身を回っている。それを意識して体の部分部分に集めたりしながら体作りをするのが俺の日課である。

 そんな俺の様子に嬉しそうに頷く部族長は俺の頭を無骨な手でぽんぽんと叩いた。

「お前は部族長候補の一人だからな。期待しているぞ」

 笑いながらそう言ってくれる部族長であるがゴブリンの部族長になってもなあ、というのが俺の正直な思いである。このままゴブリンとしての生を受けたまま死ぬのは嫌だと思うのは俺の前世が人間だったことが強く影響しているのは間違いない。

 俺はゴブリンだ。でもゴブリンのままでは終われない。

 そのためには、修行だ。修行をするしかない。俺は去って行った部族長の背中を期待には応えられそうにないから少しばかり寂しい気持ちで目で送った。


 ゴブリンに生誕してから一か月が経過した。修行の成果か、成長の早いゴブリンでも一際大きな個体になりつつある。すでに大人サイズになっているためこのまま成長したらゴブリンの中では巨人になってしまいそうだ。

 それでもきっと人間で少し大きいくらいのサイズだろうけど。

 そしてさらに特殊能力に目覚めた。それは多分毎日のように魔力を操作していたのが原因だろう。目に入った生物の魔力と生命力を数値化できるようになったのだ。部族長に聞いてみたがそんな能力を持ったゴブリンはこの集団の中にはいないらしい。

 ただ言い伝えではゴブリンには数多くの進化系が存在しその力が発現しつつあるのではないか、ということであった。

 それは喜ばしいことなので俺はこの能力を伸ばすことに決めた。


 生命力であるがこれは単純なHPと言った概念の物では無いことが分かった。これはどうやら魔力と似た非なる物。魔力が生命力でありながら魔法的な外部に影響を及ぼす力であるのに対し、この生命力は身体的な部分を強化したりできる体内に影響を及ぼす力であるとのことだった。

 部族長に似たような力がないか聞いてみたら恐らく鬼族にカテゴライズされる種族が持つ力である鬼力であるとのこと。意外と部族長が物知りだったのは驚きだ。

 どうやら俺はこの鬼力と魔力をごっちゃにして操作していたらしい。普通、そこでたいていのゴブリンはごっちゃになってしまうことで上手く操作することができずに鬼力も魔力も使えない。だけど他のゴブリンの平均の鬼力量を十とすると俺の鬼力は三倍の三十もあり、他のゴブリンの魔力の平均を三とすると俺の魔力は五十もあった。その多すぎる力を無理矢理操作することでどうやら俺は鬼力と魔力を扱うことができるようになったようだ。

 無事、普通のゴブリンから脱却しつつあるのは嬉しい限りである。

 部族長からもらったボロボロのナイフを構えながら俺は更なる修行に明け暮れた。


 それからの日々、無心に修行に励む俺は他のゴブリンからの注目を浴びた。俺に影響を受けてか俺ほどではないが少ない無い数のゴブリンがパワーアップしているようだ。これほどの強さを持つ集団になったのは部族ができてから確実に初めてだと部族長が鼻息荒く喜んでいた。ゴブリンの数もますます増え、部族としての力も集まりつつある。ゴブリンの数が五百を超えようとしている今、ここはもはやゴブリンの里となりつつある。


 そんな大集団になりつつあるゴブリンが目立たたない訳がなかった。俺達を気付かないうちに危機が訪れようとしていた。


 そう、ゴブリンの天敵。ゴブリンを最弱へと貶めた高度な文明と力を持つ存在。


 人間の部隊にゴブリンの里が襲撃されたのだ。

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