第三十六章 武具選び
~カズヤサイド~
「「・・・・・・はぁ」」
「二人とも溜息なんてつかないでください。 こっちの気も滅入ってきます!」
「「そんなこと言われましても」」
大会が終わった翌日、 俺とセリアさんはずっとこんな調子だった。
特にセリアさんの落ち込みようは半端じゃ無かった。
「私が今までやってきたことは何だったのでしょう」
「ああ、 引きこもりたい」
「もうっ! 訓練です! 訓練をします!」
アリアは俺とセリアさんの腕を掴みずんずんと歩いて行く。
方向からして訓練場に向かっているのだろう。
まあ、 いつまでも落ち込んでるわけにはいかないか。
「わかりました。 やりますよ」
そう言った瞬間、 アリアの顔が輝いた。
「あの試合で負けたのは武具の差です! だから自分に合った武具を探すんです!」
俺とセリアさんが剣術の訓練をしている最中にアリアが言った。
俺もセリアさんも動きを止め、 アリアの話に聞き入った。
「セリアの方は大丈夫かもしれませんが、 カズヤさんの方は別です」
「そうかもしれませんね」
セリアさんは腕組みをしながらうんうん頷いている。
まあ俺が使ってるのって適当に選んだ木刀だからな。
「それじゃあ武器庫の方へ行きましょう!」
行くとも言ってないがアリアは構わず歩き出した。
でも武具をしっかり選ぶことは、 大切だと思う。
とりあえずついて行った方がいいな。
セリアさんも同意見らしく大人しくアリアについて行った。
「ところで俺、 どうやってやられたんですか?」
移動中暇ができたのでそんなことを聞いてみた。
「それが、 よくわからないんです」
歯切れが悪そうに答えたのはセリアさんだった。
「セリアさんにもわからなかったんですか?」
以外だ。 セリアさんにもわからなかったなんて。
「ええ。 おそらく魔法ではなく、 見たことも無い武器を使っていました。 でも似たような武器は知っているのですが」
「どんな武器ですか?」
離れた場所から敵を的確に攻撃する武器。
俺の知ってる限りでは、
「銃です」
「・・・やっぱりか」
どうやらこの世界でも銃という兵器は存在するみたいだ。
やっぱり同じような進化をしてるな。
「こっちの世界の銃の性能はどんな感じなんですか?」
「こっちの世界、 と言うとカズヤさんのいた世界にもあったんですね」
「まあ、 ありました」
実物は見たこと無いけど。
「話が逸れました。 この世界の銃の性能でしたね。 試作品ができたのはつい最近で、 まだ剣や弓矢の方が実用的です」
「へえ」
元いた世界では銃は何百年も前から使われてたんだっけ?
無駄な所だけ発達してるな。
「着きましたよ」
俺とセリアさんが話をしていると、 いつの間にか武器庫に着いていた。
セリアさんは一番に武器庫に入ると、 中から一本の棒のような物を持ってきた。
アリアは一人で武器庫の中を物色し始めていた。
「これがその試作品です」
「うーん」
セリアさんに渡されたのは、 大部分が木でできた長さ一メートルくらいの棒だった。
「これで弾を射出できるんですか?」
「一応できるとの報告は来ていますが、 精密度という点では、 問題ありですけどね」
「そうですか」
まあ見た目からして性能悪そうだしな。
無駄に重いし。
「それにしても、 何か見たことあるような気がするんだよな」
元いた世界で真治が得意げに語ってたような・・・。
「あっ、 思い出した。 九九式小銃だ」
「きゅうきゅう、 何ですか?」
「この銃が元いた世界の九九式小銃っていう銃に似てるんです」
前に真治の家に遊びに行ったときに見せてもらったんだ。
『親父の部屋からかっぱらってきた。 長く鑑賞できても十分が限界だ。 それ以上伸ばすとばれて殺されるかもしれん』とか言って興奮してたっけ。
そういえばやけにリアルなモデルガンだったよな。
傷とかも付いてたしずっしり重さもあったし。
最近のモデルガンって全部そんなもんなのかな?
「九九式小銃ですか。 性能はどうだったのですか?」
「確かボルトアクション式の銃だそうだから、 連射性能はそこまで凄くなかった、 らしいです。 でも威力と射程と精度はなかなかだったらしいですよ」
全部真治の受け売りだけどね。
あいつ銃の話をするときだけは目を輝かせてたなぁ。
『今ここで九九式の設計図書いてやるよ!』とかも言ってたな。
さすがに設計図をまるまる覚えるなんてガンオタでも無理だろ。
と言うより設計図なんて手に入れられるもんなのか?
まあ、 いい思い出だったな。
「すいません。 この銃お借りしててもいいですか?」
「? それを使うのならまだ弓矢の鍛錬をした方がいいと思われますが」
「いいんです」
これを持ってれば真治の嬉しそうな顔を忘れることはなくなる、 と思ったが口に出すのは恥ずかしいので言わないでおこう。
「そこまで言うなら、 いいですよ持って行ってください」
「ありがとうございます」
さて、 これからもがんばるか。
こんにちは作者です。
今回は久しぶりに和也が出てきました。
でもこっちの話作るの難しい。
次回からは真治のお話に戻ります。
感想など待ってます。