第十八章 洞窟で
「ここだな」
宿を出てから風の魔法を使って高速移動した結果、 目的地の洞窟にはすぐに着くことができた。
「見張りは・・・無しと」
警備がぬるいんじゃないか?
「まあいないんだったら好都合ということで」
現在の装備は、 拳銃二丁、 89式が一丁、 それからナイフが一本。
「とりあえず、 奥に進むか」
洞窟の中は一本道なので、 迷うということはなかった。
少し歩くと、 前方にある曲がり角のあたりから、 なにやら男の話し声が聞こえた。
「で? お前明日どうすんだよ」
どうやら明日の予定を聞きあっているようだ。
こちらには気付いていない。
なら一瞬で片づけてやる。
「そりゃあもちろん、 あの村に行って、 適当に金を巻き上げてくるさ」
「ははっ、 そりゃいいな」
「楽しそうな会話だな、 俺も混ぜてくれよ」
「おう、 明日あの村に行って、 っつ!」
声を掛けられた盗賊団の二人が驚いて俺を見る。
「なにもんだ!」
そう言いながら盗賊団の奴らは、 懐からナイフを取り出す。
「気付くの遅いんだよ」
「なんだとこのガキ!」
盗賊の一人がこちらに向かって直進してくる。
「少し眠ってろ」
ショルダーケースに収納していたM92Fを取り出し、 盗賊の一人に向かって放つ。
男は叫ぶことなく眠りに落ちた。
「貴様、 魔法使いか!」
まあ、 拳銃を知らない奴がこれを見れば、 魔法と思うのも無理はないだろう。
「いいや違うね、 あえて言うなら・・・文明人かな?」
「は? 文明じ「はい黙れ」」
男は文明人と言い終える前に眠りについた。
「おやすみなさ~い」
男達からの返答はない。
「まあ、 当然か。 それじゃあ次行ってみよ~」
男達がいた角を曲がると、 奥の方から大人数の声が聞こえてきた。
どうやら奥の方は広場になっているようで、 そこで宴会でも開いているようだった。
「俺もちょいと宴に混ぜてもらうとしますかね」
忍び足で身を隠しつつ、 宴を開いている広場に向かう。
「うわ、 酒臭いな」
どうやらこの世界でも、 酒は臭い物らしい。
「さあて、 どいつからおねんねしてもらうか」
リーダーとは話があるので最後で。
「あいつにするか」
男達の輪の中心で裸踊りをしている男を見据える。
それと同時に肩に掛けていた89式を構える。
一応構造は知っている、 つまり創造魔法を使い、 スコープを創ることはできるのだが、
「こんな近くにいるんだから気がつけよ」
連中との距離はおよそ二十五メートル。 スコープがなくても十分射撃可能だ。
しかしこの距離でもどんちゃか騒ぎをしているのでこちらには気付いていない。
「それじゃあ・・・グッナイ」
男に向かって引き金を、 引いた。
同時に乾いた音が鳴り響く。
裸踊りをしていた男は、 バタリと倒れた。
周りにいた盗賊は驚いて目を見開く。
「敵襲か?!」
「ザッツライト」
でも気付くのが遅すぎたな。
慌てて臨戦態勢をとろうとする男達を撃ち続ける。
「敵は一人だ! 野郎共やっちまえ!」
「無理無理」
男達は馬鹿正直に直進してこちらに向かってくる。
パン! と乾いた音と共に、 盗賊達が倒れていく。
「気をつけろ! 襲撃者はおそらく、 魔法使いだ!」
男達は、 俺が魔法使いだと推測すると、 俺から離れていった。
「貴様・・・何者だ」
リーダーらしいごつい体つきをした男が話しかけてきた。
「俺か? 俺はそうだな・・・シン、 でいいかな」
「で、 そのシンは何のようでここに来たんだ?」
「こんなよう」
リーダー(推測)の隣にいた男を撃ち抜く。
男は音を立てて床に崩れ落ちた。
「なるほど、 ならば死んでもらわなければな」
男は右手を俺に突き出す。
そしてその手のひらから、 バスケットボール位の炎が生まれた。
「あんたか、 魔法使いの一人ってのは」
「貴様に答える必要はない、 なぜなら・・・ここで死ぬのだからな!」
ワーオ、 よくもまあそんな臭いセリフを堂々と。
そんなくだらないことを考えていると、 男の手のひらから炎が放たれる。
「でも届かないんだよな~」
水の壁が目の前に出現するイメージを脳内でプログラミングして、 魔力を放出する。
瞬間、 俺の目の前に水の壁が出現する。
それは火の玉と接触すると、 水蒸気となって霧散した。
「水属性の魔法か、 相性が悪い」
「そりゃよかった」
警戒しつつ男達を見据える。
残り人数は・・・八人くらいかな?
「魔法使いは二人って聞いてたんだけど・・・もう一人は?」
「ここだ」
声が聞こえるのと同時に後ろから雷撃が放たれる。
が、 紙一重でそれを避ける。
「ほう、 なかなかやるな」
雷撃を放った男は、 にやりと笑った。
「ここにいるので全員?」
俺はリーダーの男に問いかける。
「・・・・・・そうだ」
おお! 答えてくれた。 てっきり無視するのかと思ったけど。
「ならいいや、 お前ら全員眠れ」
まず後ろにいる雷撃男に照準を合わせる。
が、 雷撃男は、
「させん!」
そう叫ぶと雷撃男の前に、 ほぼ透明な盾が出現した。
「これはあらゆる魔法を遮断する盾だ。 お前ごときには貫けん」
雷撃男は自慢げに語りだした。
「ああ、 これ魔法じゃないから」
雷撃男の腕を撃ち抜く。
「かっ」
雷撃男は前のめりに倒れた。
「まっ、 これもお前達からすれば魔法だけどな」
関係ないか。
そう呟きながら、 残った男達を撃ち続ける。
乾いた音が洞窟内に木霊したが、 すぐにやんだ。
「さて残るはあんただけだが」
「そのようだな」
リーダー男は周りを見ながら答える。
「あっ、 言っとくけど全員生きてるよ」
おばさんとの約束だからな、 誰も殺さないって。
「どういうことだ?」
疑問を口にしつつリーダー男はさっきと同じく炎弾を放つ。
が、 すべて水の壁によって防がれた。
「お前にはちょいと痛い目に遭ってもらうぜ」
89式を下げ、 M1911を取り出す。
こちらには麻酔弾ではなく、 実弾が込められている。
そしてそれを、 男の右足の太ももに放つ。
瞬間、 リーダー男の顔が歪む。
「へぇ、 叫ばないんだ」
続けて左の太ももにも実弾をぶち込む。
「ぐあぁ!」
「お、 やっと叫んだ」
リーダー男の額からは、 滝のように汗が噴き出ている。
「まっ、 たぶんすぐは死なないから」
まあそれは置いといて。
「あんたに話しがあるんだ」
これからのことを決める大事な話が、 ね。
展開早いかな?
次回で盗賊のお話は終わりにしたいと思います。
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