第二八章 それぞれの思惑
「うひょ~、 飯だ飯だ」
「まあ、 お菓子ですけどね」
本戦1回戦が終了して早30分。
今は、 決勝戦の視察を兼ねて観客席に座っている。
ちなみにポップコーン(推定)を装備。
無料だったので、 二ついただいた。
「それよりどっちが勝つと思いますか?」
ローラが会場の中心を指さす。
「ん~、 あんましよく見えないけど、 たぶんあっちの方じゃないかな?」
俺の指さす方向には、 俺と同じ歳くらいの少年と、 少し年上であろう女性がいた。
この二人も俺たちと同じように、 ゴーグルをつけていた。
おそらく俺が使った閃光手榴弾の対策だろう。
まあ相手は魔法を使った、 と思い込んでるだろうけど。
「相手の方も、 強そうではあるけど、 女の人の方から半端じゃない殺気を感じる」
「私には全然わかりません」
と、 ここでお決まりのアナウンスがかかった。
「さーーー! 長らくお待たせいたしました! これより本戦2回戦を始めます!
どちらが勝つのか想像もつきません! それでは・・・始め!」
先に動いたのは、 予想通り女性だった。
しかし半端じゃないほどスピードが速い。
腰に下げてある剣を抜き、 相手に向けて振るった。
それだけだった。
それだけの動作で、 対戦相手の男達が地面に倒れた。
「えっ? 何が起こったんですか?」
わけがわからずあたふたしているローラ。
「魔法だよ、 たぶん」
女の人が抜いた剣の先端から何かが伸びているのが見えた。
おそらく魔法で鞭みたいな物を創ったのだろう。
「私たち、 勝てますでしょうか?」
心配顔で尋ねてくるローラ。
「まあ多分な。 なんせこっちには銃があるし。 持つ者と持たざる者の違いってやつかな」
才能云々の話もあるが、 それを吹き飛ばしてしまうほど銃は理不尽なほどの強さを誇る。
「シンジさんがそう言うなら安心です」
「うむ」
しかし保険を打っておく必要はあるな。
閃光手榴弾は使えなさそうだし。
一瞬さえ隙があれば終わりなんだが・・・。
「・・・・・・あっ」
いいこと思いついた。
この方法なら、 相手も目を閉じてくれるだろう。
「ローラ、 耳貸して」
「またですか?」
そう言いながらも、 耳を傾けてくれるローラ。
普通に話してもいいのだが、 それでは雰囲気が出ない。
「ごにょごにょ、 ってわけ。 出来るな?」
「出来ます!」
一も二もなく即答。
「うむ、 いい返事じゃ。 さればこれを渡そうではないか」
ぎゅっと拳を作り、 創造魔法を実行する。
なに、 今回創る物は簡単だよ。
よって創造するのには時間はかからなかった。
「ありがとうございます! 早速つけてみますね」
そう言ってローラは、 耳にある物をはめた。
ん? 何かって?
そりゃあ、 ただの耳栓だよ。
~和也サイド~
「カズヤさん、 今回は全力で行かせて頂きます」
「ど、 どうぞ」
予選本気じゃなかったのかよ、 というツッコミは放棄。
こうなったのにもきちんと理由がある。
先程の1回戦のことだ。
光が引いたと思ったら、 倒れている選手。
セリアさんは、『少々本気を出さねばいけなくなるかもしれません』と言った。
決勝戦からいきなり全力を出すと、 体がついて行かなくなる可能性があるらしく、 一つ前の試合で体をほぐすという算段らしい。
そしてお決まりのアナウンスが流れる。
「さーーー! 長らくお待たせいたしました! これより本戦2回戦を始めます!
どちらが勝つのか想像もつきません! それでは・・・始め!」
それからのセリアさんの動きは速かった。
剣を抜いたかと思うと、 相手の選手が倒れだした。
「な」
「ふぅ、 こんなものですかね」
つ、 強すぎだろ。
「体の方もいい感じでほぐせました。 おや? どうかしましたか?」
「・・・いえ」
とりあえず、 相手選手に手を合わせておいた。
次もこうなっちゃんだろうな、 と思いながら、 会場を後にした。
更新遅かったくせに、 また短いです。
また暇があれば更新したいと思います。
それでは。