第二章 我が家のこと
現在時刻、 AM五時五十九分。
まだ眠っていたいという欲求に駆られるが、 まだ命は惜しいので自粛。
昔からの肉体的教育で決まった時刻に起きられるようになった。
「やっぱり出なきゃいけないか」
部屋の扉を見つめる。 扉の向こうから殺気がだだ漏れになっているのがわかる。
うん、 行かなきゃここで確実に死ぬね。
「それじゃあ、 カウント始めるか」
5,4,3,2,1,0!
勢いよく扉を開け放つ。
早速左側からナイフが飛んできた。
「ふっ!」
腰を低くかがめて、 回避の行動をとる。
「まず、 一本!」
無駄な動きはとらず最小限の動きで回避。
「次は・・・三本かよ!」
またまた左側からナイフが飛んでくる。
しかも時間差で三本!
「こりゃまずいな」
一本目のナイフを避けながら、 右手で昔から持ち歩いているナイフを取り出す。
「しっ!」
二本目のナイフを右手のナイフで弾く。
そして空いた左手で三本目のナイフを掴む。
「ほら、 お返しだ!」
左手に握られたナイフと飛んできた方向へと投げ返す。
ここまでの行動わずか五秒。
「今度はこっちから行くぞ!」
階段を駆け下りて一階へと向かう。
途中でナイフが何本か飛んできたが、 難なく弾く。
「ここか!」
リビングの扉を開け放つ。
当然奇襲を予想していたのだが、 なにも飛んでこなかった。
「あら? 間違えたかな?」
リビングからは殺気が一切感じられない。
「おかしい、 ここだと思ったのに」
呟きながらリビングのほぼ真ん中に来ると変化は起こった。
「きたっ!」
急に殺気を感じ回避行動をとる。
しかし今回の攻撃は今までとは規模が異なるものだった。
「八本!?」
まさに四方八方からナイフが飛んできた。
「これは・・・さすがに無理だろ!」
一本、 二本、 三本と弾き返す。
「4,5,6,7,・・・8!」
投擲された八本のナイフをすべて防ぎきる。
これは新記録でしょ!?
「安心するな、首、 もう飛んでるぞ?」
後ろから声を掛けられた瞬間、 背筋が凍る。
「ありゃ、 また俺の負け?」
「当たり前だ」
おそるおそる振り向くとそこには、 俺の首筋にナイフを突き立てた親父が立っていた。
「これで、 3543勝無敗だな」
「よくそんなこと覚えてんな」
親父はナイフをしまうと、 ついてこいというサインを出してきた。
まあおおかた何かの体術の訓練でもすんだろ。
そんなことを考えながら歩いていると、 母さんの研究室まできた。
「おはよう、 真治。それからあなた」
「おはよう母さん」
「ああ、 おはよう」
親父はそのまま部屋の奥へと進む。
「あれ? 母さんに会いに来たんじゃないの?」
母さん以外にこの部屋には用はないはずだが。 まさかここで訓練? ・・・ないない。
「こっちだ」
親父が床を指さす。
「ここって・・・まさか新しい地下室?」
「そうだ」
「まじかよ」
十六年生きてて初めて知ったよ。
「さっさと入れ」
「はいはい」
素直に従い地下二階へと下りる。
「なんじゃこりゃ?」
まず目に入ってきたのがどでかいスペース、 それから奥の方に人型の的。
考える事わずか0,5秒。
「ああ、 射撃場か」
まったくもって規格外だね、 家も、 親も、 そして驚かない俺も。
異世界に行くのは、 もうちょっと後になります。
長くなるかもしれないので、 よろしくお願いします。