第三十一章 終幕
どんなにたくさんのナイフを使ってジャグリングをしていると言っても、 手にもっているナイフの数は最大二本だ。
ということで手に持ったナイフを片っ端から女性に向けて投げつける。
十本全部だ。
この数なら回避行動に専念せねばなるまい。
さすがにマズイと感じたのか、 今度は剣を使って回避行動をとった。
「ふっ!」
一本、 二本とかわし危なくなった場合は剣を。
結局傷一つ負わせられること無くすべて避けられてしまった。
「凄いな」
女性の足下に落ちているナイフを一瞥しながら言った。
「それで、 降参ですか?」
・・・またそれかよ。
「もしかして、 さっきから武器の心配をしてくれているのですか?」
「ええもちろんです。 私は武器を持たぬ者とは戦えませんので」
ビンゴ! やっぱりか。
「それなら大丈夫です。 さっきも言いましたが武器はまだたくさんありますので」
再び両手を腰に回し、 ナイフを二本創造する。
どうせ投擲したところで、 簡単に避けられてしまうだろう。
だから接近戦だ。
「・・・もう何も言いません」
「結構です!」
ナイフ二本を逆手で持ち、 一直線に駆け出す。
途中に魔法で創られた鞭が飛んできたが、 軽く避ける。
女性もそれで勝負がつくとは思っていなかったのか、 そのまま第二撃が放たれた。
「そらっ!」
普通に全部避けきって、 女性の元へたどり着いたのでこちらも一撃。
右手で殴り掛かるようにして右手を振るった。
何度も言うようだが、 頭を狙ってだ。
まあ結局頭を反らすだけで避けられてしまった。
「やはりいい動きで」
「戦闘中に喋るのは関心出来ないな!」
振り切った右手を引き戻す際に、 ナイフを持ち替えまた不意打ち。
「うっ」
女性はそれをしゃがんで避けたが、 これで終わりか。
「その体勢じゃあ、 フィニッシュだ!」
こっちはまだ得物が残っている。
そして躊躇うことなく、 左手のナイフを、 振り、 ぬ。
「危ないセリアさん!」
「なっ!」
俺がまさに左手のナイフを振り抜こうとした瞬間、 気絶していると思っていたモヤシ青年の方向から、 バスケットボールくらいの炎の塊が飛んできた。
「くそっ!」
そのまま女性の前にいると、 ローストチキンになってしまうこと間違いなしなので、 仕方無く離脱。
ちらりと青年の方へ目をやると、 木刀を杖にして立ち上がろうとしているところだった。
くそ、 モヤシ青年め。
「ローラ! とどめを刺せ!」
「はいっ!」
忘れかけていたが、 ローラは会場の隅の方に立っているし、 拳銃も持っている。
なのでモヤシ青年一人気絶させるくらい造作も無いことだ。
そして響く銃声。
パンッ! パンッ! パンッ! パンッ! パンッ! パンッ! パンッ! パンッ! パンッ! パンッ! パンッ! パンッ! パンッ! パンッ! パンッ! パンッ! パンッ! パンッ!
・・・おい、 まだ撃ってるぞ。
「ロ、 ローラもういいって」
俺がそう促すと、 ようやく銃声がやんだ。
マガジンの弾を無限にしたのが間違いだったのか?
まあゴム弾だしたぶん・・・生きてるだろ。
「はい! やりました! 確実に気絶させることが出来ました!」
ニコニコ満面の笑みを浮かばせながらローラが口を開いた。
「・・・ああ、 よくやったからあの青年の見張りをしててくれ」
はいっ! と元気な返事を響かせながら、 とてとてと青年の方へ駆けていった。
ふう、 これであの青年は確実に脱落だな。
目が覚めるようなことがあっても、 そのまま気絶した振りをすることをお勧めする。
もしピクリとでも動けば、 ローラの至近距離からの一斉掃射がお見舞いされるだろう。
「それじゃあ邪魔が入りましたが、 始めますか」
「・・・そうですね」
結構怒ってるなぁ。
無抵抗の味方が、 ああもバカスカ撃たれたら怒るのは当然だろう。
まあこっちも早めにケリをつけよう。
ポップコーンもどき食っただけなので腹が減ってきた。
というのは言い訳で、 ナイフだけではきついと思ったからだ。
スコーピオンを創った理由は。
今度は包み隠さず、 スコーピオンの創造シーンは衆目に晒した。
と言っても見えたのはセリアさん、 とかいう女性だけだろうが。
「なっ!!!」
やはり凄く驚いてる。
でも、 もう終わるけどな。
「それじゃあ、 go to heaven!」
はい、 またUPです。 今回は早かったですね。
これからもこんな感じで行きたいと思います。
では。