第二十一章 みんなのこれから
「・・・よし、 物音はしないな」
扉に耳をあてて確認をするが起きている気配はない。
「行く・・・か」
物音をたてずに扉を開ける。
「・・・よかった~」
予想通りローラはベットですやすやと眠っていた。
ついでに下の階で、 飲み物らしき物を買っておいた。
お金のことはよくわからなかったが、 あの森で怪しい奴らから取ったお金を適当に払っておいた。
悪い顔はしていなかったので問題は無いだろう。
ベットの横に立ち、 ローラの寝顔を眺めることおよそ三分。
「起こして・・・いいんだよな?」
正直、起こすのをためらわせるくらい、 気持ちよさそうに寝ている。
「まあいいか、 お~い起きろ、 ローラ」
「ふぎゅぅぅぅぅ・・・」
・・・起きない、 これが親父とかだったら、たたき起こすだろうが、 ローラは寝言がかわいかったので免除。
「起きろってば! ローラ!」
「ふな~ふぬ~ふにっ!
ぐはっ! なんだこの三段活用は! 威力が高すぎる!
「ふぇぇ、 起きてたんですか?」
「ん、 一応な」
返事をしながら飲み物を手渡す。
「ん? ありがとうございます」
二人でベットに腰掛けながら飲み物を飲む。
「ふう、 で? いつ盗賊さん達を懲らしめに行くんですか」
「ああ、 それなんだけど・・・盗賊団の人達、 いやリーダーがさっき村に来て、 みんなに謝ってたから、 お咎めなしになった・・・と思う」
「そうですか♪ 自分から謝りに来るのはいいことです♪」
「そうだな」
まあ自主的になるのかな?
俺が行動を起こさなきゃ来なかっただろうけど。
「で、 ローラ。 今日の午後から、 東の方にある大きな町に行こうと思うんだけど」
盗賊団のアジトに行ったときに、 もうちょっと東の方に町らしき物があったのは確認している。
「ローラも来るんだよな?」
「もちろんです!」
即座に返してくれたので、 ちょっとうれしい。
「じゃあ飯でも食いに行くか!」
「はい!」
俺たちのこれからのことは決まった。
「あっちはどうなってるかな」
「何か言いましたか?」
「いや、 何も」
まあ、 なるようになってるだろう。
「じゃ、 行こうか」
俺たちは泊まっていた部屋をあとにした。
「うーす」
「いらっしゃい! おやあんた達かい」
前と同じようにおばさんが大きな声で迎えてくれた。
「この前と同じやつ二つ」
「あいよ!」
おばさんは注文を受けると厨房に駆けていった。
そして待つことおよそ五分くらいで、 ハンバーグ(もう何でもいいよ)を持っておばさんが戻ってきた。
「ほら食べな!」
「「いただきま~す」」
俺とローラが食事を始めるとおばさんは、 向かいのいすに座った。
「そういえば、 まだあんた達の名前を聞いてなかったね」
「あっ」
すいぶんと大事なことを、 さらりと言うな。
まあこっちは、 おばさんって呼ぶから問題無いんだけど。
「私の名前は、 ノア・ロッドって言うんだ、 これからもよろしくね」
「俺の名前は、 神代真治。 シンジって呼んでくれればいいです」
「え~と、 私の名前は、 ローラ・クリスアです。 ローラって呼んでくれればうれしいです」
おばさんが俺とローラを見比べる。
「で、 あんた達はどんな関係ないんだい?」
「ふぇぇぇ! なんですかいきなり!」
そんなに驚く質問ではなかっただろうが、 ローラだけは大声を上げて驚いている。
「旅の途中で出会って、 それから一緒に旅をしているんです」
「ということは・・・恋人同士かい?」
この目・・・明らかにおもしろがっている。
「あわわわわわ・・・」
ローラは相変わらず挙動不審になってるし。
「違いますよ、 ただ気があったんで一緒に行動しているだけです」
これ以上聞かれるのも面倒なので、 こっちから新しい話題を振るか。
「ところでリーダーはどうしたんですか?」
「ん? あいつならたぶん、 村のみんなに謝ってる途中だろうね」
「許してもらえるといいですね」
そうさねと相槌を打つおばさん。
「ついでに、 リーダーはしばらくこの食堂で住むことになったよ」
「へぇ」
ここ驚くとこなの? 違うよね?
「俺たちは午後から、 この村を出ようと思ってたんですよ」
「またこの村に戻ってくるのかい?」
「それはわからないですけど・・・」
どこに住んでも変わらないけど、 できれば情報が多く集まるところに住みたい。
大きな町の方が、 情報は集まりやすいだろう。
「そうかい、 気が向いたら戻ってくるんだよ!」
「そうします」
ローラの皿を見ると、 すでに空になっていた。
「じゃ、 そろそろ行きますね」
俺とローラは席を立つ。
「できればリーダーに挨拶していってやってくれないかい?」
「そうします」
食事の代金の支払いをローラに任せて、 一人で店の外に出る。
「リーダーどこにいるんだろうな~」
見える範囲で村を見ると、 見事にリーダーを発見できた。
「噂をすれば影がさす、 今この言葉の意味を感じとった気がする」
リーダーもこちらに気付いたのか、 近寄ってきた。
「おお、 シンか。 どうかしたか?」
「いやどうもない。 そっちこそ調子はどうだ?」
「うむ・・・」
リーダーは今までのことを話し始めた。
村の人達の家はあらかた回り終えたこと、 みんなに許してもらえたこと、 この村に住み始めると言うこと等。
「そうか、 まあがんばれよ」
話の途中でローラが食堂から出てきた。
「ん? 誰ですかこの人?」
「リーダー」
端的かつわかりやすい説明だったと思う。 しかしローラには伝わらなかったらしい。
「ん~もういいです」
頬を膨らませるローラ。
あきらめ早いなぁ。
「急なんだけど、 俺たちもうこの村をでるんで」
「そうか・・・」
ちょっと残念そうなリーダー。
「まあお前だったら何とかなるって、 リーダーらしくこの村の村長でもやれば?」
「考えておこう」
リーダーが、 リーダーをする。 なんだこれ?
「まあいいか、 じゃあなリーダー! また会おうぜ!」
「うむ!」
そして、 俺とローラは村をあとにした。
さりげなくローラのフルネームが明かされました。
次回からは、 大きな町でのお話になると思います。
感想など、 よろしくお願いします。