第二十六章 第二ブロック
このお話は、 真治の試合が終わった後に行われた試合です。
ではどうぞ。
「早くしてくださいカズヤさん! これでは間に合わなくなるかもしれません!」
「ちょ、 セリアさん足早すぎです!」
現在俺は、 試合会場となる闘技場の中を走っている。
「もう私たちの試合が始まります!」
「まじすいません! 本当にすみません!」
こう遅刻しそうになっているのも、 俺がぎりぎりまで鍛錬したい、 と言って城にこもってたせいだ。
「あそこが私たちが出場する会場です!」
セリアさんの指さす方向からは歓声が聞こえてくる。
「間に合ってくれよ!!」
二人で会場につながる小さな門をくぐり抜ける。
「はぁ、 どうやら間に合ったようですね」
会場を見渡しても、 まだ始まっている様子はない。
それにしても観客の量が半端ないな。
会場自体も滅茶苦茶でかいし。
「さ~~~それでは第二試合を始めます! 用意はいいですか? まあよくなくても始めますけどね。 それでは・・・始め」
アナウンサーの質素? 簡潔な号令によって、 選手達が一斉に動き出す。
「うわっ! いきなり始まった!」
「来ます! 構えてください!」
そりゃあ、 筋骨隆々の男が突進してきたら脊髄反射で構えますって!
武器は昨日用意した。 とりあえず木刀二本だ。
でも構えるのは一本、 二本同時はまだあまり慣れていない。
それでも一応持っておくことにした。
まあお守り代わりってことで。
ちなみに木刀をチョイスしたのは、 これなら相手をそれほど傷つける心配はないし、 木刀の扱いは慣れている。 他の武器に比べたらだけどね。
ちなみに木刀の扱い方も真治に教えてもらった。
懐かしいなぁ、 真治めっちゃ強かったなぁ。
「わりいな坊主! 潰れてくれ!」
「っ!」
たくっ、 感傷に浸る余裕もないな。
初めての実戦、 木刀を握る手に汗がにじむ。。
男の獲物は大きなハンマー、 さすがにこの木刀で受け止めるのは酷だな。
なら避けるしかない!
「おらぁ!」
男がハンマーを振り抜く、 が。
ただ振り下ろすだけの動作、 そんな攻撃当たるわけがない。
「謝るのはこっちだ! ごめんなおっさん!」
しかも攻撃した後にも隙がある。
打ち込んでくれと言わんばかりの体勢だ。
この隙を見送るはずがない。
「ふっ!」
「ぐぬ」
攻撃を受けたおっさんが膝をついてゆっくりと崩れ落ちる。
「ふぅ、 なんとか終わったな」
「こっちも大丈夫です」
セリアさんが急に声を掛けてきた。
「いきなり現れないでください、 びっくりするじゃないですか」
「まあまあ、 それより次です。 試しに魔法を使ってみてはいかがでしょうか?」
魔法かぁ、 使って見たいけど。
「怪我とかしませんか?(相手が)」
「大丈夫・・・です、 まあ私がお手本を見せます」
言い終えるとちょうど一人の男が突っ込んできた。
「ふっ!」
セリアさんが腰に下げてある剣を抜く。
「こうするんです!」
セリアさんの抜いた剣の長さは大体八十㎝くらい、 突っ込んでくる男との距離はおよそ五メートルくらい。
どう考えても振ったところで当たるわけがない。
でもそれは元の世界での話だ。
セリアさんが剣を振るうと男が足を抱えながら倒れ込んだ。
「・・・すご」
漏れたのはそんな言葉だけだった。
よく見るとセリアさんの剣の先端から何か透明なモノが伸びている。
それは元の世界にあった鞭を想像させた。
「水の魔法の応用です、 このように切ったり燃やしたりするだけでなく、 叩いたりすることにも使えます」
セリアさんが剣を振ると、 透明な何かがしなやかに動く。
「ではがんばってください」
そう言い残すとセリアさんはどこかに行ってしまった。
「信頼されてるんだよな?」
とりあえずそう考えておこう。
「それじゃあがんばりますか」
木刀を握る手に力を込めて、 そう呟いた。
「まずいなぁ」
セリアさんと別れ、 何人かの男を倒したところで、 四人の男に囲まれていた。
「兄ちゃん悪いなぁ」
「せめて一発で気絶させてやる」
男達の獲物は左から、 ロングソード、 槍、 ナイフ、 それと・・・杖、 かな?「おらぁ!」
まず槍を持った男が頭めがけて槍で突いてきた。
「くっ」
四人いるが、 同時にはかかってこなかった。
逃げ道をふさいでるのかな?
まあそんなことは置いといて、 とりあえずは槍男からだ。
「避けてるだけか!」
と言われてもなぁ、 槍相手じゃ分が悪い。
なんせ木刀が届かない。
脳裏にセリアさんが勧めてきた魔法が浮かび上がる。
「・・・やるしかないか」
ここ数日で多少の魔法は覚えた、 でも覚えたのは、 物を燃やすための炎の魔法だ。 ここで使えば怪我じゃ済まないかもしれない。
だったら他の魔法を使えばいい。
「頼む! うまくいってくれよ!」
魔法のイメージを行いながら、 二本の木刀を縦に振るう。
「そんなん当たらな、 ってうわ!」
言葉とは裏腹に槍男が勢いよく後ろに吹っ飛んだ。
思わずガッツポーズ。
「これは使えるな!」
俺がイメージしたのは風だ。
剣を振るうと強烈な風が吹く、 といった具合でイメージした。
「次だ!」
再び木刀を振るう。
ロングソード男、 ナイフ男が真後ろに吹っ飛ぶ。 もちろん風の魔法で。
しかし杖男だけが平気な顔で立っていた。
「なかなか、 だが私には効かないな!」
杖男の杖から、 テニスボールくらいの炎が五つできあがっている。
「いけ!」
男の掛け声と共に炎の玉が、 一直線にこちらに放たれる。
「危な!」
一つ避けて、 二つ避けて、 三つ、 四つ、 五つ!
「ほう、 なかなかやるな」
「まあな」
余裕ぶっこいているが滅茶苦茶危なかった!
もう一度来たらまずい! 避けきれないかもしれない。
「そんな攻撃俺には効かないな」
強気で押すしかない。
「ふむ、 そうか。 なら他のでいくぞ!」
杖男が杖を地面に突き刺す。
今思ったんだけど、 この世界の魔法ってちょっと怖い? っていうか不便だ。
元いた世界だと、『くらえ! ファイヤーボール!』とかあるじゃん?
ファイヤーボールって言われれば、『あっ、 炎の攻撃が来るな』とかわかるけど、 この世界じゃ前動作がないんだよなぁ。
だから今、 この杖男が何をしようとしているのか全くわからない。
ちなみにこの間およそ二秒。
「いけ!」
・・・・・・杖からは何も出てこない。
「・・・不発?」
「ノーコメントで」
杖男がにやりと笑う。
この顔、 魔法は絶対成功している。
ならどこから来る? 前? 後ろ? 左右? 上? いや・・・下か!
下を見るとなにやら地面がめりあがってきた。
「やばっ!」
地面からかよ! そりゃないぜ!
「間に合え!」
瞬間的に後ろに飛び退く。
するとさっきまで立っていた場所から、 土が槍になったような物が突き出ている。
「助かったぁ!」
「甘い!」
別地点に着地すると同時、 またもや土がめりあがってきた。。
「くそ!」
今度は真横に飛び跳ねる。
「しつこいな!」
立つ場所立つ場所に土の槍が突き出してくる。
しかもだんだん杖男から離れていってるし。
「ほらほらほらぁ!」
しかし杖男はお構いなしに杖を地面に突き続ける。
「これじゃあ・・・」
今は避けきっているが、 このままではマズイ!
何がマズイって足がぶるぶる震えてきた!
このままだとやられる!
風の魔法は届かなかったし、 炎の魔法は使えない、 てか使いたくないし・・・。
木刀でいくしかない。
だったら次で決める、 本当に足がマズイ。
「おらぁ!」
杖男が杖を持ち上げる。
しびれをきらしたのか、 今までよりも大きな動作を取る。
「ここしかない!」
風の魔法を使って、 飛翔をイメージする。
俺を、 杖男の前まで運んでくれ!
一歩強く踏み出して走り出すと、 体がほわっと軽くなった。
「なっ!」
杖男が驚愕、 なんせ杖男が目の前にいたから。
杖男が近づいたのではない、 俺が近づいたのだ。
杖で防御しようとするが、 遅い!
「ここで決め「試合終了! 本戦に上がれるのは、 カズヤ&セリアペアと、 カイト&ボアペアです!」・・・えっ?」
「すみません、 全員片づけてしまいました」
後ろから暢気なセリアさんの声。
どうやらこの人以外はセリアさんが倒してしまったようだ。
ペアが失格になっても、 平気って聞いたからな。
この人のペアも本戦出場ってことか。
「どうやらセーフみたいだな」
「そうみたいですね」
尻餅をついている杖男に手をさしのべる。
「悪いな」
「いえいえ」
まあ俺も本戦出場らしいし。
「本戦で決着をつけましょうか」
「おうよ」
杖男との会話はそれで十分だった。
う~ん、 とくに書くことがない。
まあよろしくしてやってください。