第三章 とある朝の訓練
「ほら! さっさと目標を打ち抜け!」
射撃場に入ってからすでに三時間は経過していた。
「いや、 無理だって! どんな無理なレベルを要求してんだよ!」
「こんなレベル」
親父は俺の使っていた拳銃を取り上げると、 ボタンを押せと指示してきた。
ボタンというのは、 的を出すためのスイッチだ。
親父は俺に二秒でやれって言ってし、 一秒に設定しちゃお。
これまた説明だが、 的は一定時間経つと自動的に倒れる仕組みになっている。
タイマーの設定で倒れるまでの時間を調節できる。
さあ親父、 恥かいてもらうぜ! 設定一秒!
「とっとと押せ!」
「わかったよ」
ふふ、 甘いぜ。 俺のコンボはまだ終わってはいない! とくと見よ!
「それじゃいくぜ、 5,4,3, はいドーン!」
どうだ! これは打てないだろう!
さて、 これから赤面タイムを迎えてもらいましょうか。
「親父、 残念だったな」
「何がだ?」
「いや、 的だよ。 親父でもやっぱり外すんだなってね」
「・・・外してないぞ」
「またまた~何言ってんだ・・・よ」
結論を言うと人型の的の急所という急所はすべて打ち抜かれていた。
「ここまでやるのはまだ無理だろうから、 せめて頭と足の関節ぐらいは打ち抜けるようにしておけ。 ついでに俺は十一歳の時にできたぞ」
「っつ! わかったよ! 見てろよ!」
親父から拳銃を奪い取る。
「ふっ、 一時間後にまたくる」
そう言い残して親父は射撃場から出て行った。
「あんまし俺をなめんなよ」
これから愛銃になるであろうM92Fにマガジンを装填する。
「確かに、 悠長に狙いを定めている時間なんてなさそうだしな」
的をオートプログラムに設定して、 銃を構える。
ビーという音と共に、 人型の的が出てくる。
バンッ、 バンッという乾いた音が鳴り響く。
「さて、 結果は・・・げっ、 中心から離れてんじゃん」
頭と足の関節三カ所を狙ったのだが、 狙いがいまいち安定しない。
「やっぱり親父、 撃つの早いな」
こっちは三カ所でいっぱいいっぱいなのに、 何カ所も性格に打ち抜くなんて人間業じゃないな。
「すばやく、 たくさんの弾をを撃つには・・・・・・あっそうだ!」
アレがあったじゃんか! 問題は準備だが・・・。
「ここは曲がりなりにも射撃場なんだからあるだろう」
射撃場の隅にあったタンスらしきものを漁り出す。
「頼むぜ~あってくれよ・・・・・・あった!」
ふふ、 これがあれば親父にも負ける気がしないぜ!
「さっそく訓練始めるか」
親父が来るまであと・・・三十分くらいか。
「それだけありゃ十分だ!」
さっそく新しい訓練を始めた。
「それで、 できるようになったんだろうな?」
現在時刻十一時ジャスト。 あれから一時間が経過しております。
「ああ、 なんでもかかってこいだ」
ほう、 と親父がにたりと笑う。
「さっそくやってもらおうか」
「いつでもどうぞ」
さあ、 いくぜ。 親父に一泡吹かせてやる!
ビーという音と共に的が出てくる。
それを、・・・二丁の拳銃で撃ち抜く!
右手のM92Fで右足の関節と、 右の腕の関節を。
左手のM1911で左足の関節と、 左の腕の関節を。
最後に二丁使って頭を打ち抜く。
頭を打ち終わると同時に、 プログラムが終了する。
「どうだ! これで文句ねえだろ!」
「ほう、 確かにこれは驚いた。 まさか二丁拳銃とはな」
二丁拳銃にすると手数は増えるが、 標準がうまく定まりにくくなる。
それを修正するのに三十分も掛かっちまったってわけさ。
「すごいっしょ」
「さすが殺人者の息子だな」
「それって褒めてるよな?」
「さあな、 それよりもそのM1911もお前にやる」
「サンキュー」
ショルダーケースはタンスらしきものの中にあったので持ち運びに支障なし。
それからおもしろい物のあったのでついでにもらっておいた。
「んじゃ、 俺この後遊びに行くから」
たしか集合は一時だったはず。
「わかった、 でもその前に・・・昼飯作っていってくれ」
「おーけ」
どうやら親父もまだ命は惜しいようだ。
あと二回くらいで異世界いけそうです。
感想などよろしくお願いします。