第三十五章 お久しぶり
「誰も来ないなー」
「そうですねー」
「「はぁ」」
店を開けてから早三日。
しかしお客は一人も来ることは無かった。
「なんでお客さんが来ないんだ?」
「・・・さぁ。 わかりません」
ローラは入り口の上の辺りを見つめてからそう答えた。
「? まあいいか」
客が来ない理由なんてローラに聞いたってわかるわけ無いし。
「でも暇だなぁ」
とにかく暇なのでテーブルに突っ伏す。
するとローラがぴょんと椅子から跳ね上がる。
「ど、 どうした?」
「ノアおばさん!」
「は?」
ノアおばさん? 人の名前か?
「なあ、 ノアおばさんって誰だ?」
「えっ! シンジさん忘れちゃったんですか? 食堂のおばさんです!」
「食堂・・・あっ、 思い出した」
最初に行った集落にいたおばさんか。
そういえば最後に自己紹介してたな。
「まあノアおばさんってのは思い出した。 それでなぜ今そのワードが出てきたんだ?」
「そういえばシンジさんはお会計の時にはもう外に出てましたね。 お会計の時にノアおばさんと落ち着いたら挨拶に行くって約束したんです」
「そうか。 それって俺もついていった方がいいか?」
「当然です!」
まあそうだよな。
道中危険なことが無いとも限らないし。
「よし、 それじゃあ三十分後に出発!」
どうせ誰も来ないだろうから店番はいらないだろう。
「イェーイ! それじゃあ外出用の服に着替えてきます!」
そう言ってローラは仮自室に駆け込んでいった。
「まあ女の子だから身だしなみには気を遣うのかな」
ついでだが俺の服装は、 ローラに買ってきてもらった目立たない色の動きやすいシャツと長ズボンに、 長い丈のコートを羽織っている。
そんなに暑くないので問題は無し。
「さて、 外でちょいと遊んでるか」
コートを少しめくり拳銃を取り出して、 家の外に出た。
「準備できました!」
「おお」
一旦土人形に狙いを定めるのをやめ、 顔をローラに向ける。
そして服装だが、
「普段と変わってないんじゃないか?」
ローラの服装は、 いつもと(と言っても首都に到着費した日辺りからだが)さほど変わらない明るい色主体の半袖シャツと、 膝の上辺りまでくらいまでのスカートをはいている。
「何言ってるんですか! 全然違います!」
「そうかそうかそうだったな。 じゃあ行くか」
『じゃあどこが違うか言ってみてください!』と叫んでいたが無視して歩き続けた。
だってどこが変わったかわかんないんだから仕方無い。
「そして到着」
「ですね」
結局ここまで来るのに二時間ほどかかってしまった。
首都の方で馬のレンタルがあったが、 ローラの一存により却下。
なのでてくてくと歩いてきたわけだ。
「それにしても活気があるなぁ」
俺たちが最初に訪ねたときよりも随分人が多かった。
「そんじゃあまず食堂だな」
「はいっ」
ローラが少し小走りで前を進む。
そのペースに合わせて歩くと、 すぐに食堂に着くことができた。
「こんにちわっ!」
そして食堂の扉を勢いよくローラが開け放つ。
「いらっしゃい!」
勢いよく声を掛けてくれたのは、 ノアおばさんだった。
「おやあんた達かい、 久しぶりだね」
「ノアおばさんこそ元気そうでよかったです」
「どうもご無沙汰です」
三者三様の意を、 しかし確実に歓迎の意を表した会話だった。
「それでどうするんだい? ご飯を食べてくのかい?」
「うーん、 とりあえず遠慮しておきます」
今の時刻は元の世界で言う午後四時。
こっちの世界でも時間軸はだいたいあってるので、 今は昼飯時でもなく夕食時でも無いので断ることにした。
「そうかい。 ならお茶でも淹れようかね」
「あっ、 お願いします」
そう言うなりおばさんはいつもの如く厨房に駆けていった。
そしてそれから3分ほど経つと、 お店の扉が開いた。
「ふぅ、 公務もやっぱり疲れるな」
「あっ!」
声を上げたのは、 俺。
そこに立っていたのは、
「リーダー! 久しぶりだな!」
「おお、 シンではないか! 久しぶりだな!」
背が高く、 がっちりした体格、 うんリーダーだね。
俺は歩み寄って握手をしたが、 ここである事に気付いた。
「公務って、 どういうこと?」
確かにリーダーはここに入ってくるときに公務で疲れたってぼやいてたよな?
「ああそのことか。 私はこの村の村長になったのだ」
「えっ!」
本当に村長になっちゃったのか。
まあでもリーダーにはカリスマ性がありそうだから大丈夫だろう。
一時期ごろつきもどきの頭をしてたしな。
悪の頭領でもリーダーシップが取れなきゃ誰も着いてこないもんだ。
「そうかそうか。 やっぱりリーダーはやる男だと思ったよ、 いやマジで」
「まあな」
「「はっはっは」」
そして男同士二人で笑いあった。
「なんでこの二人笑いあってるんですか?」
「さぁ、 私にもわからないなぁ」
声のした方向に振り向くと、 ローラとノアおばさんがお茶を啜ってるのが見えた。
「・・・俺たちもお茶飲むか」
「・・・そうだな」
すこし恥ずかしながら俺とリーダーは席に着いた。
はいお久しぶりの作者です。
この章でやるお話が、 この作品を思いついたときから暖めていたお話です。
それではがんばって書きます。