第二十二章 道の途中で
「ところで、 首都に行って何をするんですか?」
「ん? 俺たちの向かってるとこって首都だったの?」
「ええ、 たしかそうですよ」
そりゃ好都合だ。 俺のことも何かわかるかもしれないからな。
「で、 何をするんですか?」
「とりあえず、 いろいろな情報を集めてから、 何か商売でも始めるかな」
「私も手伝います♪」
「助かる・・・って懲りない奴らだな」
「ふぇ?」
ローラが不思議そうに首をかしげる。
「ほら、 森の中にいたあのワン公共」
後ろを見ると、 そのワン公共がこちらに向かって走ってきた。
しかしローラは動じる様子はない。
もちろん俺も。
向かってくるのを見ながらぼーっと突っ立っていると、 ワン公共に囲まれてしまった。
現在俺が所持しているのは、 M92FとM1911の二丁のみ。
89式は移動の邪魔になるので、 消してある。
ここで説明しておくが、 創造魔法で創った物は、 創った人の意志で簡単に消せるということがわかった。
しかも、 一度創った物は精巧なイメージをしなくても、 ある程度のイメージで創り出せることもわかった。
「戦意むき出しだな」
ワン公共は今にも飛びかかって来そうな状態だ。
「さぁて、 どうするかな?」
余裕ぶっこいているが、 実はちょっときつい。
相手の数がおよそ・・・十五匹くらい。
対してこちらは、 戦闘要員が俺だけ。
ローラには戦闘能力皆無だし。
守りながら戦うしかないか?
ローラは完全に俺のこと信用しきっているしな~。
「やるっきゃないか」
肩に掛けてある拳銃二丁じゃ役不足だろうな。
「いっちょ新しい武器でも創るかな?」
89式を創ってもいいが、 ワン公共は威嚇の段階なので時間がありそうだ。
「小回りがきいて、 連射性がある物・・・アレにするか」
頭の中で、 ある銃の設計図を組み立てる。
ついでに、 ある機能も追加しておく。
「あとサプレッサーも創っておくか」
この前ので学習したが、 サプレッサー無しでは、 ローラの話をまともに聞くことができなかったしね。
「よし、 こんなもんだろ」
設計図は完成した。
あとは魔力を込めて・・・。
「ふっ、・・・・・・やっぱすごいなこの魔法」
俺の両手にはしっかりとVz.61スコーピオンが握られていた。
「まあサブマシンガンだし、 正確に狙う必要もないだろう」
スコーピオンの名前の由来となったストックを伸ばす。
「じゃ・・・殺るか」
呟くのと同時に、 一匹のワン公が襲いかかってきた。
「遅いんだよ」
スコーピオンの引き金を引く。
サプレッサーを付けているので、 少しはましだった。
「次っ!」
両脇から二匹、 でも関係ないな!
スコーピオンの銃口を、 左右に向ける。
同時に低く、命を奪った音が轟く。
ついでに言っておくが、 この銃の問題の弾切れは心配ない。
創造魔法で、 マガジンにある機能を付けておいた。
それは、 弾丸の自動創造。
この機能によって、 マガジンには常時弾丸が装填されるので、 弾切れの心配はないし、 マガジンを取り替える心配もない。
「やっぱり数多いな」
でもワン公共は距離をとって、 近づこうとはしてこない。
「びびってんのか?」
今の戦闘を見て、 命の危機を感じとったのだろう。
「なら、 無駄な殺生をする必要はないな!」
スコーピオンの銃口を、 ワン公共の目の前の地面に向ける。
同時に射撃。
ビスビスビスと弾丸が、 地面にめり込んでいく。
「次は当てちゃうよん」
ワン公共の目の前の地面に向けていた銃口を、 ワン公の体に向け直しながら言い放った。
逃げなければどうなるのか、 予想がついたのだろう、 ワン公共は一目散に逃げ出した。
「ふ~、 何とか終わったぞ」
隣でうずくまっているローラに声を掛ける。
「ふぇ? 相変わらずシンジさんは強いですね」
「ん、 まあね」
呟きながら、 両手に持っていたスコーピオンを消す。
「じゃあ、 行こうか」
「そうですね」
再び歩き出したところで、 ある考えが頭をよぎる。
「ローラも武装しといた方がいいかな?」
俺がついていれば、 少しは安心できるだろうが、 なにせよこの世界、 魔物? とのエンカウント率が半端ない。
武装しておいて、 悪いことはないだろう。
「女性、 それもローラでも扱えそうな銃・・・アレかな」
目を閉じ、 ある銃の設計図を組み立て、 魔力を放出する。
「できてるね」
手のひらには、 長さ8㎝ほどの銃ができあがっている。
ワルサーPPk、 これならローラでも使えるだろう・・・うん。
もちろんマガジンにも、 細工済み。
「ローラにこれ渡しとく」
「なんですかこれ?」
「ワルサーPPK」
「???」
俺も今の説明はなかったと思う。
なので詳しく説明開始。
「これはな、 ローラを守ってくれる武器だ。 これがあればさっきの犬っころ位なら二秒で殺れる」
「えぇぇぇ! それって私にも使えるモノなんですか?」
「たぶん」
ローラがPPK(これからはこう表記)を手にとってまじまじと観察している。
まあ、 セーフティーが掛かっているので暴発はないと思うけど。
「やっぱりちょっと訓練しておくか」
「お願いします!」
幸いここは広いし、 誰もいないようなので訓練にはもってこいだろう。
「まずは、 使い方を教えるから」
「はい!」
やけに気合い満々だな。 まあいいけど。
「まずこの銃は、 安全装置を解除してからは基本的にはダブルアクションでの射撃になるんだ」
けど、 とは言えられなかった。
「ぜんぜんわからないです!」
わずか三秒での挫折宣言。
「え! うそぉ!」
俺もM92Fを撃つときに、 親父からこんな感じの説明を受けたけどすぐ理解できたぞ。
「仕方ない。 ここは大幅に課程を省略だ」
創造魔法で、 ローラの持っているモノと同じ銃を創り出す。
「まず、 セーフティーを解除します」
ローラも見よう見まねでセーフティーを解除する。
「で、 できました!」
「うむよろしい、 本当なら他にすることがあるんだけど、 ソレは特別な銃だから省略」
まあこっちの方が、 扱いやすいだろう。
「続いて射撃の方に移ります」
「はい! 何するかわからないけどがんばります!」
「その意気やよし! 見てなさい!」
創造魔法で、 前方十メートルくらいの所に、 土でできた人形を創造する。
「まず狙いを付けて、 標準があったらこのレバーを引く!」
レバーと言ったのは、 引き金と言っても理解できないと思ったからです。
表記飛ばしたけど、 弾丸は土人形の額にヒット。
「わかった?」
「わかりました!」
ローラが自信満々でPPKを構える。
「言い忘れてたけど、 基本的にレバーは二回引いてね」
これは基本。 確実に相手を仕留めるための。
「行きますよ・・・えい!」
パンという音と共に聞こえたのは、 なぜかローラの痛がる声だった。
「暴発!?」
いやそんなはずはない! 設計図にはミスはなかったはず。
しかし答えはものすごく単純なモノだった。
リコイルショックで拳銃を支えきれなくなって、 おでこにゴチンしたと。
まさかこれほど非力だとは。
「まあ落ち着けって」
そう言った瞬間、 俺の頭の真横で何かが高速移動した。
つまるところローラの放った弾丸である。
「ふにゃ~二回引かなくちゃ~」
ローラは目をくらくらさせてへたり込んだ。
どうやらPPKが顔面にヒットして、 視界がぼやけているようだ。
でも許すのこれ? もう少しで俺の顔面に弾丸ヒットしてたんだよ? 死んでたかもしれないんだよ?
「・・・・・・ローラ、 何か言うことは?」
「え~と、 私うまくできてましたか?」
ローラが、 屈折なく微笑みながら尋ねる。
その笑顔を見ると、 起こるに怒れまい。
「・・・ああ、 初めてにしては上手だったぞ」
こうして俺は今世紀最大の嘘をつくのだった。
出てくる銃はみんな作者が撃ってみたいと思っている銃です。
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