第三十九章 カルチャーショック
「おい7番。 さっきも言ったが構え方が違う。 ストックを肩にくっつけて構えるんだ。そうしないと衝撃を殺せない。 それから10番。 左手で抑えるのはマガジンじゃなくてハンドガードだ」
俺がそう注意すると、 はいっ! と威勢のいい返事が返ってきた。
現在AK-47を使っての訓練の最中だ。
皆ぎこちない格好で小銃を支えている。
最初は疑心暗鬼のみんなだったが、 AKで土人形を射撃した後は流れるように話がスムーズに行うことができた。
銃の威力をわかってくれたからだと思う。
「よーし。 それじゃあ実射の訓練に入る。 各々セーフティーを外せ」
そう言うと皆お互いの顔を伺い合いながらセーフティーを外した。
銃を構成する部品の説明は最初に済ませてある。
「それじゃあ二度目だが俺が手本を示す。 参考にするように」
言ってからすぐにAKを構えた。
サイトを少し見た方が良かったのかもしれないが、 この世界に来てからすでにアサルトライフルは数発撃っていたのですでに射撃の感覚は掴んでいる。
それに距離も近いし。
「カウント3。 3, 2,1, ファイヤー!」
最初とまったく同じ掛け声をかけて引き金を引く。
そして轟音を伴いながら土人形は崩れ落ちた。
「こんなもんだ。 それじゃあ次はみんなの番だ。 まず一番から」
さっきから言っているこの番号は、 みんなの名前を覚えるのがきつかったので一時的につけた呼び名だ。
「はいサイトで狙って、 いけ!」
俺がそう促すと一番は怖々と引き金を引いた。
撃ち出したのは一発。
土人形には当たらなかった。
なので撃ったという気がしなかったようだ。
首を傾げて不思議そうな顔をしている。
まあ銃の概念を知らないのだから仕方がない。
「リコイルショックが強いから何とかして殺すように。 それじゃあ二番」
「は、 はい」
指名されたのは少し気弱そうな、 俺と同い年くらいの少年。
しかし体格が俺よりも小さい。
持っているAKがとても大きく見える。
「よし、 それじゃあ撃ってみろ」
「わかりました」
そう言ってAKを構え、 撃った。
ドガガガガガ! と轟音を立てながら7.62x39弾が正面ではなく、 真上へ。
その瞬間、 ローラにPPKを持たせたときのことを思い出した。
リコイルショックを抑えきれなくなっての、 照準の大きなずれ。
しかし今回はそんなものでは無かった。
真上からだんだんと照準がこちらへ。
弾が有限ならばこちらに照準が反対側にいる俺たちに合わさる前に弾切れになったかもしれないが、 今回は別だった。
俺が弾数無限の魔法をかけているからだ。
故に引き金に指を掛けている限り、 弾は射出され続ける。
「さ、 さすがに冗談じゃねえ!」
言ってからすぐに両手を合わせる。
すると瞬間的に二番の持っていたAKが音を立てずに消滅した。
それと同時に二番は尻餅をついた。
「え、 あれ?」
二番は自分の手元をまじまじと見つめている。
「お前なあ。 さすがにそこまでは無いだろ」
しかし、 お前だけ剣で戦ってもらう、 なんてことは言えないので、 仕方がない。
新しい銃を創ってやるか。
ここで少し考える。
小さな奴でも扱える高火力の銃。
ならサブマシンガン。
P90か?
いや、 あれは初心者が使うのには癖がある、 と思う。
本にもそう書いてあったし、 親父もそんなことを言ってた気がする。
グリップの握り方は、 どうにかなるかもしれないが、 マガジンの取り替えが面倒だか、 ら?
「あっ、 そうだ。 ここじゃ魔法があるんだった」
そうだよ、 マガジンの取り替えの必要は無いじゃないか。
なら、 問題無いんじゃないか?
やることは決まったので、 再び両手を合わせる。
パチンと乾いた音がしてから俺の手にはP90が創られていた。
みんな驚いているが、 最初にAKを使った時ほどではない。
「二番はこれを使え。 銃の名称はP90。 集弾性には優れてるし反動もあまりない。これを使ってもう一度やってみろ」
「は、 はい」
一度失敗したのを恐れているからなのか、 少し肩を震わせている。
しかし少しして覚悟を決めたのか、 P90をしっかりと構えた。
そしてごががが! と音を立てて土人形が崩れ去った。
周りから、 おおぉー、 と歓声が上がる。
「す、 すごい」
「凄いだろう。 それと言い忘れてたが、 銃を人に向けて撃つと、 銃が爆発する。 これはすべての銃に共通していることだ。 気をつけろよ」
もちろんそんなことは嘘だった。
でもこう言っておけば人に向けて撃たないと思う。
安全だしな。
「それじゃあこれで例はたくさん見られただろうから、 これからは各自で訓練してくれ。俺もきちんと監視してるから安心して訓練して良いぞ」
と言うのは建前でこのまま一人ずつ訓練をしているときりがないと思ったからだ。
それこそ日が沈んでしまう。
「リーダーリーダー。 リーダーは訓練しなくて良いのか?」
俺がそう言うのもリーダーは銃で訓練をしないで、 兵士達がしっかりしているか注視している。
「うむ。 さっき少し撃って感覚は掴んだからな。 私は大丈夫だ」
「ほうほう。 やっぱりリーダーは戦闘についてはセンスがあるな」
「そうかもしれんな」
そう言ってリーダーはAKを構えて撃つまねをした。
「それとナイフを持っているのもさすがだな」
「うむ。 お前がナイフを使っているのを見てな。 自分一人で訓練なんかをしてナイフの使い方を学んだんだ」
「感心感心」
でもナイフを使ってるとAKが使えないんだな。
ならあれは必要だろう。
「ほら。 リーダーに村長就任祝いだ」
そう言って目を閉じ、 手を前に突き出す。
そして十秒もしないうちに、 それはできあがっていた。
「それは、 銃か?」
「そうだ。 デザートイーグルという選ばれし者にしか扱えない銃だ」
というのは半分嘘。
しっかりした体つきでないと安定して撃つことはできないからな。
「リーダーにやる。 使い方を間違えるなよ。 それとリーダーは知っているだろうが、銃は人に向けても撃つことができる」
「うむ、 わかっている。 だがシンの説明はあれで良かったと思うぞ」
「だよな」
俺とリーダーはお互いうんうんと頷き会う。
「リーダーそれ片手で使えそうか?」
「うーむ。 撃ってみんとわからんな」
そう言ってリーダーはデザートイーグルを携えて仮射撃場みたいな所へ歩を進める。
「シン。 頼む」
「おう」
リーダーがそう言うので両手をパンと叩く。
するとリーダーの立っている所の前方で土人形が創造される。
「撃っちゃっていいぞ」
「・・・・・・はっ!」
リーダーはとりあえず両手でデザートイーグルを支えている。
やはり慎重でいいことだ。
自分の力を過信していないからな。
俺がリーダーをそう評していると、 リーダーはバンバンっと2発立て続けに撃った。
使用しているのは.50AE弾で拳銃の中で最強の威力を誇る。
それにAKのしよう弾薬と同じくらいの貫通力を持っている。
それはそうとリーダーの射撃の様子だが、 非常に安定していた。
2発とも土人形の頭にヒットしていた。
これなら大丈夫かもしれない。
「それじゃあ片手で撃ってみてくれ」
「わかった」
リーダーは片手で狙いを定める。
そしてすぐに撃ち放った。
バンバンッと轟音をたて.50AE弾が1発放たれる。
放たれた.50AE弾は土人形の胴体にヒットした。
「凄いなリーダー。 俺じゃできないかも」
すぐにはな。
でも少し訓練して、 衝撃を和らげ照準のずれを計算すればできるかもしれない。
「一応頭を狙ったのだがな。 胴体に当たってしまった」
「そうか。 でも問題無いんじゃないか?」
「そうだな。 これならナイフと共に使うことができる」
「ナイフと銃の組み合わせは狭いところなんかで使うのが良いな。 森の中なんてそのスタイルが良いと思う。 動きの素早い魔物にいきなり懐に飛び込まれてもナイフで対応できるしな。 まあでも待ち伏せならAKで良いと思う」
「・・・それでは他の兵士にもこのタイプの銃を配布した方がいいのでは?」
「・・・そうかもな」
たしかにそうだ。 忘れてたな。
それにしても、
「リーダー、 なかなか強欲だな」
「こんなことを頼めるのはシンしかいないのだ。 ここの兵士達の安全性が少しでも上がれば良いと思ってしまうのだ」
「・・・その意気やよし。 ついでに創っといてやる。 でも今日はAKの訓練だけで」
「む。 今日はこの後すぐに魔物の討伐に向かう予定だったのだが」
「・・・そうか。 なら、 俺が一人で何とかしておくから、 ここはリーダーが仕切っといてくれ」
「大丈夫なのか?」
「ああ」
首をポキッと鳴らして固定の意を表す。
「それでは、 頼む」
「ああ任せろ。 それと暗くなったら銃を使った訓練はしないように。 危ないからな。ナイフを使った白兵戦の訓練ならOKだ。 それと銃はまとめて保存しておくこと。 各自で持ち帰らせるな。 銃は15丁創ったから15丁しっかり回収しろよ。 それから」「おいおいシン。 お前は随分と世話焼きだな。 まあ何とかするから大丈夫だ」
「そうか、 そうだよな。 それじゃあ行ってくる」
確かに色々気にしすぎたな。
リーダーに任せとけばたぶん大丈夫だろう。
「んじゃ。 また明日。 時間は午前八時集合で」
「わかった。 皆にも伝えておく」
その会話を最後に、 今日はリーダー達と別れることとなった。
さて、 それじゃあ俺も訓練を始めるか。
はい、 まず謝ります。 すみませんでした。
自分もここまで投稿に手こずるとは思っていませんでした。
そのくせ内容が薄っぺらい気がします(いや、 気がするではないか?)
それではここらへんで失礼させて頂きます。
では